hiyamizu's blog

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村田喜代子『縦横無尽の文章レッスン』を読む

2011年07月01日 | 読書2
村田喜代子著『縦横無尽の文章レッスン』2011年3月朝日新聞出版発行、を読んだ。

芥川賞作家、数々の文学賞受賞者かつ選考委員、かつ大学文学部客員教授の村田喜代子が、大学の講義内容を元に、文章の味わい方、書き方を指南する。

題材は、小学校低学年の作文、童話、世界の学者がネット上で闘わす文明論、哲学書、博物誌と幅広い。さらに、文章を書くためのノウハウというより、それ以前の「優れた文章は、どこが、なぜ良いのか」を考えさせることに主眼を置いている。
抽象論でなく実践的であり、やさしく、ざっくばらんな話しぶりでわかりやすい。



何を書くか。ということは、何を書かないか。ということとつながっている。・・・どうやってこの子供たちはたいして悩んだ形跡もなく、するりとクリアしたのだろう。・・・「生き生きと動いている心を持つ」ことが大事になって・・・。

相手に伝えたいことがあるから書くわけで、それには論理的に他人にわかるように筋のわかる文章を書かねばならない。「文体とは、しゃべり方である」

「文章の作り方」というのは別の言い方をすると「物事の考え方」なのである。・・・
普段から優れた文章を読み続けていけば、必ず自分の頭がそれらの文章の思考回路に共鳴するようになるのである。

対象物をじっくりと見てみよう
しかるのち、眼を閉じる
物事の本質はそれからでないと見えてこない

初出:「小説トリッパー」2009年秋季号から2010年冬季号を改題、改稿



村田喜代子
1945年福岡県生れ。
1985年個人誌「発表」創刊
1987年『鍋の中』で芥川賞
1990年『白い山』で女流文学賞
1997年『蟹女』で紫式部文学賞
1998年『望潮』で川端康成文学賞
1999年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞
2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞受賞



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

「文章って、いつも急いで意味だけとって先に進んでいるが、ちゃんと読むと面白いものなのだ」とあらためて教えられた。

もちろんこの本を読んだからといって良い文章が書けるようになるわけではない。ましてや名文が書けるようになるはずがない。なにしろ著者の前作は『名文を書かない文章講座』なのだから。しかし、文の味わい方、文章のどんなところがポイントなのかは解った気がした。
そして、とりあげる文が、小学生の作文から、インターネットでの学者の回答例、童話、前衛的文章まで幅広いので、文の流れを捕まえ、良い点、悪い点が大づかみできる。他の文章読本に多くみられるように細かな点にこだわりすぎることがない。



目次から
何を書くか、何を書かないか? 小学生の作文にひれ伏そう
面白がって、自由に、大胆に、冗談まじりに、好きなようにやってみよう
  間違っても、しかつめらしくならないで
真っ直ぐな、素直な文章ばかり書いていないか?
  理屈はこんなふうに捏ねるのだ
さあ、大胆に、冗談まじりに、
  一所懸命に、理屈を捏ねてみよう
天才少年大関松三郎の詩を読む
  これが七十年前に書かれた文章表現だ
  言葉の陰にあるものを読み取ろう
筋の通る文章と筋の通らない文章
考察とは物事を明らかにするために
  よく調べて考えること
考えながら、笑ってみよう
  笑いながら、考えてみよう
対象物をじっくりと見てみよう
  しかるのち、目を閉じる
  物事の本質はそれからでないと見えてこない
深く書くとはどういうことか
  たかが、ねずみの話であるが
  たかが、はとの話であるが
書く前に考えること
  書き終えて読み直すこと

創作必携
 一 テーマをどう摑むか
 二 文体をどう作るか
 三 書く前は徹底的に調べる
 四 まず自分の目と耳で推敲する
 五 文章の中に空白はないか
 六 自分の癖を知る

コメント
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