「今、蘇るローマ開催・日本美術展」 日本橋三越本店ギャラリー

日本橋三越本店新館7階ギャラリー(中央区日本橋室町1-4-1
「今、蘇るローマ開催・日本美術展 - 日本画を世界に 大観・玉堂・栖鳳・古径・青邨の挑戦 - 」
5/13-25



1930年、イタリアはローマにて開催された「日本美術展覧会」を再現します。日本橋三越で開催中の「今、蘇るローマ開催・日本美術展」へ行ってきました。



展示品は当時の展覧会に出された近代日本画(実際の20%強。一部例外あり。)ですが、出品リストを眺めても明らかなように、その9割ほどが大倉集古館の館蔵品で占められています。ようは「大倉集古館蔵、近代日本画展」です。大観の「夜桜」、観山の「不動尊」をはじめとする、同館自慢のコレクションが約40点ほど紹介されていました。ちなみに、集古館での近代日本画の企画展はここしばらく記憶にありません。まさにファン待望の展示とも言えそうです。

そもそもローマ展の団長を務めたのが大観だそうですが、やはり今回の展示でも彼の作品が際立っています。冒頭の水墨画、「山四趣」と「瀟湘八景」の計12点からして見応え満点です。ともに墨の濃淡にて山の稜線から水辺の広がり、それに雲の靡く様から場の湿り気までを表していますが、前者が日本的なこぢんまりとした自然を感じさせるのに対し、後者は遠近感の巧みな、大陸の景色の雄大さを見るような印象を与えています。また大観では、ローマ展に出された作品ではないもの、スケッチ風に花や木を描いた連作から「野菊」も印象に残りました。大きな余白を右上にとりながら、画面左下の野菊が風に吹かれてゆらゆらと揺れています。うっすらと橙色を帯びた花の色もまた魅力的でした。



大観以外で挙げたいおすすめの作品は二点、観山の「維摩黙然」と栖鳳の「蹴合」です。前者の観山は、大乗仏教の理想的人物であるという維摩が泰然として座る様が描かれていますが、桃色やすみれ色をした衣服の装飾はもちろんのこと、脇に仕える女性の瑞々しい白い肌や瞳などの精緻な表現にも目が奪われます。この味わいはもはや近代日本画のロココです。また後者の栖鳳は、御舟と並び、近代日本画家の中でも卓越した技巧を見せる彼ならではの優品です。日本画にて羽毛の様子をこれほど立体的に、しかもそれでいてフワフワとした質感を伝えたものが他にあるでしょうか。大小、様々な太さのタッチを駆使して、黒を基調としながらも仄かに七色に光る軍鶏の毛を驚くほど写実的に仕上げています。これには舌を巻きました。



その他、木菟をモチーフとした作品ではマイベストの古径「木菟図」、また色鮮やかな衣装に何故か女性の儚さをも思う深水の美人画「小雨」などにも惹かれました。お気に入りの一枚を見つけるのにさしたる労力はいりません。

今月25日までの開催です。近代日本画ファンの方には是非ともおすすめします。
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