僕はびわ湖のカイツブリ

滋賀県の風景・野鳥・蝶・花などの自然をメインに何でもありです。
“男のためのガーデニング”改め

「バンクシー&ストリートアーティスト展~時代に抗う表現者の声よ響け」~佐川美術館~

2022-04-09 06:06:16 | アート・ライブ・読書
 壁に絵を描く行為を日本では“落書き”といい、横文字に直すと“グラフィティ”と呼ばれます。
ニューヨークのダウンタウンなどを舞台にした映画では壁や電車にカラフルな落書きがされている光景を見ますし、日本でもスプレーを吹き付けた落書きを見かけることが多々あります。
勿論、許可を受けたり依頼されたりして描かれたグラフィティも壁・電車・シャッター・車などに多く見られ、人の視線を釘付けにしたり気持ちを和ませてくれる絵も多い。

今回の美術展に登場するバンクシー&ストリートアーティストは、違法的な落書きに始まったグラフィティがストリートアートへと発展して、完成度の高い作品へ変遷していく過程がみえます。
サザビーズやクリスティーズのオークションで20億円以上の価格で落札されたなどでも有名なバンクシーは、今回の美術展で65点の作品が展示。
日本でもバンクシー作なのでは?と話題になったこもあって聞き覚えのある名前とはいえ、実像はイギリスを拠点とする正体不明のアーティストとされています。



美術展は5つのカテゴリーに分かれており、「バンクシー以前:グラフィティの時代」での12名のアーティストの作品35点を紹介。
次の「バンクシーとストリートアートの進化」ではスプレー缶を使った荒っぽさのあるグラフィティから完成度の高いストリートアートへ進化していったことが感じられる展示となる。
TVBOYの「フィンセントのセルフィー」ではゴッホがスマホで自撮りしている絵や、バンクシーの「風船と少女」をガラスのケースに入れた作品に「破産した場合はガラスを割る」など思わず吹き出してしまう作品がありました。

バンクシーはこのカテゴリーでは2作品。
1つは顔を隠したバンクシーの写真、もう一つはWelcomesと縫い付けられた玄関マット。
このマットは地中海のビーチに打ち上げられたライフジャケットの布地を使って、ギリシャの難民キャンプの女性に制作してもらった作品で、収益はすべて難民女性やその家族の元に届くのだという。



「インスピレーションの始まりと根源」ではバンクシー作品が11作展示され、アンディ・ウォーホールをパロったような作品や大手企業を皮肉った「ほとんど役に立たない」や「HMV」など。
またベトナム戦争でナパーム弾で大怪我をして泣きながら逃げていく少女(ピュリツァー賞受賞写真)を使って、両手をそれぞれミッキーマウスとマクドナルドが手を引いて歩く戦争を風刺した作品の「ナパーム」。

「バンクシー:作者、アーティストを越えて」ではイギリスのロックバンド「ブラー(Blur)」のCDジャケットなどが展示されていましたが、残念ながら90年代のロックミュージックの時代はロックに関心が薄れてたので知らない。
またエリザベス女王とダイアナ妃を入れ替えて作った偽札の「10ポンド紙幣、Dの肖像」はパフォーマンスでバラまいたところ、実際に使われてしまったという逸話もあるとか。



バンクシーは屋外でペインティグしている途中で警察に見つかり追われて逃げたことがあり、厚紙を切り抜いてスプレーを吹き付けるステンシルという手法を編み出して、時間をかけずに作品を作るようになったといます。
美術館に忍び込んで作品を展示したり、オークションで落札された作品をシュレッダーにかけられたことで更に落札価格があがったという「風船と少女」など話題に欠かない作品などゲリラ的な活動がどうしても目立つ。

「バンクシー:制度に対する芸術」では、爆弾の代わりに花束を投げようとする兵士・紛争でボロボロになった都市の残壁に描いた猫・拳銃の代わりにバナナを構えるパルプ・フィクションの一場面(タランティーノの映画)。
ピンクのリボンを付けた戦闘ヘリコプター・銃を構える警官の顔がマンガチックなスマイル顔・並んでいる兵士の顔が全てマンガチックなスマイル顔・ボーリング場で爆弾を転がす中年男、ここにバンクシーの信念がありそうです。



バンクシー作品からは、戦争や紛争・コロナ渦・人種差別や資本主義・政治に対する批判や風刺などのメッセージ性が感じられます。
ロシアのウクライナ侵攻が毎日のように伝えられる中、バンクシーの反戦への思いや批判が心に突き刺さります。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 絵本「トラックにのったクマ... | トップ | 川内倫子写真展|やまなみ|... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

アート・ライブ・読書」カテゴリの最新記事