僕はびわ湖のカイツブリ

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“男のためのガーデニング”改め

「表現する日々-アールブリュット展-」~湖南市 甲西文化ホール

2019-03-20 17:07:07 | アート・ライブ・読書
 「アールブリュット」は専門的な美術の教育を受けていない人たちが自発的に生み出した「生の芸術」を意味しますが、一般的には障がい者の造った芸術作品として認知されていると思います。
その一つには英語でいうアウトサイダー・アートが集団・組織の外部の人のような受け取られ方をされたこともあるようです。
それはさて置くとしても、日本でアールブリュットというジャンルが確立されてきていることに対して批判的になる必要はないでしょうし、むしろアート作品に触れる機会が多いことは歓迎すべきことなのかもしれません。

滋賀県は障がい者福祉に熱心に取り組んでおられる県ですので、各地域で定期的にアールブリュット展が開催されます。
滋賀県の湖南市では「表現する日々-アールブリュット展-」と題して、「甲西文化ホール」と「レストラン潮」の2会場で同時開催されました。



レストラン潮の会場へは立ち寄れなかったものの、甲西文化ホールでは7人の作家の約90点の作品が展示されており、それぞれの作家の個性豊かな作品を見ることが出来ました。
到着した時には展示スペースにはまだ誰も来ておられない状態でしたが、そのうちに一人二人と来場して来られ、どの方も一人でじっと作品をご覧になっておられたのが印象に残ります。



企画・製作は、湖南市の「特別非営利法人はれたりくもったり」で、近江学園と3つの社会福祉団体の協力の元に開催されています。(グローバンバン・信楽青年寮・やまなみ工房)
案内文には“彼らには製作に対しそれぞれ独自の必然性がその日常にあります。”との言葉が添えられてありました。



比嘉野歩治さんの作品は色鉛筆で描かれた絵が2枚展示されており、タイトルは両方共「女の人」となっています。
少年の頃から絵を描くのが好きだった比嘉さんは、2007年に現在通っているアトリエへ通うようになってから女性の写真を見て絵を描くようになったといいます。
色鉛筆を濃く塗り込んで作品を造られるそうですが、その絵はデフォルメされて力感に溢れている。



岡元俊雄さんは墨汁を使って絵を描かれ、描く時には寝転がり肩肘付いて割り箸に墨をつけて描かれるといいます。
また、絵は墨汁のみではなく、墨汁で描いた絵に絵の具を塗って描いた作品もありました。
タイトルは奇しくも比嘉さんの絵と同じ「女の人」ですが、比嘉さんの絵と岡元さんの絵が並ぶ様は壮観なものがあります。
(ポスターの絵は「レストラン潮」に展示されているようです)



小幡正雄さんは集めたダンボールに色鉛筆で多様な主題で描かれる作家さんです。
施設では作業に従事したあとは作品造りに没頭し、部屋には作品が積み上げられていたといいます。

赤鉛筆を好んで使われるそうですが、素材がダンボールということもあって薄オレンジのような、薄茶色のような色調の作品が多かったように思います。
主題に結婚式や家族を取り上げておられるものが多かったのですが。その絵が土偶のようにも見えてきてプリミティブな印象を受けます。



村田 清司は最初は施設で和紙を漉いていたそうですが、その後に絵を描くようになり、田島 征三さんと共著で3冊の絵本を出版されているそうです。
クレヨンとマーカーで描かれた絵からはほのぼのとした優しさが伝わってきますが、障がいや病がありながらもこんな優しいタッチの絵を描き続けておられるそうです。



油性マーカーで一気に描き上げたような作品を造られているのは木村茜さん。
赤のマーカーで描かれた「自転車」「お線香花火」「うちわ」「注射」の4枚の作品は、青のマーカーで描いても絵には同じ形があります。
湖南市のふるさと納税では湖南市に寄付すれば木村茜さんの「うちは」か「注射ガンバロウネ」の絵が返納されるそうです。



造形作品は大江正章さんと西川智之さんの作品が展示されている。
西川さんの作品は6作品中の3作品が「うさぎのリンゴ」と題が付いています。
うさぎのリンゴは無数のうさぎが積み上がってリンゴを形作っていますが、この作品は下から見上げるようにして見た方が面白いですね。



アールブリュット作品からは、それぞれの作家の心の中にある光景がストレートな形で表現されて、見る方の心理に迫ってくる強いものを感じます。
当然、人工物でありながらも自然的なもの、あるいは根源的なものを感じる作品群という言い方も出来るのではないかとも思っています。


<追記>
“滋賀県にはあちこちにアールブリュット作品がある”と実感したのは、立ち寄った先にあった小さなアールブリュット作品コーナーでした。
そこに展示されているとは露知らずでしたが、甲西文化ホールでも紹介されていた小幡正雄さんの作品が4点。
タイトルは「無題」ですが、お父さんとお母さんと子供・花・船・お父さんとお母さんが描かれています。



同じく、大江正章さんの陶芸作品で「きりん」「うま」「ねこ」「かえる」の愛嬌のある作品が4点。
猫が一番大きく造られていて、招き猫のポーズをとっていますね。



思いもかけない場所にまでアールブリュット作品が溶け込んでいるのは面白い現象です。
造る人・支援する人・受け入れてくれる人がうまく機能していることで、街を歩く我々に普通の景色としてアート作品を見せていただけます。



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