青山美智子著『リカバリー・カバヒコ』(2023年9月30日光文社発行)を読んだ。
新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。近くの日の出公園にある古びたカバの遊具・カバヒコには、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。人呼んで、”リカバリー・カバヒコ”。
アドヴァンス・ヒルに住まう人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明ける。急な成績不振に悩む高校生、ママ友たちに馴染めない元アパレル店員、駅伝が嫌でケガをしたと嘘をついた小学生、ストレスからの不調で休職中の女性、母との関係がこじれたままの雑誌編集長……
2024年本屋大賞ノミネート
ハートウォーミングな5話の連作短編集。
日の出公園にあるアニマルライドの「リカバリー・カバヒコ」が主人公。愛嬌ある動物の姿で、小さな子供がまたがって、揺らしたりして遊ぶ。もちろん彼は何もしゃべらない。
奏斗の頭
公立中学で優等生だった宮原奏斗(かなと)は、アドヴァンス・ヒルの新築マンションに引っ越し、推薦で入った進学校の高校に通うことになった。42人中35位の成績に愕然とし、偶然見かけたカバヒコに慰められる。翌日、同級生の雫田(しずくだ)美冬に「治したいところを触ると回復する」と教えられる。
紗羽の口
樋村紗羽は幼稚園児・みずほの母だが、ママ友・明美が苦手。バザー係の話し合いで困ったとき、とっつきにくいと思っていた絹川さんに助けられる。
ちはるの耳
憧れだったブライダルプロデゥースの会社で働く26歳の新沢ちはるは、自分の声や呼吸音が頭に反響するようになり休職中だった。成績のよい同僚の澄恵に圧倒されているのだ。カバヒコと、クリーニング店のおばさん・溝端ゆきえに「不安っていうのも立派な想像力だと、あたしは思うね」と慰められるが、さらに‥‥。
勇哉の足 小6の駅伝大会の選手に選ばれそうになった勇哉はズルをして、……。
和彦の目 出版社に30年勤務の溝端和彦は昔を思い出す。クラスでいじめられていたとき、母がカバヒコがすごい力を持っていると教えてくれたのだった。
初出:「小説宝石」2022年1・2月合併号~2023年5・6月合併号
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
気楽にスイスイ読めるのは良いのだが、表紙や、各話最初の絵が、青少年向けの漫画チックで、ちょっと敬遠気味。
子供の悩みは、当然小さなものだし、ママ友のイジメはグチャグチャした話で、真剣には読めない。まあ、青山さんの小説は、そんな小さな世界のささやかな話なのだ。