有賀貞著『ヒストリカルガイド アメリカ(改定新版)』2012年7月山川出版社発行、を読んだ。
私の最も嫌いな国は、何ごとも力づくで弱いものいじめするイスラエルとアメリカだ。アメリカは大統領がオバマに代わって多少変化したが、暴力的体質はなくなっていない。
嫌いなものについてはよく知る必要があると、両国の歴史などの解説本を読んでみた。
今回はアメリカで、次回イスラエルに関する本を紹介する。
231頁でアメリカの建国から現在までの歴史を概説していて、大学一般教養の教科書になりうる。その多くは政治、人種問題だ。
目次
「新世界」の国アメリカ/イギリス領北アメリカの発展/アメリカ革命と連邦共和国の形成/西部の発展と南北戦争/移民の流入増大と多様化/産業社会の形成/二つの世界大戦とアメリカ/冷戦時代のアメリカ/差別廃止の成果と限界/あらたな保守主義の台頭/人種的・文化的な多様化/世紀転換期のアメリカ
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
要領よく現在までのアメリカ史をまとめている。ざっと通読して流れをおさらいし、抜けた知識を補うことができる。教科書的な概説書をもとにしているだけに著者は様々な立場を公平に説明している。
この本を読んでみてもなぜアメリカが暴力的かはよく分からなかった。依然として主流の農村部の保守的で、私には狂信的に思える福音派の人々、対抗する都市部の享楽的でリベラルな人々、中流と極貧に二極化した黒人達など、極端に多様な考えの人も集まっている国であり、一面的には捉えられないのだが。極端なこといえば、民主主義とは名ばかりで、ユダヤ人と全米ライフル協会に牛耳られていると私には思える。
中流も含め貧しい者の民主党、金持ちの共和党と考えれれば、99%の民主党が圧勝すると単純な私は思うのだが。例えば、未だ銃を持って質実剛健で中絶にも反対の共和党支持の人々が多くいるらしい。
まあなにしろ400年に歴史しかない新しい国なのだ。
有賀貞(あるが・ただし)
1931年生まれ。東京大学大学院修士課程修了
一橋大学名誉教授、専攻はアメリカ政治外交史
著書:『アメリカ政治史』『国際関係史』など
以下、私のメモ。
一番古いヴァージニア植民地に最初の入植地ジェームズタウンができたのが1607年(現在までわずか400年の歴史)。ピューリタン(イギリス国教会分離派)102人がプリマスに入植したのは1620年で二番目。この地は発展せず、マサチューセッツ・ベイ植民地が1630年から10年間で約2万人が入植した(中部イングランドから)。
コロンブスはアメリカがアジアの一部と信じていたが、アメリゴ・ヴェスプッチはアジアとは異なる大陸だと考えた。その名にちなんで「アメリカ」と名付けられた。
1788年世界で最も古い成文憲法、合衆国憲法が発効した。いくつかの修正条項を加えただけで現在も存続。1789年ワシントンを大統領とする合衆国政府が発足。
1920年代自動車や電化製品の大量生産、大量消費の時代となり、都市の中流階級は華やかな文化が広がった。一方、プロテスタントでアングロサクソンの質実剛健な農村の人々は、都市は異教徒の移民の街で退廃した文化の中心と考えられ、禁酒法継続を主張した。
アメリカの主要な戦争と戦死者数
南北戦争(60万人)、第一次世界大戦(12万人)、第二次世界大戦(40万人)、朝鮮戦争(3.6万人)、ベトナム戦争(5.8万人)、イラク戦争(4.3千人)
南北戦争の死者が一番多い。
公民権とは、シヴィル・ライツの訳語で、政治的権利だけでなく、市民として社会生活上差別されない権利一般を含んでいるので、「市民的権利」が正確な訳語。
アファーマティブ・アクション(積極的差別是正処置)により、黒人は中流階級と極貧層「アンダークラス」に2極化された。人種を超えたアンダークラスのための社会政策が必要だ。
茶会運動:中小事業主、大きい政府を敵視、教条的
占拠運動:失業者、大きい会社を敵視、情緒的、我々は99%なのだ
所得で5階層に分けると、21世紀に所得配分が増大したのは最も富裕な20%だけで、下位4層の所得を合わせても上位20%に及ばない。とくに1%の超富裕層の所得の伸びがとくに大きい。
人種(2010年(%))
白人72.4%、ヒスパニックでない白人63.7、ヒスパニック(ラティーノ)16.3、黒人12.6、その他6.2、アジア系4.8、複合人種2.9、先住民0.9、ハワイアン等0.2
2050年にはヒスパニック系以外の白人は約50%になると推定。
中堅市民となった日系アメリカ人は、アフリカ系から「バナナ」(一皮むけば中は白人)と見られる。
アジア系内訳(2000年、(万人、%))
中国系(273、23)、フィリピン系(237、19.9)、インド系(190、16)、韓国・朝鮮系(123、10.3)、ベトナム系(122、10.3)、日本(115、9.7)系、カンボジア系(21、1.7)、パキスタン系(20、1.7)、ラオス系(20、1.7)、モン(苗族)系(19、1.6)