hiyamizu's blog

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垣根涼介『極楽征夷大将軍』を読む

2024年01月31日 | 読書2

 

垣根涼介著『極楽征夷大将軍』(2023年5月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

文藝春秋BOOKSの内容紹介

やる気なし
使命感なし
執着なし
なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?

動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。
足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて後醍醐天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。
一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。

混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?
幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。

 

第169回直木三十五賞受賞作

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

弟や家来に担がれたままの極楽尊氏像は新鮮に感じ、面白かったのだが、P549と大部で冗長で退屈。

 

確かに史実は勝ったり負けたりを繰り返したのだが、作品としては万遍なくではなく、どれかの戦いに的を絞って欲しかった。メリハリが少なく、弟・高国は兄の考えのなさに毎回驚きあきれ続けるくり返しで、同じパターンがしつこい。終盤も、だらだらしないで、天下をとった後できっぱり終わりとした方が良かったのでは。

 

圧倒的少数の側が、少しも意外とは思えない手段で、多数を誇る側を倒す同じような戦いの場面が続く。楠木正成、新田義貞の戦い巧者ぶり、勇猛な武将の活躍が派手な講談並みで少々陳腐。

 

 

 

足利尊氏:足利家の側室の庶子で幼名・又太郎。元服し高氏、後に尊氏。普段は極楽とんぼで、土壇場で図太くなる。後の足利幕府の征夷大将軍。正室は登子(とうし)。二代将軍は息子の義詮(よしあきら)。

足利直義:側室の庶子で幼名・次三郎、兄・又太郎の2歳下。元服し高国、後に直義。頭脳明晰で勉強家。実質的に室町幕府を興す。正室は彰子。

高師直(もろなお)幼名・五郎。足利家の執事。足利幕府の影の立役者。

高師泰(もろやす)師直の弟。武芸に秀でるも政治には疎い。

上杉憲房:上杉家は足利家の郎党。高氏・高国の伯父。長子が憲顕(のりあき)、養子に重能(しげよし)。

細川和氏:倒幕に功あり。阿波守。

赤松円心:後醍醐天皇に嫌われている護良親王に呼応して倒幕に参加し、天皇から冷遇される。

 

後醍醐天皇:鎌倉幕府(執権・北条高塒)を打倒し、建武の新政を行う。元弘の乱で隠岐の島に流されるなどしたが、南朝を興すなど野心家で、不屈の闘志。

護良親王:大塔宮。後醍醐天皇の息子。父と折り合いが悪い。

楠木正成:後醍醐天皇に呼応して倒幕に挙兵。息子・正行とともに戦い巧者。

新田義貞:倒幕に参加。建武の新政の立役者の一人。

北畠親房:後醍醐天皇の側近。長子は顕家。

 

 

垣根涼介(かきね・りょうすけ)

1966年長崎県諫早市生れ。筑波大学卒業。

2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。
2004年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞(史上初の3冠)。
2005年、『君たちに明日はない』で山本周五郎賞を受賞。
2016年『室町無頼』で本屋が選ぶ時代小説大賞受賞。
2023年『極楽征夷大将軍』で、第169回直木賞受賞。

他の著書に『ヒート アイランド』『サウダージ』『光秀の定理』『信長の原理』『涅槃』など。

 

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