原田ひ香著『東京ロンダリング』(集英社文庫、2013年12月20日集英社発行)を読んだ。
住人が部屋で自殺/病死するなどした「事故物件」の賃貸物件は、不動産屋が次の入居者に事情を説明することが義務付けられていて、安くしてもなかなか借り手が現れなくなる。次の次の入居者には説明しなくてよいのだが。
そこで事故物件に短期間だけ住んで「ロンダリング」して、次に住む人に対する「事故物件の告知義務」をなくす仕事が生まれた。これが、主人公内田りさ子、32歳の仕事である。
りさ子は自分の不貞で離婚をし、実家にも戻れず、事故物件に住むロンダリングを仕事にした。次々に事件事故のあった部屋に住む。何事もなく一か月ほど過ごせれば、仕事は無事完了する。しかし、男性が突然死したことを知らず、突然連絡が絶えてしまって狂乱した恋人が飛び込んできたり、前の住人の借金取りが怒鳴りこんだりする。
「いつもにこやかに愛想よく、でも深入りはせず、礼儀正しく、清潔で、目立たないように。」これが、ロンダリングの鉄則だ。
やがて、りさ子は、台東区谷中の乙女アパート201号室に住むことになる。すべてを捨てさったりさ子は、距離を置こうとするのに、大家の真鍋夫人、定食屋「富士屋」の藤本との付き合いに引込まれていく。
初出:2011年7月集英社より刊行
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
面白く、スラスラ読める。不動産物件のロンダリングという仕組みを知らなかったので、これも面白かった。
四つ星にするか、迷ったのだが、物足りないところがあるので、三ツ星にした。
幽霊が出てきたり、自殺後のドロドロが尾を引いたりするのかと思ったが、盛り上がりもなく、すべてはさらりと流れて行く。
32歳の女性の再生の物語なのだが、著者の突き放したような書き方のせいか、あまりにスルッと進み、後に残るものがなく物足りない。ただし、面白く読める。