hiyamizu's blog

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よしもとばなな『もしもし下北沢』を読む

2011年03月17日 | 読書2
よしもとばなな著『もしもし下北沢』2010年9月毎日新聞社発行、を読んだ。

父親が知らない女と心中し、主人公の女性は人生をやり直すため、下北沢に部屋を借り、近所の小さなビストロで働き始める。ようやく日常生活を取り戻しつつあった時、突然母親が自宅を離れ部屋に転がり込んでくる。喪失感、孤独を抱える母娘と、下北沢の街の物語。

下北沢での彼女の生活は、ただひたすらにお店を中心に回っていた。そんなとき、父を知っていたライブハウスの店長の新谷くんに出会う。そして、・・・

なんで生きていると、体だけは勝手に立ち直っていくのだろう。
いや、だからこそすばらしいのだ。体が助けてくれるから。


下北沢近辺で暮らして10年になるというよしもとばななさんは、作中に、実在する店舗も多数登場させた(「もしもし下北沢特設サイト」に簡単な地図がある)。かって実在した主人公の働く「レ・リアン」というビストロも、2008年12月末に、本書中と同じく取り壊しになってしまった。今はメニューもそのまま幡ヶ谷にあるという。

初出:毎日新聞2009年10月~2010年9月

毎日新聞社は本書のiPhoneおよびiPad向けの電子書籍版をApp Storeで配信で発売した。通常の書籍版(単行本)1575円に対し、電子版は1200円。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

よしもとばななさんの小説を最後まで読んだのは初めてだ。とくに何が起こるわけでもなく、薄ぼんやりと、ほんわかと話は進んでいく。心地良いといえばいえるのだが、驚きの事実もなく、深く掘り込むこともない。

転がり込んできた母は言う。
「違うわよ。なんか、人生をきちんと生きなくちゃだめになる、っていう嘘の教えに負けそうなのよ。だって、きちんと生きないと大変なことになると思って必死でやったきたのに、考えうる大変なことのかなり上のほうのことが起きちゃったじゃない。・・・」




なぜこの本を読んだかというと、子供の頃から代々木上原に住んでいて、良く下北沢へ行ったので懐かしかったためだ。よしもとさんは、ここ数年下北沢があまりにも変わってしまったので、残しておきたくてこの本を書いたと言っていた。
60年ほど前の話だが、洋画好きだった私の母が良く幼い私を連れて下北沢の映画館へ行った。私は騒ぎもせず、たいてい母の膝に頭を乗せて眠っていたらしい。長じてからは自転車で下北沢へ行ったが、とくにどうということはないゴタゴタした町だった。いつの頃からか、演劇関係の人が集まり、流行の町になっていて、縁のない私は足が遠のいていた。



よしもとばなな
1964年7月24日、東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。
小説「キッチン」は1987(昭和62)年に第6回海燕新人文学賞を受賞するなど、その後の作品も数多くの賞を受賞している。諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。





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