hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

米澤穂信『遠まわりする雛』を読む

2012年09月22日 | 読書2

米澤穂信著『遠まわりする雛』角川文庫よ23-4、2010年7月角川書店発行、を読んだ。

高校の部活である古典部シリーズの第4弾。全7編の連作短編集。
折木奉太郎たち4人の高校1年の1学期,夏休み,2学期,冬休み,3学期,春休みでの謎解きの中で、少しづつ近づいていく2ペアー。

「やるべきことなら手短に」
高校入学後、1ヶ月。
タイトルは、「やらなくてもいいことなら,やらない。やらなければいけないことなら手短に。」という奉太郎の考え方から。
しかし、千反田えるの「わたし,気になります」と持ち込んでくる問題にどうしても関わってしまう奉太郎。

「大罪を犯す」「正体見たり」「心当たりのある者は」


「あきましておめでとう」
奉太郎と千反田が初詣に行って神社の納屋に閉じ込められる。千反田の着物姿に奉太郎は困る。

「手作りチョコレート事件」
二人の関係をまだ保留したい里志と、意地でもチョコを受け取らせようとする伊原。

「遠まわりする雛」
奉太郎は千反田の頼みで、十二単を着た「生き雛」が地域を練り歩く地元の祭事「生き雛まつり」へ参加する。連絡のミスで混乱するが、なぜこの手違いが起こったのか、奉太郎が推理する。

本書は2007年10月刊行の単行本を文庫化した。

主な登場人物は、神山高校1年生。

折木奉太郎(おれき・ほうたろう):探偵役、余計なことはしないエコ人間、姉は共恵
福部里志(ふくべ・さとし):奉太郎の親友。奉太郎と鏑矢中学で一緒。こだわり派から気楽派に宗旨変えをし、こだわらないように努めている。
千反田える(ちたんだ・える):古典部部長、真面目、名家の娘、お嬢様で美人。「わたし、気になるんです」といって奉太郎を謎解きに巻き込む。
伊原摩耶花(いばら・まやか):小中とも奉太郎と一緒。ズバズバ言う、小学生に見える、里志にアタック



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

中高生にはお勧めだ。だが、中高年だって昔を思い出せば楽しめる?? 日常の「ほっとけば?」と言いたくなる、なんでもない謎を追求するためもあるのだが、ミステリーとしてはレベルが高くない。しかし、男女の高校生の気持ちの触れ合い、戸惑いがくすぐったい。

一番面白かったのは、表題作の「遠まわりする雛」だ。田舎の伝統行事の準備の様子、人間関係、そして千反田のお嬢様ぶりが興味深い。そして、最後に千反田が奉太郎に自分の決意を語るところは、いいね~。

「手作りチョコレート事件」もなかなか。謎はどうということないが、バレンタインの本格的チョコレート作りに意地になって必死に取り組む伊原が、多少怖くて、可愛い。うまく行かず責任を感じる千反田に、がっかりした様子を見せない伊原がいう。「うん。でもちょっときついかな。今日は帰るね。ちーちゃん、本当に気に病まないでね」

学園物を愛する世代でとくにこのシリーズを楽しみにしている人には面白いだろう。
里志と伊原がなんとなくいい感じになってきている雰囲気が感じられ、奉太郎と千反田は互いに意識しているのにまだまだ距離が詰まっていない。そんなまどろっこしい関係の歩みも、シリーズものの楽しみの一つなのだろう。


米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年岐阜県生まれ。金沢大学文学部卒業。
大学卒業後、2年間だけという約束で書店員をしながら執筆を続ける。
2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞奨励賞受賞しデビュー。
その他、『二人の距離の概算』『さよなら妖精』『春期限定いちごタルト事件』『愚者のエンドロール』『犬はどこだ』『ボトルネック』『インシミテル 』『儚い羊たちの祝宴』など




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