hiyamizu's blog

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ゲイル・コールドウェル『哀しみが思い出に変わるとき』を読む

2012年08月11日 | 読書2
ゲイル・コールドウェル著、高橋佳奈子訳『哀しみが思い出に変わるとき -女どうし、友情の物語-』(Let’s Take the Long Way Home A Memoir of Friendship )2012年6月柏書房発行を読んだ。

文筆家で読書家、独身、犬好き、アルコール中毒経験有りなどの共通点を持つ知的で努力家の二人の女性の友情と別れの、淡々とした静かな記録だ。

書評家であるゲールと、小説家のキャロラインは、ボストン郊外のケンブリッジに住む。飼っていた犬を通じて知り合ったふたりの女性は、年は十歳離れていたが、すぐに意気投合する。多くの共通点を共有し、互いに個性を尊重する大人の深い関係を築きあげる。

ゲイルは、フェミニズムや反戦運動に関わる強い自分と世界において何者でもない弱い自分に引き裂かれ酒に溺れる。夢だった書評家になってからはアルコール依存症を克服する。
頑固で好きなことにのめり込み、独立独歩で、身体を鍛えていてタフ。男性との付き合いも長くは続かず結婚しないという選択をし、犬だけが友。そんな彼女がキャロラインと出会う。

何キロもボートを漕ぎ、プールを50往復泳ぎ、川べりを互いの犬を連れて散歩し、森に出かけ、日々の暮らしを大切に楽しんで過ごす。そんな中、キャロラインがガンに侵され、ゲイルが51歳のとき、42歳で亡くなる。
1年間、ゲールはぼんやりと暮らす。そしてある人がいった。
「何より辛いのは、このことも自分が乗り越えていくということだよね」心というものは、そこにぽっかり大きな穴が開いていても生きつづけるものなのだ。

耐えられない別れはない。実際には皆耐えているのだから。耐えられるとはとうてい思えない別れがなのだ。



ゲイル・コールドウェル Gail Caldwell
1951年テキサス生まれ。元ボストン・グローブ紙記者。
20年に渡る記者生活の中で、2001年には文芸書評部門でピューリッツァー賞を受賞。自らの生い立ちを綴った作品にA Strong West Windがある。現在マサチューセッツ州ケンブリッジ在住。
なお、キャロライン・ナップの著書には、『なぜ人は犬と恋におちるか』『アルコール・ラヴァ -ある女性アルコール依存症者の告白』がある。

高橋佳奈子(たかはし・かなこ)
東京外国語大学ロシア語学科卒業。英米文学翻訳家。
おもな訳書にブライソン『ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー』、メイヤー『しょっちゅうウソをつかれてしまうあなたへ』、フェネル『犬のことばがきこえる』、コールター『夜の嵐』、クイック『オーロラ・ストーンに誘われて』など。東京都在住。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

頑固、頑張り屋で独立心の強い女性二人、日本的仲良しにはなり難い二人が、少しずつ付き合いを深めて互いを尊敬する生涯の親友になる。そのベタベタしないが肝心なときに寄り添うという付き合い方が爽やかだ。しかし、身体を鍛えていた健康な友を乗り越え難い病が突然襲う。残された主人公は亡くなった友との友情を噛み締めながら哀しみを乗り越えようとする。

私には、男同士の友情は昔からいろいろ描かれてきて、イメージできるが、女性同士の友情は、なにかベタベタしているくせに表面的な付き合いにとどまるという偏見がある。考えて見れば当たり前だが、この本を読めば、女性同士にも爽やかで深い付き合いがあることが解る。

表紙の若い女性の絵は爽やかなのだが、大人の女性の深い友情が感じられない。

コメント (2)
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