「柿右衛門と鍋島」 出光美術館

出光美術館千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階)
「柿右衛門と鍋島 - 肥前磁器の精華 - 」
4/5-6/1



日本の誇る肥前磁器を極上の品々で辿ります。出光美術館で開催中の「柿右衛門と鍋島」へ行ってきました。

色絵磁器の金字塔ともされる両磁器をまとめて概観しています。初期伊万里から中国や朝鮮の影響も受けて成立した柿右衛門、それに様式化された格調高い紋様に独自の美学を見出す鍋島と、各々の変遷を鑑みながら優品を楽しむことが出来ました。もちろん私の好みは断然鍋島にあるわけですが、こうした同時代の、半ば兄弟の磁器を並行して見る面白さも格別なものがありそうです。

 

個々に惹かれた器を挙げていくとキリがありませんが、出光所蔵以外の優品が展示されているのも見所の一つです。中でも印象深いのは鍋島の「色絵桃文大皿」でした。これは重文指定を受けたMOA美術館のコレクションですが、所狭しとひしめき合うような桃の果実はもちろんのこと、むせるように群れて咲く花々の描写も見事なものがあります。一般的に鍋島には、意匠こそ斬新なれども、構図には余白もとる、言わば簡素な美を見せるイメージがありましたが、この濃密さは柿右衛門のエキゾチックな感触に負けないほどの強烈な存在感を放っています。同じくMOA所蔵の「色絵橘文大皿」とともに、展示のハイライトを飾っていました。

鍋島が半ば日本的な美感を放っているのに対し、(但し、鍋島に影響を与えた中国の器も展示されています。)インターナショナルな美、ようは西洋趣味の著しいものへと発展したのはもちろん柿右衛門です。展示では柿右衛門に惚れ込み、言わばコピーを作らせたザクセンのアウグスト強王のマイセンの作品なども紹介されています。また柿右衛門の伝播はオスマン帝国にも及んでいました。口径約60センチ弱にも及ぶ異例の大皿、「色絵美人図屏風文大皿」は、当地のスルタンが宴に用いたというものと同タイプの作品です。屏風越しに覗き込むかのような遊女の姿が、赤と金の二彩を駆使した伊万里の艶やかな絵によって表されています。一体この器でスルタンは何を盛ったのでしょうか。遊女が今にも宴に飛び出してくるかのような、一種の猥雑さすら感じさせていました。

器好きならずともおすすめ出来る展覧会です。6月1日まで開催されています。
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