ドレスデン・ア・カペラ合唱団の演奏4曲と、その指揮者による武蔵野合唱団と武蔵野市立一中コーラス部の公開レッスンを武蔵野市民文化会館で聴いた。
私は、あらかじめ整理券(無料)を取って入場したが、武蔵野市民文化会館の小ホールの470席は、ほぼ満席だった。といっても、その大部分は各合唱団の関係者だと思われるが。
ドレスデン ア・カペラ合唱団は、1996年に指揮者ユングによってドイツ中央東端にあるドレスデンで創設され、権威あるカンヌ・クラシック音楽賞受賞など国際的に高い評価を得ている。メンバーは22名とごく小規模の合唱団で、その大半がドレスデン音大出身者だ。今回が初来日。
「ア・カペラ」とは無伴奏合唱のことだが、その始まり、ドイツのドレスデンで、17世紀にハインリヒ・シュッツが広め、さらに18世紀のバッハ、19世紀のメンデルスにより、合唱音楽が市民に広く普及した。
指揮者のマティアス・ユングは、1964年マグデブルグ生まれ。ワイマール音大で指揮を学ぶ。1991年30歳のとき、ドレスデン聖十字架合唱団の音楽監督(代理)に抜擢され、その後もベルリン放送合唱団、ケルン放送合唱団、北ドイツ放送合唱団などを指揮する。
当日は、まず、武蔵野市立第一中学のコーラス部に生徒が登場し、ピアノの伴奏にあわせ、塚田先生の指揮で「流浪の民」を歌ったあと、マティアス・ユングがレッスンした。最初から少しずつ歌い、直すところを指摘して、歌い直し、と言う風に進んで行く。ドイツ語通訳が間に入るが、音楽にも詳しい人で、的確に訳し、生徒にも伝わっているようだった。
つづいて、武蔵野合唱団がブラームスの「ドイツ・レクイエム」をピアノ伴奏付きでドイツ語で歌い、同じくマティアス・ユングがレッスンした。指示はかなり専門的で細かく、私には内容は理解できなかったが、ドイツ語の発音を直されたり、逆にドイツ人より発音が良いと誉められたりして笑いを誘った。
レッスンの最後に、予定にはなかったらしいが、「我々の合唱団は少人数なので、良い機会だから、一緒に歌わせてください」と言って、武蔵野合唱団の中にドレスデン・ア・カペラ合唱団が入り込み、一緒に歌った。武蔵野合唱団には、貴重な経験になっただろう。
そして、最後にドレスデン・ア・カペラ合唱団が、シュッツ、バッハとメンデルスゾーンの3曲と、アンコールの曲(バッハ?)をピアノなして歌った。人間の声は最良の楽器をいうが、見事にコントロールされた歌声は、透き通り、冴え渡る音で、伴奏付き合唱とは別の、より鋭いという印象を受けた。
私は「ア・カペラ」といっても、ポピュラー音楽の「アカペラ」しか知らなかったので、楽器を使わず、その代わりを人間の声で補うとのイメージがあったが、まったく別物であった。
また、コーラスの経験のない私には、公開レッスンの様子はときどきTVで見たことがあるが、実際の指揮者の指示の仕方、表現方法は、ドイツ語であっても興味深かかった。