hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

米原万里『マイナス50℃の世界』を読む

2012年08月30日 | 読書2
米原万里著、写真山本皓一『マイナス50℃の世界』角川ソフィア文庫17092、2012年1月角川学芸出版発行、を読んだ。

米原さんは、TV取材班の通訳としてマイナス50度以下になるロシアのサハ共和国を訪れた。人々は極寒の地でどのように暮らしているのか、常識が覆される寒さを写真と簡潔な文で伝えている。取材に参加した山本皓一と椎名誠の写真と解説が付いている。

出発前の現地からの手紙にこうあった。
「お元気ですか。こちらはもうすっかり暖かくなりました。外の気温はマイナス21度、暑いほどです」

米原さんの返事。
「東京は春だというのにまだはだ寒く、きょうの気温はプラス21度です」


ヤクーツク市では冬は車のタイヤにチェーンを巻かない。スリップするのは春先だ。スキーやスケートも春、暖かくなってから始める。なぜなら、氷の上を滑る物が摩擦で表面を溶かし氷が水になるから滑るのた(物理の時間に習ったでしょ!)。あまりにも寒いと、氷が溶けず滑らないのだ。

バスも完全停止することがない。常に前後に動いて凍り付くのを防止している。

マイナス50度以下の戸外では、人工皮革のブーツやプラスチックでできたビンのフタなどは粉々にくずれてしまう。毛皮以外は使えない。

飛行機がヤクーツクに着いても人はすぐには降りられない。ガスバーナーの付いた車が来て、凍結したドアの氷を溶かさなければならないからだ。

冬の日本列島をおそうシベリア寒気団は、ヤクーツク上空の冷たい空気のかたまりがちぎれてとんできたものなのです。


本書は『マイナス50℃の世界』(清流出版刊)を再構築のうえ、文庫化。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

全部で125ページと薄く、小学生新聞への記事が元になっているためか、分り易い内容になっている。写真も多く、常識を超えた寒さに驚く(実感はできないが)。こんなところに住んでいる人がいることが信じられない。人間て、すごい!
裏表紙には、「親子で楽しめるレポート。米原万里の幻の処女作、待望の文庫化」とある。



米原万里(よねはら・まり)
1950年東京生まれ。父親は共産党幹部の米原昶。少女時代プラハのソビエト学校で学ぶ。
ロシア語の会議同時通訳を20年、約4千の会議に立会う。
著書に、『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』(読売文学賞)、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(大宅壮一ノンフィクション賞)、『オリガ・モリソヴナの反語法』(Bunkamuraドゥマゴ文学賞)、『米原万里の「愛の法則」
2006年5月ガンで歿。
実妹のユリは井上ひさしの後妻。





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