一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

美しき矢内理絵子女流四段に、いろいろ教えていただく(その3)

2013-04-22 00:27:54 | 女流棋士
(再掲)
上手(香落ち)・矢内女流四段:1三歩、2三銀、3四歩、4三飛、5四金、6一金、7二銀、7三歩、8一桂、8二玉、8三歩、9一香、9四歩 持駒:角、銀、歩2
下手・一公:1五歩、1九香、2五歩、2八飛、2九桂、3七歩、4六銀、4七歩、5六歩、6五歩、6六馬、6七金、6九金、7六歩、7七桂、7八玉、8七歩、9六歩、9九香 持駒:桂、歩2
(▲4七歩まで)

以下の指し手。
△8四角▲7五歩△7四歩▲5五歩△5三金▲5八飛△6三金▲5四歩△7五角▲5五桂△6六角▲同金△5七歩▲1八飛△4六飛▲同歩△5八銀▲6三桂成△6九銀不成▲同玉△6三銀

美しき矢内理絵子女流四段は、△8四角と打った。現在盤上でいちばん働いている駒は▲6六馬。それを消しにきたのだ。しかしいかにも窮屈な角である。
もし▲7五歩と突いたら、次に▲7六桂△9三角▲8五桂まで角が詰んでしまう。それを防ぐには△7四歩と突くしかない。しかしこれは自玉のコビンが開いて、すこぶる味の悪い手になる。仮に△7五角▲同馬△同歩が実現しても、▲7四桂が残る。
私は当然、▲7五歩と突いた。矢内女流四段はやっぱり△7四歩。こう開き直られてみるとどうしていいか分からず、私は▲5五歩と突いた。が、これは上手の金を手順に引かせてよくなかった。
▲5五歩では▲7六金も考えたが、△6四歩からごちゃごちゃした戦いになって、こちらが攻め潰されると思った。では黙って▲8六桂だったか。
本譜△7五角に、私は▲5五桂と打つ。待望の一手にも見えるが、次に▲4三桂成としても2手かけて飛車を取っているし、上手の高美濃囲いが固い。誘われているようで、ちょっとダサイ感じだった。
とはいったものの、△6六角には▲同金とせず、▲4三桂成だったかもしれない。△5七歩が手筋で、▲1八飛とよろけざるを得ないようでは、急に自信がなくなってきた。
そして矢内女流四段は△4六飛! ここ、△4一飛▲6三桂成△同銀▲5三歩成となれば下手必勝だから当然の反発だが、この手があるなら▲5五桂はやはり緩手だったと言わざるを得ない。
▲4六同歩に矢内女流四段は△5八銀と絡む。しかしここは△5四金と歩を払われるのがイヤだった。▲6三桂成と金を取れては、下手も息を吹き返した感じである。
矢内女流四段は△6九銀不成を利かしてから△6三銀だが、このときちょっと、迷ったそぶりがあった。

▲5五角△7三角▲6四銀△同銀▲同歩△6七歩▲7九銀△6八銀▲同銀△5八金▲同飛△同歩成▲同玉△6八歩成

このあたりで、ふたりの中年氏の対局が次々と終わった。いずれも上手の貫禄勝ち。ふたりは矢内女流四段の丁寧な講義を受けていた。
左の木村晋介会長戦は、いつの間にか下手がおかしなことになっている。これが上手の魔術というか、気が付くと形勢がひっくり返っているのだ。
私は▲5五角と打った。いま見れば、ここは▲5三歩成の一手なのだが、対局中は速度負けすると思っていた。自分では冷静に指していたつもりが、やはり独特の雰囲気に飲まれていたのだろう。
矢内女流四段は△7三角合。△7三銀合なら▲8五桂で下手優勢の読みが、アテが外れた。本局は矢内女流四段との読みが合わず、一から読み直すことが多い。やうたんとは相性が悪いのかもしれない。
私は▲6四銀とかぶせる。△同銀に▲同歩の瞬間が気が利かないが、次に▲8五桂を楽しみにして、ここでは自信を回復していた。
「木村先生、よろしくお願いしますよ。指導対局は団体戦なんだから。お互いいい手を指して上手を苦しめないと」
私は軽口を飛ばす。木村会長は無言だ。
矢内女流四段は△6七歩。これも1秒も考えなかったが、指された瞬間、妙手だと思った。どうしてプロは、こういう手を思いつくのだろう。本局、私が最も勉強になった一手である。
▲6七同金は△7五桂が厳しい。▲8五桂と跳びたいが、それは詰めろでないから、空いた地点に△7七銀と打たれ下手負け。大山康晴十五世名人ならどう指すだろうかと考え、▲7九銀と忍んだ。
矢内女流四段は△6八銀。▲同銀に△同歩成と思いきや、△5八金! この手筋をうっかりし、負けにしたかと思った。
その動揺が、私に悪手を指させる。△6八歩成に、私の応手は。

上手(香落ち)・矢内女流四段:1三歩、2三銀、3四歩、6一金、6八と、7三角、7四歩、8一桂、8二玉、8三歩、9一香、9四歩 持駒:飛、銀2、桂、歩
下手・一公:1五歩、1九香、2五歩、2九桂、3七歩、4六歩、5四歩、5五角、5八玉、6四歩、6六金、7七桂、8七歩、9六歩、9九香 持駒:飛、金2、銀、歩3
(△6八歩成まで)

(24日につづく)
コメント (3)
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