都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
ロイス&カペラ・アムステルダム 「シューベルト:夜」他 LFJ2008
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2008
公演番号425
シューベルト
「ゴンドラを漕ぐ人」 D809
「セレナード」 D920
「詩篇第23篇『神はわが牧者』」 D706
「水上の精霊の歌」 D714
「挽歌(女たちの挽歌)」 D836
「夜」 D983c
(追加、アンコール曲:ブラームス「あこがれ」、「夜に」、「夜の歌」)
メゾ・ソプラノ オーサ・オルソン
ピアノ ベン・マルティン・ワイヤンド
合唱 カペラ・アムステルダム
指揮 ダニエル・ロイス
2008/5/5 17:15 東京国際フォーラムホールB7(ショーバー)

二年前のLFJでのミサ・ソレムニスの名演がまだ忘れられません。求心力のある指揮が光るロイスの登場です。ピアノ伴奏によるシューベルトの合唱曲を聴いてきました。
定評のあるカペラアムステルダムの表現力をもってすれば当然かもしれませんが、終始、シューベルトの繊細な情感が示された見事な演奏だったと思います。冒頭の「ゴンドラを漕ぐ人」では、途中ピアノにて打ち鳴らされるサン・マルコ寺院の鐘のイメージも借りて、あたかもヴェネツィアで舟に揺られているかのような臨場感を示し、また「水上の精霊の歌」でも同じく、精霊や魂の行き交う天と地、そして滝壺や湖などの情景を今、眼前に見るかのような表現で巧みに描き出しています。手元の対訳を目で追いながら歌を聴くのはやや苦手ですが、この日のカペラアムステルダムの演奏ではその作業を意識させないほど、詩と音楽のイメージとが一つになって響き渡っていました。また、とりわけ男声合唱の透き通るように瑞々しい声は白眉です。いつもはどちらかというと女声陣ばかりに耳が向いてしまいますが、今回だけは例えば男声のみの「夜」における甘美な歌声に心底酔いしれました。
追加、アンコールのブラームスの三曲も集中力の切れない演奏だったと思います。曲の割にはキャパシティーがやや大き過ぎますが、久々に全身がリラックスするような、心洗われる合唱を楽しむことが出来ました。
公演番号425
シューベルト
「ゴンドラを漕ぐ人」 D809
「セレナード」 D920
「詩篇第23篇『神はわが牧者』」 D706
「水上の精霊の歌」 D714
「挽歌(女たちの挽歌)」 D836
「夜」 D983c
(追加、アンコール曲:ブラームス「あこがれ」、「夜に」、「夜の歌」)
メゾ・ソプラノ オーサ・オルソン
ピアノ ベン・マルティン・ワイヤンド
合唱 カペラ・アムステルダム
指揮 ダニエル・ロイス
2008/5/5 17:15 東京国際フォーラムホールB7(ショーバー)

二年前のLFJでのミサ・ソレムニスの名演がまだ忘れられません。求心力のある指揮が光るロイスの登場です。ピアノ伴奏によるシューベルトの合唱曲を聴いてきました。
定評のあるカペラアムステルダムの表現力をもってすれば当然かもしれませんが、終始、シューベルトの繊細な情感が示された見事な演奏だったと思います。冒頭の「ゴンドラを漕ぐ人」では、途中ピアノにて打ち鳴らされるサン・マルコ寺院の鐘のイメージも借りて、あたかもヴェネツィアで舟に揺られているかのような臨場感を示し、また「水上の精霊の歌」でも同じく、精霊や魂の行き交う天と地、そして滝壺や湖などの情景を今、眼前に見るかのような表現で巧みに描き出しています。手元の対訳を目で追いながら歌を聴くのはやや苦手ですが、この日のカペラアムステルダムの演奏ではその作業を意識させないほど、詩と音楽のイメージとが一つになって響き渡っていました。また、とりわけ男声合唱の透き通るように瑞々しい声は白眉です。いつもはどちらかというと女声陣ばかりに耳が向いてしまいますが、今回だけは例えば男声のみの「夜」における甘美な歌声に心底酔いしれました。
追加、アンコールのブラームスの三曲も集中力の切れない演奏だったと思います。曲の割にはキャパシティーがやや大き過ぎますが、久々に全身がリラックスするような、心洗われる合唱を楽しむことが出来ました。
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ラーンキ「シューベルト:ピアノソナタ第16番」他 LFJ2008
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2008
公演番号454
シューベルト 3つのピアノ曲より 変ホ長調 D946-2
シューベルト 3つのピアノ曲より ハ長調 D946-3
シューベルト ピアノ・ソナタ第16番 イ短調 D845
ピアノ デジュー・ラーンキ
2008/5/5 15:00 東京国際フォーラムホールD7(ヒュンテンブレンナー)

昨年のバルトーク(夫妻での公演でした。)の快演も印象深いデジュー・ラーンキによる、オール・シューベルト・プログラムです。らしからぬダンスミュージックのようなノリの良さで、シューベルトを一気呵成に弾き抜いていきます。
憂いを帯びた中音域に魅力もあるラーンキですが、この日はともかく歯切れの良いフォルテの冴える、実に力強く情熱的なシューベルトでした。冒頭の2曲はつい先日、佐藤卓史の公演(公演番号163)の記憶も鮮やかなところですが、彼が曲の明暗の抉る、言わばシューベルトの美しい叙情性と底部にある暗鬱な激しさを交互に表現していたのに対し、ラーンキはもっと直裁的に、音楽自体の持つ流れ、また勢いを重視した、言わば素直な演奏に仕上がっていたと思います。跳ね上がるようなリズミカルなリズムが、シューベルトの音楽に思いもよらぬ強烈なエネルギーを与えていました。率直に申し上げると、その烈しさにやや戸惑いを覚えたのも事実ですが、例えばソナタ16番の快活な第3楽章などは説得力があったと思います。
「シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番/ラーンキ」
それにしても16番が、これほど多様な表情を見せる、複雑怪奇な曲であるとは知りませんでした。最近は露出も多いこの名曲を、あれほどアクロバット的に演奏するのも珍しいのではないでしょうか。
公演番号454
シューベルト 3つのピアノ曲より 変ホ長調 D946-2
シューベルト 3つのピアノ曲より ハ長調 D946-3
シューベルト ピアノ・ソナタ第16番 イ短調 D845
ピアノ デジュー・ラーンキ
2008/5/5 15:00 東京国際フォーラムホールD7(ヒュンテンブレンナー)

昨年のバルトーク(夫妻での公演でした。)の快演も印象深いデジュー・ラーンキによる、オール・シューベルト・プログラムです。らしからぬダンスミュージックのようなノリの良さで、シューベルトを一気呵成に弾き抜いていきます。
憂いを帯びた中音域に魅力もあるラーンキですが、この日はともかく歯切れの良いフォルテの冴える、実に力強く情熱的なシューベルトでした。冒頭の2曲はつい先日、佐藤卓史の公演(公演番号163)の記憶も鮮やかなところですが、彼が曲の明暗の抉る、言わばシューベルトの美しい叙情性と底部にある暗鬱な激しさを交互に表現していたのに対し、ラーンキはもっと直裁的に、音楽自体の持つ流れ、また勢いを重視した、言わば素直な演奏に仕上がっていたと思います。跳ね上がるようなリズミカルなリズムが、シューベルトの音楽に思いもよらぬ強烈なエネルギーを与えていました。率直に申し上げると、その烈しさにやや戸惑いを覚えたのも事実ですが、例えばソナタ16番の快活な第3楽章などは説得力があったと思います。

それにしても16番が、これほど多様な表情を見せる、複雑怪奇な曲であるとは知りませんでした。最近は露出も多いこの名曲を、あれほどアクロバット的に演奏するのも珍しいのではないでしょうか。
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コルボ&ローザンヌ声楽アンサンブル「ロッシーニ;小荘厳ミサ」 LFJ2008
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日音楽祭2008
公演番号443
ロッシーニ 小荘厳ミサ
ソプラノ 谷村由美子
アルト ヴァレリー・ボナール
テノール ピエール=イヴ・テテュ
バス ファブリス・エヨーズ
ピアノ サイモン・サヴォイ
ハルモニウム ボリス・フリンゲリ
合唱 ローザンヌ声楽アンサンブル
指揮 ミシェル・コルボ
2008/5/5 13:00 東京国際フォーラムホールC(マイアーホーファー)

コルボを聴かないと「熱狂の日」に来た気分になりません。毎年、高水準の演奏を披露するお馴染みのコンビ、コルボ&ローザンヌ声楽アンサンブルの「小荘厳ミサ」を聴いてきました。
ピアノとオルガンの一種であるハルモニウムのみのシンプルな伴奏が、ローザンヌ声楽アンサンブルの合唱の魅力をより引き出すことに繋がっていたかもしれません。ミサ曲でありながら、例えば牧歌的なグラティアスや、オペラのワンシーンさえ思い起こすクイ・トリスなど、どことなくドラマテックに展開するこの曲を終始リードするのは、もちろん透き通るように美しい同合唱団の歌声でした。繊細なピアニッシモをシルクの肌触りのような滑らかな声で実現する女声陣と、力押し過ぎない抑制的な男声陣がとりわけフーガの掛け合いなどで巧みに絡み、ロッシーニの甘美なミサ曲をまさにピュアな質感で表現していきます。また各ソリストで特筆すべきは、コルボの秘蔵っ子としても知られるという、(公演冊子より。)ソプラノの谷村由美子です。ホールの隅々まで行き渡る太く逞しい歌声にて、例えば第13曲の「敵激しく戦いを挑みたければ」などのフレーズを、劇的に難無く歌い上げてしまいます。また谷村ともう一人の女声、アルトのヴァレリー・ボナールも充実していました。アニュス・デイで可憐に響いていたミゼレーレの歌声を忘れることは出来ません。
「ロッシーニ:小荘厳ミサ曲/コルボ/ローザンヌ声楽アンサンブル」
最後に伴奏を務めた、サイモン・サヴォイの刹那的なピアノ演奏も、この公演を成功に導いた立役者として挙げおくべきでしょう。前奏曲の叙情性は見事です。空間を高らかに駆けるような煌めく高音がホールへ静かに染み渡っていました。
公演番号443
ロッシーニ 小荘厳ミサ
ソプラノ 谷村由美子
アルト ヴァレリー・ボナール
テノール ピエール=イヴ・テテュ
バス ファブリス・エヨーズ
ピアノ サイモン・サヴォイ
ハルモニウム ボリス・フリンゲリ
合唱 ローザンヌ声楽アンサンブル
指揮 ミシェル・コルボ
2008/5/5 13:00 東京国際フォーラムホールC(マイアーホーファー)

コルボを聴かないと「熱狂の日」に来た気分になりません。毎年、高水準の演奏を披露するお馴染みのコンビ、コルボ&ローザンヌ声楽アンサンブルの「小荘厳ミサ」を聴いてきました。
ピアノとオルガンの一種であるハルモニウムのみのシンプルな伴奏が、ローザンヌ声楽アンサンブルの合唱の魅力をより引き出すことに繋がっていたかもしれません。ミサ曲でありながら、例えば牧歌的なグラティアスや、オペラのワンシーンさえ思い起こすクイ・トリスなど、どことなくドラマテックに展開するこの曲を終始リードするのは、もちろん透き通るように美しい同合唱団の歌声でした。繊細なピアニッシモをシルクの肌触りのような滑らかな声で実現する女声陣と、力押し過ぎない抑制的な男声陣がとりわけフーガの掛け合いなどで巧みに絡み、ロッシーニの甘美なミサ曲をまさにピュアな質感で表現していきます。また各ソリストで特筆すべきは、コルボの秘蔵っ子としても知られるという、(公演冊子より。)ソプラノの谷村由美子です。ホールの隅々まで行き渡る太く逞しい歌声にて、例えば第13曲の「敵激しく戦いを挑みたければ」などのフレーズを、劇的に難無く歌い上げてしまいます。また谷村ともう一人の女声、アルトのヴァレリー・ボナールも充実していました。アニュス・デイで可憐に響いていたミゼレーレの歌声を忘れることは出来ません。

最後に伴奏を務めた、サイモン・サヴォイの刹那的なピアノ演奏も、この公演を成功に導いた立役者として挙げおくべきでしょう。前奏曲の叙情性は見事です。空間を高らかに駆けるような煌めく高音がホールへ静かに染み渡っていました。
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