hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

黒野伸一『限界集落株式会社』を読む

2012年08月28日 | 読書2
黒野伸一著『限界集落株式会社』2011年11月小学館発行、を読んだ。

米国でMBAをとって、企業の財務立て直しに実績を誇るエリートの多岐川優が、起業前のひとときの休息のために、祖父、父が暮らしていた田舎の空き家へ帰郷する。そこは、65歳以上が半数を超える限界集落で、社会的な共同生活の維持が困難になっていた。

冷ややかな対応をしていた優も、少しづつ農家の人達と交流するうちに、乗りかかった船にのめり込み、集落の農業経営を担うことになる。現代の農業や地方集落が抱える様々な課題と格闘し、限界集落を再生しようとする。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

典型的なTVドラマのように、合理主義で冷たいエリートが、人情に触れて熱くなり、がむしゃらに貧困構造、無気力症状を改善していく。襲いかかる数々の難問を創意、工夫、努力で乗り越えるうちに、仲間の信頼を得て、最後の難関もなんとかクリアーする。
このあたりは調子良すぎるが、うるさいことを言う人は読まないことだ。最初からストーリは見えていて、気楽にさっと381ページの本を読むことが出来る。

私には農家の事情は分からないが、巻末に農業関係の参考文献が14も並んでいるので、著者はしっかり勉強したのだろう(多少、話の中への知識の取り入れ方が硬い気がするが)。

親からもらった土地があり、国からの保護、補助金を受ける農家、とくに兼業農家の不平には、私は反撥を覚える。大規模化に反対して小規模な土地を手放さず、既得権にしがみつく農家への保護、補助金は廃止し、生活保護、環境保護の一貫で対処すべきだ、と単純に考えてしまう。
著者も言っている。
苦労しているのは、農家だけか。・・・何万人もの派遣労働者がポイ捨てされて、路頭に迷うご時世だぞ。曲がりなりにも、補助金貰って、家があって食いものに困らない農家は、この国の底辺では決してないはずだ。



黒野伸一(くろの・しんいち)
1959年神奈川県生まれ。
2006年『坂本ミキ、14歳。』(文庫『ア・ハッピーファミリー』)できらら文学賞受賞し、デビュー。
2007年『万寿子さんの庭』は、女性に支持されロングセラー。
他に『長生き競争!』、『幸せまねき』。



登場人物

多岐川優  バツイチ
多岐川克己 優の祖父、1年前死亡するまで農業を続ける
多岐川晴彦 優の父、田舎の伝来の土地と家屋を売り払うつもり
大内正登(まさと) 元ワル、捨てた娘に農業を教わり、頭が上がらない
大内美穂(ミホ)  正登の娘
谷村三樹夫   長髪、痩せ、ITに強い
梅田千秋    デブ、漫画家志望
百瀬あかね   色っぽい、元キャパクラ嬢
栄作   兼業の米作家
五郎   農家
鉄平   農家、独身  
二ノ宮  役場の職員
うの、弥生、捨吉  ジジババ3人組
省吾、信康、愛理  子供



コメント
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