ボーダレス・アートミュージアムNO-MA美術館で開催中の「アール・ブリュット -日本人と自然BEYOND」は、2020年2月に滋賀県での開催を皮切りに全国7地域を巡回。
2022年2月までの2年間、全国を巡回した後、滋賀県に戻ってきた美術展だといいます。
20組のアーティストによる150点もの作品が公開されるこの美術展は、近江八幡市のNO-MA美術館・まちや倶楽部・旧増田邸の3会場で開催される街ぐるみのイベントとなっています。
市街地では「左義長まつり」のダシの準備が進み、祭り直前のにぎやかな雰囲気に包まれている街並みを進み、3会場の一つであるNO-MA美術館へ訪れました。
NO-MA美術館の一階の前庭側に展示された藤田雄さんの作品は、数字や鬼をモチーフとされており、動物と数字を合わせた作品や《鬼の面》というお面の作品が展示。
《鬼の面》は細かく切った色紙を厚紙に貼り合わせて作るといい、以前は節分の時期に作られていたそうですが、今は材料が手に入ればいつでも制作されているという。
《鬼の面》2013年 藤田雄
抽象画のような絵は、繰り返し描き重ねて描かれていくことで、複雑な色合いの濃淡が印象的な作品でした。
絵の中をよく見ると無数の文字が書き込まれており、名字である“あ・な・せ”の文字が幾つか見られ、自己の存在を主張しています。
《パラシュート》2014年、《無題》2016年 穴瀬生司
フロアーの中央に積みあがっているのは廣川照章さんの段ボール箱。
スーパーで入手して組み立てられた段ボール箱は、廣川さんの自室の寝る場所やわずかなスペースを残して積み上げられているといい、おそらくそこが自分にとって一番居心地の良い場所なのでしょう。
《箱》2021~2022年 廣川照章
箱の中身は何が入っているかが気になる所ですが、1箱だけ開封されている箱が展示されています。
中には細かく切った紙類が入っているミクストメディアですが、中は通常は開封されることはなく、廣川さんいとっては隠された大事なものなんだと思います。
NO-MA美術館の展示場所は1階と2階と庭の奥にある蔵の中の3つがあり、1階からそのまま蔵の中へ向かいます。
薄暗い蔵に入ると、中央の丸テーブルの上に蝋燭か西洋の燭台のような印象を受けるオブジェが展示されていました。
このオブジェはペンにセロハンテープを巻き付けて立体作品としていて、薄暗い蔵の中をほのかに照らし出す光のように感じました。
《無題》2011~2017年 鶴川弘二
蔵の壁には大小の赤い丸が描かれたポップな作品群で、丸の数や大きさは絵によって全く違う。
鶴川さんは自宅でも作業所でも絵を描くことを他人に中断させられることが大嫌いだといい、絵を描く時間を大切にされているといいます。
《無題》2013~2017年 鶴川弘二
本館の2階へ行くと、粘土作品の《ガネーシャ》の大井康弘さんの展示コーナーがあり、ガネーシャと一緒に6枚の平面作品が展示。
平面作品はコラージュ作品となっており、《女の子とパンツ》という作品では滋賀県の高校野球のチーム紹介の新聞紙の上に身体の不思議なパーツな張り付けられています。
《女の子とパンツ》2015年 大井康弘
NO-MA美術館会場でもっともインパクトを感じた作品は、レースや毛糸で編んだものををキャンバスに貼り付けて、上から油絵具で彩色した曲梶智恵美の作品群です。
毛糸を編んだものが貼り付けられているために立体感やうねるような力強さが感じられ、原色の派手な熱帯感と暗いトーンの陰影の混在する世界に魅了される。
《誕生1》 曲梶智恵美
展示されている部屋は和室で座布団があったので、しばらく座って眺めていましたが、闇(土)の中から這い出して明(地上)へ芽吹く生命のような生き生きとした躍動感を感じました。
作家自身が興味を持って取り組んだ幾つかの趣味が作品として一体化したような表現の世界ですね。
《誕生2》 曲梶智恵美
同じ曲梶さんの作品でも全面が明るい色彩で描かれた《花》という作品では、一面に花が咲き誇る庭のような明るさを感じます。
ガーデニングで好きな花を咲かせ、花に包まれるようにして過ごす時間が絵になったような作品だと思います。
《花》 曲梶智恵美
中武卓さんは花瓶をモチーフにして描かれる作家さんで、力強く描かれた花瓶と画面からはみ出るように咲く花は躍動感に溢れています。
多彩な色を使っているが、原色に近い色は使われておらず華やかイメージでないのは、作家のモチーフの捉え方なのかと思います。
右から《クルンクルン》《庭の菜の花》《11月の庭の花》 中武卓
カードサイズの紙にモノトーンで星や月をファンタジーのように描く葛西孝之さんは、海釣りが好きながら車を運転しないため実際に海へいくことは容易ではないという。
海で釣りをしたいという欲望を絵の製作で満たしているというその絵は、月の上に腰かけて釣りをしていたりするキャラクターが登場するユーモラスな作品です。
葛西さんの作品は宇宙をファンタジックに、またユーモラスに描かれており、どの絵にも味わいがあります。
《無題》 葛西孝之
2階の窓側には浅野春香さんの《コオラル2》という大きな作品が展示されています。
解説によると、古生物学者である浅野さんの父親がサンゴの研究をしていたことが、着想源となっているといいます。
この絵は真ん中に満月が描かれ、満月に近い夜に一斉に産卵するサンゴの習性を表現しているといい、米袋に描かれた不思議な作品です。
《コオラル2》2021年 浅野春香
アール・ブリュットとは、美術の専門的な教育を受けていない人が、湧き上がる衝動に従って自分のために制作したアートと定義されていますが、作品にはそれぞれの作家の個性が際立っています。
NO-MA美術館だけでも12人の作家さんの作品を見ることができましたが、今回は3会場で開催されているため次の会場へと向かいます。...続く。
2022年2月までの2年間、全国を巡回した後、滋賀県に戻ってきた美術展だといいます。
20組のアーティストによる150点もの作品が公開されるこの美術展は、近江八幡市のNO-MA美術館・まちや倶楽部・旧増田邸の3会場で開催される街ぐるみのイベントとなっています。
市街地では「左義長まつり」のダシの準備が進み、祭り直前のにぎやかな雰囲気に包まれている街並みを進み、3会場の一つであるNO-MA美術館へ訪れました。
NO-MA美術館の一階の前庭側に展示された藤田雄さんの作品は、数字や鬼をモチーフとされており、動物と数字を合わせた作品や《鬼の面》というお面の作品が展示。
《鬼の面》は細かく切った色紙を厚紙に貼り合わせて作るといい、以前は節分の時期に作られていたそうですが、今は材料が手に入ればいつでも制作されているという。
《鬼の面》2013年 藤田雄
抽象画のような絵は、繰り返し描き重ねて描かれていくことで、複雑な色合いの濃淡が印象的な作品でした。
絵の中をよく見ると無数の文字が書き込まれており、名字である“あ・な・せ”の文字が幾つか見られ、自己の存在を主張しています。
《パラシュート》2014年、《無題》2016年 穴瀬生司
フロアーの中央に積みあがっているのは廣川照章さんの段ボール箱。
スーパーで入手して組み立てられた段ボール箱は、廣川さんの自室の寝る場所やわずかなスペースを残して積み上げられているといい、おそらくそこが自分にとって一番居心地の良い場所なのでしょう。
《箱》2021~2022年 廣川照章
箱の中身は何が入っているかが気になる所ですが、1箱だけ開封されている箱が展示されています。
中には細かく切った紙類が入っているミクストメディアですが、中は通常は開封されることはなく、廣川さんいとっては隠された大事なものなんだと思います。
NO-MA美術館の展示場所は1階と2階と庭の奥にある蔵の中の3つがあり、1階からそのまま蔵の中へ向かいます。
薄暗い蔵に入ると、中央の丸テーブルの上に蝋燭か西洋の燭台のような印象を受けるオブジェが展示されていました。
このオブジェはペンにセロハンテープを巻き付けて立体作品としていて、薄暗い蔵の中をほのかに照らし出す光のように感じました。
《無題》2011~2017年 鶴川弘二
蔵の壁には大小の赤い丸が描かれたポップな作品群で、丸の数や大きさは絵によって全く違う。
鶴川さんは自宅でも作業所でも絵を描くことを他人に中断させられることが大嫌いだといい、絵を描く時間を大切にされているといいます。
《無題》2013~2017年 鶴川弘二
本館の2階へ行くと、粘土作品の《ガネーシャ》の大井康弘さんの展示コーナーがあり、ガネーシャと一緒に6枚の平面作品が展示。
平面作品はコラージュ作品となっており、《女の子とパンツ》という作品では滋賀県の高校野球のチーム紹介の新聞紙の上に身体の不思議なパーツな張り付けられています。
《女の子とパンツ》2015年 大井康弘
NO-MA美術館会場でもっともインパクトを感じた作品は、レースや毛糸で編んだものををキャンバスに貼り付けて、上から油絵具で彩色した曲梶智恵美の作品群です。
毛糸を編んだものが貼り付けられているために立体感やうねるような力強さが感じられ、原色の派手な熱帯感と暗いトーンの陰影の混在する世界に魅了される。
《誕生1》 曲梶智恵美
展示されている部屋は和室で座布団があったので、しばらく座って眺めていましたが、闇(土)の中から這い出して明(地上)へ芽吹く生命のような生き生きとした躍動感を感じました。
作家自身が興味を持って取り組んだ幾つかの趣味が作品として一体化したような表現の世界ですね。
《誕生2》 曲梶智恵美
同じ曲梶さんの作品でも全面が明るい色彩で描かれた《花》という作品では、一面に花が咲き誇る庭のような明るさを感じます。
ガーデニングで好きな花を咲かせ、花に包まれるようにして過ごす時間が絵になったような作品だと思います。
《花》 曲梶智恵美
中武卓さんは花瓶をモチーフにして描かれる作家さんで、力強く描かれた花瓶と画面からはみ出るように咲く花は躍動感に溢れています。
多彩な色を使っているが、原色に近い色は使われておらず華やかイメージでないのは、作家のモチーフの捉え方なのかと思います。
右から《クルンクルン》《庭の菜の花》《11月の庭の花》 中武卓
カードサイズの紙にモノトーンで星や月をファンタジーのように描く葛西孝之さんは、海釣りが好きながら車を運転しないため実際に海へいくことは容易ではないという。
海で釣りをしたいという欲望を絵の製作で満たしているというその絵は、月の上に腰かけて釣りをしていたりするキャラクターが登場するユーモラスな作品です。
葛西さんの作品は宇宙をファンタジックに、またユーモラスに描かれており、どの絵にも味わいがあります。
《無題》 葛西孝之
2階の窓側には浅野春香さんの《コオラル2》という大きな作品が展示されています。
解説によると、古生物学者である浅野さんの父親がサンゴの研究をしていたことが、着想源となっているといいます。
この絵は真ん中に満月が描かれ、満月に近い夜に一斉に産卵するサンゴの習性を表現しているといい、米袋に描かれた不思議な作品です。
《コオラル2》2021年 浅野春香
アール・ブリュットとは、美術の専門的な教育を受けていない人が、湧き上がる衝動に従って自分のために制作したアートと定義されていますが、作品にはそれぞれの作家の個性が際立っています。
NO-MA美術館だけでも12人の作家さんの作品を見ることができましたが、今回は3会場で開催されているため次の会場へと向かいます。...続く。
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