「数寄の玉手箱 - 三井家の茶箱と茶籠」 三井記念美術館

三井記念美術館(中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階)
「数寄の玉手箱 - 三井家の茶箱と茶籠」
4/16-6/29



お茶に関する知識がないので詳しくは分かりませんが、ここに見る茶人たちの一種のコレクター心には素直に惚れ込んでしまいます。三井記念美術館で開催中の「数寄の玉手箱 - 三井家の茶箱と茶籠」へ行ってきました。

茶道具関連の展示では定評のある三井記念美術館ですが、館蔵の茶箱・茶籠(*)の全てを一堂に展示するのは今回が初めてです。会場では歴代の三井の誇る茶人たちが愛用した品々約30点と、応挙をはじめとする関連の絵画、もしくは16世紀より19世紀までの茶道具などが紹介されていました。茶という究極の趣味世界と、希代の絵師らによる屏風絵などが、半ばコラボする形にて構成されている展覧会とも言えそうです。



まずメインの茶箱、茶籠で一番惹かれたのは、三井高福所持の「桜木地茶箱 銘桜川」でした。赤楽や黒棗などの入る箱の外観は、桜の木目をそのままに表したシンプルなものですが、その内側に描かれた蒔絵には目を見張るものがあります。それもそのはず、下絵はかの応挙です。緩やかに流れる川面には桜の花びらが舞い降りて揺らめいています。一見、地味な箱の中より開かれるこの風雅な世界こそ茶箱観賞の醍醐味かもしれません。愛する道具を箱より取り出しながら、その美しい蒔絵にも目を細める茶人たちの様子が目に浮ぶかのようでした。

江戸絵画好きとしては、数点出ていた応挙も見逃せないところです。若い稚松を即興的に描いた「若松図屏風」と、金砂子の舞う中を淡墨の竹が幻想的な空間を作る「竹図屏風」、それに荒々しい濃墨が燃え上がるような山水の光景を生む「破墨山水図」、または山上から雄大な海を写実、鳥瞰的に見た「海眺山水図」などはなかなか見応えがありました。それにしても毎度のことながら、三井記念美術館の応挙コレクションには至極感心させられるものがあります。是非、「応挙展」を企画していただきたいです。

 

展示の最後に登場する、作者不定ながらも華麗な大作襖絵、「檜・槇・秋草図襖」も見逃せない作品です。これは全十面にも及ぶ襖に、文字通り、檜林に群れる秋草の様子が描かれたものですが、作者にかの光琳を想定する説もあるという問題作です。確かにやや閉塞感を漂わせながら木が林立するという大胆な構成と、幾分デフォルメを思わせる丸みを帯びた枝葉の表現(特に6面の方に。)には光琳を思わせる部分があります。如何でしょうか。(上の図版は「檜・槇・秋草図襖」の部分。ちらし表紙より。)

今年度からフリーにて入場可能となった「ぐるっとパス」で観賞してきました。今年は三井の展示も追いかけたいと思います。

6月29日までの開催です。

*持ち運びができる小型の箱や籠などに、喫茶用の茶道具一式を組み込んだもの(美術館HPより)
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