アンサンブルモデルン 「ライヒ:18人の音楽家のための音楽」他 コンポージアム2008

コンポージアム2008 スティーヴ・ライヒの音楽

ダニエル・ヴァリエーションズ(2006)
18人の音楽家のための音楽(1974-76)

演奏 アンサンブル・モデルン/シナジー・ヴォーカルズ
指揮 ブラッド・ラブマン
ゲスト・パフォーマー スティーヴ・ライヒ
音響監督 ノーベルト・オマー

2008/5/21 19:00 東京オペラシティコンサートホール



ステージ上に作曲家本人を迎えています。コンポージアム2008より初日、「スティーヴ・ライヒの音楽」を聴いてきました。

好きなライヒを生で聴けるということだけでも気分が高まりますが、まさか実演がこれほどハイテンションなものであるとは思いもよりません。ともかく白眉は代表作としても名高いメインの「18人の音楽家のための音楽」です。この曲をCDで聴くと、ミニマル音楽への一般的なイメージと同様、全体を機械的に貫くリズムの永劫的な反復にどことない心地良さを覚えるわけですが、実演では各セッションの出す音の一つがまるで魂の欠片としてうごめき、そして始終駆け巡っているかのような非一定的な音の『運動』のスリリングな面白さを味わうことが出来ました。ミニマルの本質は、個々の音に内在する自立的な運動にあるのかもしれません。微妙に変動するピアノのリズムに体を委ね、情熱的に、また時には内省的に鳴らされるマリンバやシロフォンなどの打楽器の音へ耳を傾けることは、それこそ高まる心臓の鼓動と沸き立つ血液の循環を全身の感覚で確かめているかのような、極めて肉体的な一種の法悦体験です。叩かれるピアノと打楽器が神経を呼び覚まし、シャカシャカと響くマラカスはあたかも頭の中をシャッフルさせるかのようにその動きを強めていきます。また、強弱の繰り返される声楽とクラリネットは生命の呼吸です。約1時間にも及ぶ横への運動、つまり反復が聴き手の意識を麻痺させ、さらに各音の上下運動が逆にそれを覚醒させていきました。麻痺した感覚の中での覚醒は危険です。半ばトランス状態へと引き込みます。

実演ということで、ステージ上での演奏行為も視覚的に楽しむことが出来ました。舞台後方にはピアノを含めた数台の打楽器を、また前にはクラリネットと弦、そして声楽をともに左右から向き合うようにして並べていましたが、打楽器の奏者がバチを持ち替えて次々と別の楽器を鳴らしていく様子が、ちょうど反復の中で自由に行き交う音の運動を視覚化しているようで興味深く感じられます。ちなみにライヒは第4ピアノで演奏に参加していました。トレードマークの野球帽が小刻みに震えると、メロディーの分解された音のリズムが刻まれていくわけです。

「18人の音楽家のための音楽/ライヒ」

「ダニエル・ヴァリエーションズ/ライヒ」

終演後の客席の反応は熱狂的でした。そもそもいわゆる客層からして一般的なクラシックコンサートとは異なっていましたが、聴衆の殆どがスタンディングオベーションをしてライヒに拍手と歓声を送っていたのがとても印象に残ります。ライヒの音楽が一般的な「現代音楽」の枠に収まらないものであることは間違いありません。

一曲目の「ダニエル・ヴァリエーションズ」のリハーサル、及び本人のインタビューがyoutubeにありました。以下に転載しておきます。



こちらはお馴染み「18人の音楽家のための音楽」です。(3分6秒付近から。)



*関連リンク
スティーヴ・ライヒを探る~ライヒ、新作を語る(CDジャーナル)
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