hiyamizu's blog

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酒井順子『儒教と負け犬』を読む

2012年08月02日 | 読書2

酒井順子著『儒教と負け犬』講談社文庫さ66/9、2012年6月講談社発行、を読んだ。

日本での30代以上の高学歴独身女性、負け犬は、韓国では老処女(ノチョノ)と呼ばれ、中国・上海では余女(ユーニュイ)と訳される。両国で負け犬座談会、勝犬座談会を開催し、何故、晩婚化が進むのかを考察した。

韓国・ソウル
30代までは儒教の影響で結婚するまでは処女でいるとの意識が残っている(老処女)。女性は、友達同士であっても性的な話をすることはまずない。姦通罪のあり不倫も少ない。

上海
「いい男はみんな結婚しちゃった、いい女はみんな残っちゃった」という流行語がある。
三高(高学歴・高収入・高年齢)男は、すぐに自分よりちょっと下のレベルの女性を結婚してしまい(日本と同じ)、三低男は「外来(地方、農村)の嫁」を取るので、三高女の相手はいない。
上海の三高女は鼻っ柱が強く、合理的。自分の面子を守るためには、理想に合わない男性と簡単に付き合ったりしないし、理想に合致する男性を、時には親子でタッグを組んでアグレッシブに求めにいく。
価値ある存在(珍惜ジェンシー)であるためには夫になめられないように常に強くでる。(日本では、男性の腰が引けないように、女性はもてるためには弱く、けしてあなたを凌駕することはないとのふりをしなければならない)

3ヶ国に共通する背景に儒教があるとみた著者は、『女大学』『烈女伝』を読む。
さらに、3市の30才~45才の独身女性各200名にインターネットアンケートを実施する。

著者はいう。

負け犬と、老処女・余女の違い。それは、希望があるか否か、のような気が私はします。恋愛していなくてはならないという強迫観念にさいなまれた結果、セックス、不倫、ダメ男・・・と、男女間のドロドロしたものを既にたくさん見てしまっている、負け犬。彼女達は、純な老処女や、強い余女が心のどこかに持っている希望という「玉」を、今や失いかけているのではないでしょうか。
負け犬から希望を奪っているのは、自らのドロドロ体験ばかりではありません、日本においては、結婚と幸福との結びつきがあまりにも希薄なのです。



本書は、2009年6月講談社より単行本として刊行。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

日中韓の負け犬調査という観点は面白い。数十年前の日本を思わせるまだまだ純粋な韓国の負け犬達、強気一辺倒でこんな女性たちと結婚する男性がいるとは思えないような上海の負け犬達の対談には驚かされる。

後述のアンケート結果は、見事に3国の差違を表していて、近いようで遠い国を思わせる。

ベタ褒めの解説で「中国は産み出した儒教をあっさり輸出して忘れてしまった」というようなことを上野千鶴子さんが言っていた。韓国はまだその影響下にあるようだ。
もはや「儒教」には縁がない生活をしている私には、儒教という切り口はちょっとピンとこない。未だに「女の子らしくしなさい!」という言葉で柔らかくからまれている日本女性には根っこのところにはその影響が残っているのだろう。しかし、影響の大きさからいえば日本女性にはもはや儒教よりアメリカの影響の方が圧倒的だ。芯のところは慎ましくやさしい日本女性もいずれ「セックス・アンド・シティ」のようになってしまうのは身勝手な男性としては哀しい。

酒井順子の略歴と既読本リスト



インターネット調査結果

独り暮らし率  東京 40%、ソウル27%、上海25%
同棲率     東京 7%、ソウル 2%、上海11%
交際率     東京42%、ソウル48%、上海69%
彼と結婚希望  東京53%、ソウル52%、上海73%
二人旅行経験 東京72%、ソウル59%、上海65%
同棲経験有り  東京31%、ソウル12%、上海40%
結婚前SEX良 東京94%、ソウル74%、上海48%
異性数     東京4.6人、ソウル3.4人、上海2.4人
不倫経験    東京39%、ソウル27%、上海7%
親親戚からの結婚圧力
        東京45%、ソウル50%、上海72%
夫にリードしてもらいたい
        東京43%、ソウル21%、上海9%

東京の負け犬は、色々な人と付き合ってはきたけれど今は恋人がいない、もしくは恋人がいたとしても何となくつきあっている。一人暮らしなのでセックスは割りと誰とでもやってしまい、不倫も経験あります、というイメージ。


コメント
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