伊坂幸太郎著『777トリプルセブン』(2023年9月23日KADOKAWA発行)を読んだ。
そのホテルを訪れたのは、逃走中の不幸な彼女と、不運な殺し屋。そして――
累計300万部突破、殺し屋シリーズ書き下ろし最新作
『マリアビートル』から数年後、物騒な奴らは何度でも!
やることなすことツキに見放されている殺し屋・七尾。通称「天道虫」と呼ばれる彼が請け負ったのは、超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという「簡単かつ安全な仕事」のはずだった――。時を同じくして、そのホテルには驚異的な記憶力を備えた女性・紙野結花が身を潜めていた。彼女を狙って、非合法な裏の仕事を生業にする人間たちが集まってくる……。
そのホテルには、物騒な奴らが群れをなす!
伊坂幸太郎の『マリアビートル』(2022年公開のブラッド・ピット主演の映画『ブレット・トレイン』の原作)の続編。
前作『マリアビートル』でも、東京駅で東北新幹線に乗り込み、指定されたスーツケースを持って次の上野駅で降りるという極めて簡単な仕事だった。運が悪い七尾は、車内で数々の同業者と遭遇し、格闘の末、盛岡まで行く羽目になり、危うく死体の山に加わるところだったのだ。(E2事件)
「部屋に行って荷物を渡す。それだけだよ。本当に簡単。びっくりするくらい」…」と真莉亜は、通称「天道虫」の七尾に言う。ところが、常に運が悪い方に倒れる男、凄腕の殺し屋・七尾は、ますますどんどん窮地に追い込まれていく。10人ほどの殺し屋が集まってきたホテルで、危険を顧みずに勇敢に戦えば戦うほど、絶望的状況に落ち込んでいく七尾。そしてついに……。
超高級ホテルの部屋を訪ねた七尾は、誤ってその人物を死なせてしまう。おまけに部屋番号を間違っていて、その男は同業の殺し屋だった。七尾は本来の受取人に品物を渡し、エレベータに乗り、やれやれと思うが、途中止まった階で爆発物専門の同業者と出会う。さらに必殺の吹き矢を扱う六人組の業者(殺し屋)がこのホテルにやって来て、ホテルじゅうが、敵味方入り乱れた戦場になる。
本書は書下ろし。
私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)
ともかく面白い、笑いながら楽しめる殺し屋小説。伊坂節の軽妙な会話が冴えわたる。徹底的に運の悪い七尾のぼやき、あきらめが笑える。
個性の強い登場人物たちが、まさかと思う意外性あふれる会話を交わし、強烈な殺し合いもユーモアある世界にしてしまう伊坂幸太郎ワールドが展開される。
主な登場人物
蓬実(よもぎ):妻子を事故で亡くし、政治家を辞めて、情報局長官になっている。ヨモピー。秘書は佐藤。
モウフとマクラ:片付け業者。二人でシーツを持って敵をぐるぐる巻きにする。顔は平凡、身体は小さい。
乾:業者たちを使って政治家の裏仕事を受ける。犯罪の証拠を残さないため、紙野を使う。解剖マニアの噂あり。
紙野結花:あらゆることが記憶に刻まれて、辛いこともすべて忘れられない。ココに逃してもらうよに依頼。乾に記憶屋として使われている。某データを見るためのパスワードとなる777の質問と答えを記憶している。
ココ:逃し屋で、ハッキングおばちゃん。おそらく60代。
六人組:いずれも毒矢を吹く。アスカと大柄なナラは23歳の女。カマクラは26歳の男。ヘイアンはせっかちな28歳。センゴクは大柄で暴力的な30歳。リーダーのエドは35歳。
高良と奏田(コーラとソーダ):海外で爆発物処理会社を立ち上げて大金持ち。その後、爆発物専門の業者に。
奏田「大活躍のスポーツ選手を見て、この人みたいにはなれないんだなと、落ち込んだことないんですか?」
高良「梅の木が、隣のリンゴの木を気にしてどうするんだよ」「梅は梅になればよい」