7月14日「コンサート自由の風の歌」を四谷区民ホールで聴いた。2009年、2010年、2011年と3回目になる。
このコンサートの入場料は卒業式などで国家斉唱のとき起立しなかったり、ピアノの伴奏をしなかったため処分された教職員の裁判を支援するために使われる。*1
今回のコンサートが例年と異なるのは、林光*2さんの追悼であること、ピアノがアップライトの被曝ピアノ*3であることだ。
コンサートの始まりはいつも林光さんが勢い良く出てきて、そのまま椅子に座るといきなりピアノを弾きだす。曲はバッハの「前奏曲とフーガ」だった。今回は、林さんへの鎮魂を込めて、崔善愛(チェ ソンエ)さんのピアノと三宅進さんのチェロによる「アヴェ・マリア」で始まった。
その後、林さん作曲の童謡が、クラリネットとピアノの演奏と、ピアノとバリトンの歌で歌われ、第2部は、ブラームスのクラリネット三重奏と、トロイメライ・ノクターンなどのピアノ、そして最後はいつもの合唱団合奏で終わった。
崔善愛(チェ ソンエ)さんによれば、演奏会でアップライトのピアノを演奏するのは初めてで、今朝広島から4トントラックで矢川さん*3により運ばれたという。ピアノのもとの持ち主のミサコさんは現在も存命とのことだ。
アップライトにしては大きな音が響くピアノで崔さんも驚いていた。音の豊かさの点では当然グランドピアノには及ばない気はしたのだが。
側面に傷があり、ペンキでも濡れば良いのにと思ったが、被曝の際にガラスが突き刺さったあとで、あえてそのままにしているのだという。
それにしても、崔さんのショパン「スケルツォ第2番」のエネルギッシュな演奏にはびっくりした。
*1:私は君が代も、日の丸も好きでないが、国歌と決められているので、歌われるときには礼儀として起立する。しかし、どうしても起立したくない人にどうして強制するのだろうか。処分までするのは、そういう人を排除したくて、そのための踏み絵として国歌を利用しているとしか思えない。
*2 林光さんは、1931年生れの作曲家。昨年9月自宅前で転倒し意識を取り戻すことなく今年1月亡くなった。
うたごえ運動では、林さん作曲の歌が多く歌われていた。サントリー音楽賞受賞のオペラ「セロ弾きのゴーシュ」、モスクワ音楽祭・作曲賞受賞の映画音楽「裸の島」や、合唱組曲「原爆小景」が有名で、著書も多い。
*3被曝ピアノ公式サイト「ミサコのピアノ」と呼ばれる昭和7年ヤマハ製造のアップライトピアノ。爆心地より1.8Kmの民家で被爆。当時のままであるが、演奏は充分できるように矢川光則さんにより修復されている。
*4崔善愛(チェ ソンエChoi Sun-ae Lois)は、北九州出身。愛知県立芸術大学、および大学院修士課程修了。後に米国インディアナ大学大学院に3年間留学。ピアニストとしての演奏活動のかたわら、全国各地で「平和と人権」をテーマに講演をおこなっている。著書に「自分の国を問いつづけて―ある指紋押捺拒否の波紋」
その他の出演者は、飯村孝夫(バリトン)、橋爪惠一(クラリネット)、三宅進(チェロ)