黒柳徹子『トットの欠落帖』新潮文庫、1993年8月新潮社発行、を読んだ。
何かひとつ自分だけの才能を見つけようと次々と挑戦するトットちゃん。ピアノを習えば、「1万人に1人くらいあなたみたいな人がいるから心配しないで!」と先生に言われ、・・・。
そのうちに、NHKのテレビ女優としてデビューするが、まもなく、才能があるどころか、欠落人間だという事に気付いた。
トットちゃんの常識はずれの欠落から犯した69の失敗談が次々と開示される。
いくつかご紹介。
小学生の頃、友達が「アメリカには、テレビジョン、という箱みたいなものがあって、それが日本に来たら、家にいてもお相撲が見られるのだって!」と言う。彼女は、「どうやって、お相撲さんが、私の家に来て、箱に入るの?」と聞いた。
初恋の教会の副牧師さんに旅行のお餞別として駅で小さな箱を渡した。その中にはカマキリの卵が入っていた。彼女はその不思議なものが何であるか知らなかった。
その時の彼女のよそゆきは、配給のパラシュートで母が作った白のブラウス、ゴブラン織りのカーテンからのズボン、ペンキで赤く塗ったひび割れた運動靴だった。(せつない)
向田邦子が『父の詫び状』に書いている。当時まだ珍しい留守番電話は録音が1分だけだった。彼女は、「こういう機械に電話するのは・・・」などと早口で言っているうちに1分たって切れてしまう。またかけてきて、「1分って早いわね。私ってだめね」など言って切れる。立て板に水の早口で9通話して、結局、用件はあとでジカに話すからと言って終わる。
この話、先日テレビの向田邦子の話の中で出てきていた。
初出:1988年5月新潮社より刊行
黒柳徹子
1933年、東京生まれ。東京音楽大学声楽科を卒業し、NHK放送劇団に入団(テレビ女優第1号)。文学座研究所などで学ぶ。
1984年、NHK放送文化賞受賞。
1981年、『窓ぎわのトットちゃん』を出版し、総部数760万部を超える。
1984年、アジアで初めてユニセフ(国連児童基金)の親善大使。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
確かに桁外れなトンチンカンぶりが面白いのだが、70も続くとくたびれてしまう。なぜそんなとんでもない勘違いをしたのか、理由が示されるのだが、それが一層、彼女の欠落ぶりをあからさまにする。電車の中で読むのはやめたほうが良い。
高島屋デパートへ行って商品券を出した。店員さんは申し訳なさそうにいった。「お客さま、これは三越の商品券でございます」という話が出てくる。
私も、ヨドバシカメラにビックカメラのポイントカードを出したことがあるし、区役所の窓口に健康保険証を無くしましたと健康保険証を出したことがある。