「山下美幸 - ノンシャラン - 」 TSCA Kashiwa

TSCA Kashiwa千葉県柏市若葉町3-3
「山下美幸 - ノンシャラン - 」
4/19-5/17



TSCA初となるいわゆる絵画を題材とした展覧会です。流れるような色彩を自在に操り、シュールな物語風のドローイングを手がける山下美幸(1979~)の新作個展を見てきました。

上のDMにもある従来作の「リリパット」シリーズには、眠る女性の顔が丘となり、また突き出す脚が岩場へと変化して小人が寄り添うという、まさにガリバー旅行記を彷彿させる光景が登場しますが、今新作でもその基調となるダブルイメージ的な構成は何ら変わることがありません。「すべての夜のために」(2008)では、脱力感の漂う少女らがプールサイドでだらんと腕を垂らしている様子が描かれていますが、その下に目を転じると、溢れた水がそのまま巨大な滝壺へと落ちているような景色へ変わり、少女らの肩に乗る小人たちとスケールの調和した不思議な姿を見せています。また、明暗の対比も鮮やかな、まるでムンクを思わせるような流れる色彩感とタッチも魅力の一つです。水中で混じり合うかのような色面が緩やかに形を変えながら、いくつかの次元を同時に絵に取り込むことに成功しています。しばらく見ていると自分の位置が、一体小人にあるのか、それとも大きな眠る女性にあるのかが分からなくなりました。このような見る側の視座を揺さぶる感覚も面白さの一つです。

錯綜するイメージが「異時同図法」的に処理されたパノラマ絵巻も見応えがあります。山下に特徴的な輝くような白い水柱からスタートし、それがいつの間にか熱帯のジャングルのような暗がりの空間へと潜り込んだかと思いきや、その姿は巨大な動物の背中へと姿を変え、いつしか尻尾の先から海を望む岩場の空間へと開放されていました。通常と絵巻とは逆に左から進むというこの作品には、得意とするダブルイメージにもう一つ、時間の流れという軸が加わっています。この映像感もまたたまりません。

ところで柏での活動をしばらく休止していたTSCAですが、本年中はこの個展を含め、あと4~5回程度の展示を予定しているそうです。直近では次回、今月24日からコレクション展がはじまります。今年のコンテンポラリーアートシーンは柏にも要注目です。

17日まで開催されています。もちろんおすすめします。
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