かぶれの世界(新)

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限界集落のシンボル

2022-06-07 21:17:10 | 日記・エッセイ・コラム
私の実家は愛媛県大洲盆地の狭い谷の集落にある。集落名は「中組」と呼ばれ、中組は「古城」「大河内」「棟さこ」の三つに分かれている。歴史を辿ると戦国時代頃には存在していたらしい。中組が自治会の単位になっている。中組のなかで私の実家のある「古城」は消滅の危機にある。

「古城」には子供が一人もおらず、子供を産む適齢期の母親や独身女性もいない。結婚しそうな独身男性も中年を過ぎてしまい、もう結婚適齢期を過ぎてしまった。隣の「大河内」や「棟さこ」には子供がいるし、適齢期をすぎたがまだ出産できそうな若い女性もいる。

この集落の表通り(県道)は国道のう回路で、集落との交差点はいわば集落の玄関でありシンボルである。交差点の左側には郷土の成功者の生垣に囲まれたお墓と墓守の家があり、通称オワン(お庵)と呼ばれ道を訊かれた時の目印になっていた。オワンの反対側は普通の田んぼだった。

ところが昨年その田んぼが稲作を止めて畑になり、何故かブルーベリーが植えられた。4月に帰郷した時ブルーベリー畑は全く手入れされておらず雑草畑になっていた。更にその後2カ月足らず経過して、雑草畑の背が伸びて「雑木林」みたいになってしまってた。

数日前に交差点で知りあいの老農夫に出会った時、私は雑木林を指さして「酷いことになってるね」と声をかけた。彼はしかめ顔をして、「もうどうしようもない、近所の人とほっとけと言ってる」と答えた。雑木林の地主は引っ越して集落からいなくなったらしい。

集落のシンボルが郷土の成功者のお墓から「雑木林」に変わってしまった。哀しいけどどう見ても限界集落にピッタリのシンボルだ。数日前に雑木林で農婦と若者が草刈り機をかけているのを見て期待したら、3分の1程度やって後は放置されたままだった。尚更悲しいシンボルになった。■
コメント
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