hiyamizu's blog

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江國香織『金平糖の降るところ』を読む

2012年07月24日 | 読書2
江國香織著『金平糖の降るところ』2011年11月小学館発行、を読んだ。

日系アルゼンチン人としてブエノスアイレス近郊の町で生まれ育った佐和子(カリーナ)とミカエラ姉妹は、ボーイフレンドを共有していた。日本に留学した姉妹は、容姿に恵まれて屈託ない達哉と出会う。達哉に求愛された佐和子は達哉を共有することを拒否して彼と結婚し日本に住む。ミカエラは父親のわからない子供を妊娠して帰国し、アルゼンチン・ブエノスアイレスでシングルマザーとなる。

20年後、佐和子は突然、離婚届を残して、語学学校の教え子であった田渕と故国に戻る。ミカエラは成長した娘アジェレンと暮らしていたが、達哉が佐和子を追いかけてアルゼンチンにやってくると・・・

初出:「きらら」2009年5月号~2011年5月号



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

あのちょっとはかなげで、けだるい江國さん自身の写真にように、この小説にもいつものような雰囲気がある。なにしろ、アルゼンチンだし、東京でもバブルが弾けていないような生活だ。恋の駆け引き、シャレた会話と同時に虚しさが流れる。・・・でもそれだけ。

あんなに単純に輝いていた達哉も、後半は惨めだし、田渕たるや、単におじさんだ。ミカエラも佐和子も輝きを失って消えていくようだ。


ミカエラは自分がわずかに苛立っていることに気づく、まったくカリーナは、いつまでたっちゃんなんかにかかずらっているのだろう。男の人の思いどおりになんか絶対ならない。それこそあのころ、・・・なんどもくり返し誓ったのに。
・・・
けれども同時に、どこかで切実に待っていたのだ。どんなに誘惑されてもそれに屈しない、自分だけを愛してくれる男を。

(でもそんな男には魅力がない場合が多い、田渕のように)

妻がそばにいるのにいないような気がする、というのは外国育ちの女と結婚した夫が、みんな抱える杞憂にすぎないのだ、と?

(日本人の場合だって、妻にとって夫はいるのにいない存在なのでは?)

曇り空ではあるのだが、薄日がさしている。その日ざしは、けれどかえって寒々しいと、達哉は思う。まるで年寄の口角にたまった泡みたいでみじめったらしい、と。

(余計なお世話だ!)



江国香織(えくにかおり)は、1964年東京生まれ。父はエッセイストの江國滋。目白学園女子短大卒。アテネ・フランセを経て、デラウェア大学に留学。
1987年「草之丞の話」で小さな童話大賞、1989年「409ラドクリフ」でフェミナ賞受賞。
小説は、
1992年「こうばしい日々」で産経児童出版文化賞、坪田譲治文学賞、「きらきらひかる」で紫式部文学賞
1999年「ぼくの小鳥ちゃん」で路傍の石文学賞
2002年「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」で山本周五郎賞
2004年「号泣する準備はできていた」で直木賞
2007年「がらくた」で島清(しませ)恋愛文学賞を受賞。
その他、『ウエハースの椅子


登場人物

佐和子  別名カリーナ、アルゼンチンのエスコバル育ち、所沢の悪趣味な豪邸に住む
      正統派美人で上品なのに異性関係は奔放
達哉   佐和子の夫、数店の飲食店経営、普段は代々木上原に住む、体を鍛え常に自信に満ち溢れ、妻黙認のガールフレンドが常に数名
ミカエラ  別名十和子、佐和子の2才違いの妹、アルゼンチンに住む、ファクンドの秘書,ファニーフェイスで口が悪い、自分は性に奔放なのに娘が心配
アジェレン ミカエラの娘、19才、学生
ファクンド  ミカエラの勤める旅行代理店経営
マティアス アジェレンのボーイフレンド
尾崎    達哉の右腕
田渕理(さとし) 佐和子のスペイン語の生徒


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