(再掲)
上手(香落ち)・矢内女流四段:1三歩、2三銀、3四歩、6一金、6八と、7三角、7四歩、8一桂、8二玉、8三歩、9一香、9四歩 持駒:飛、銀2、桂、歩
下手・一公:1五歩、1九香、2五歩、2九桂、3七歩、4六歩、5四歩、5五角、5八玉、6四歩、6六金、7七桂、8七歩、9六歩、9九香 持駒:飛、金2、銀、歩3
(△6八歩成まで)
以下の指し手。▲4七玉△3八銀▲5六玉△5九飛▲4五玉△2九飛成▲4二飛△5二桂▲8五桂△2五竜▲5六玉△6二歩▲7三桂成△同桂▲6三歩成△4七銀打▲5七玉△5八銀成▲5六玉△4四桂打
まで、115手で矢内女流四段の勝ち。
私は▲4七玉と逃げたが、大失着だった。▲6八同玉は△2八飛▲5八合△4九銀と絡まれて面倒と見たのだが、△2八飛には▲5七玉と立って、上手は次に明快な詰めろがかからない。こう指すのだった。
美しき矢内理絵子女流四段は、さして考えず△3八銀。取れば△3五桂で、次に△2七銀や△5八飛が厳しい。私は▲5六玉と上に逃げる。以下△4七銀打▲4五玉△4一飛を予想し(▲4四合は△3三桂まで詰み)これも難解と見ていたのだが、矢内女流四段は△5九飛と、下から追い立ててきた。▲4五玉に△2九飛成。
この辺りで、木村晋介将棋ペンクラブ会長の一局が終わった。いったん傾いた流れは元に戻せず、最後は矢内女流四段が華麗な美濃崩しを見せた。
早速感想戦に入る。矢内女流四段の講義は簡にして要を得て分かりやすい。そんな矢内女流四段をチラチラ見る。やっぱり綺麗だ。
感想戦が終わると矢内女流四段が、「さあ、(問題は)こっちですよね…」とつぶやき、座り直した。
私は▲4二飛を利かす。大駒を手に持つとつい打ってしまうのが私の悪いクセで、今回は一枚使わそうとしたのだが、その損得は微妙。△5二桂と打たれ、これで上部脱出を防がれてしまった。ただしこの桂はいまのところ、跳べない。
と、左に将棋ペンクラブ幹事のM氏が入った。M氏も指導対局に参加とは、これで役者が揃った感じである。M氏は角落ちの手合いでチャレンジした。
△2五竜に▲5六玉と戻され、△6二歩。私は待望の▲7三桂成から▲6三歩成だが、恥ずかしい話、この局面は勝ったと思った。
しかしここで△5五竜があることに気付いた。▲5五同金は△7八角▲5七玉△6七角成▲4八玉△4七銀打まで詰みなので▲5五同玉の一手だが、△3三角の王手飛車は下手負け。
ところが矢内女流四段はもっと厳しい手を用意していた。
△4七銀打! 尻からの王手をうっかりしていた。直前に▲7三桂成△同桂の交換があったので、6五への逃げ道がないのだ!
私は▲5七玉だが、△5八銀成でまた上に戻され、△4四桂打で投了した。以下は▲4四同角に△同桂と取れるのがミソで、▲同飛成に△7八角▲6六玉△6七角成まで。△6二歩は、△5二桂を跳ねるための防波堤だったのだ。
中盤からはうまく指したつもりだったのに、残念。△6六角に▲4三桂成と飛車を取らなかった、▲5五角で▲5三歩成としなかった、△6八歩成を▲同玉と取らなかった、など後悔の手はあるが、これがいまの私の実力だから仕方ない。
感想戦で矢内女流四段は、どんどん入玉を目指されたらキツかった、と言った。だが、私は入玉が不得手だし、まして指導対局では指しにくい。
「△2三銀を結果的に働かせてしまったのがマズかったですね」
というと、
「それは結果論ですから…」
と返された。「▲6六角がいい手でしたね。△5三飛にもじっと▲6六馬と引かれて手厚く指されてしまって…」
「一公は手厚い指し回しをする」は、植山悦行七段、大野八一雄七段の統一見解だが、初指導の矢内女流四段からその単語が出たのはさすがだと思った。
足がシビれたので、いったん席を外す。うしろに元オセロ・中島知子似のおかみさんがいたので、としちゃんの1号店はどこにあるかと聞いたら、それはないという。「2号店」はシャレで付けたらしい。その遊び心、気に入った。
矢内女流四段-M戦も激戦となった。振り飛車から巧みな捌きを見せたM氏が互角以上に指し回したが、▲3九玉・▲8八飛の局面で△6六角と打った手に対し、M氏が慌て気味に▲4八飛と回ったのがマズかった。
上手はすぐに飛車を取らず、△5九銀とカケたのが当然ながら好手。これで上手ペースになった。
以下はM氏の猛追をギリギリかわして、矢内女流四段の制勝となった。
感想戦では、△6六角に▲4八歩なら下手有望とのことだった。△8八角成と飛車を取らせている間に反撃するのがミソだ。M氏はいい将棋を落とした。
以上5局が終了して、上手の全勝。極めて順当な結果となった。
「矢内先生が全部勝ちましたけれども、どの将棋がいちばん大変でしたか」
と誰かが問う。
「いえ、どれも大変な将棋で…。皆さんお強くて」
と、ここも如才ない答えの矢内女流四段だった。
時刻は午後6時にならんとしている。このあとは同所で打ち上げである。「矢内理絵子女流四段と語ろう」みたいなもので、今回の指導対局の、もうひとつのお楽しみである。
(つづく)
上手(香落ち)・矢内女流四段:1三歩、2三銀、3四歩、6一金、6八と、7三角、7四歩、8一桂、8二玉、8三歩、9一香、9四歩 持駒:飛、銀2、桂、歩
下手・一公:1五歩、1九香、2五歩、2九桂、3七歩、4六歩、5四歩、5五角、5八玉、6四歩、6六金、7七桂、8七歩、9六歩、9九香 持駒:飛、金2、銀、歩3
(△6八歩成まで)
以下の指し手。▲4七玉△3八銀▲5六玉△5九飛▲4五玉△2九飛成▲4二飛△5二桂▲8五桂△2五竜▲5六玉△6二歩▲7三桂成△同桂▲6三歩成△4七銀打▲5七玉△5八銀成▲5六玉△4四桂打
まで、115手で矢内女流四段の勝ち。
私は▲4七玉と逃げたが、大失着だった。▲6八同玉は△2八飛▲5八合△4九銀と絡まれて面倒と見たのだが、△2八飛には▲5七玉と立って、上手は次に明快な詰めろがかからない。こう指すのだった。
美しき矢内理絵子女流四段は、さして考えず△3八銀。取れば△3五桂で、次に△2七銀や△5八飛が厳しい。私は▲5六玉と上に逃げる。以下△4七銀打▲4五玉△4一飛を予想し(▲4四合は△3三桂まで詰み)これも難解と見ていたのだが、矢内女流四段は△5九飛と、下から追い立ててきた。▲4五玉に△2九飛成。
この辺りで、木村晋介将棋ペンクラブ会長の一局が終わった。いったん傾いた流れは元に戻せず、最後は矢内女流四段が華麗な美濃崩しを見せた。
早速感想戦に入る。矢内女流四段の講義は簡にして要を得て分かりやすい。そんな矢内女流四段をチラチラ見る。やっぱり綺麗だ。
感想戦が終わると矢内女流四段が、「さあ、(問題は)こっちですよね…」とつぶやき、座り直した。
私は▲4二飛を利かす。大駒を手に持つとつい打ってしまうのが私の悪いクセで、今回は一枚使わそうとしたのだが、その損得は微妙。△5二桂と打たれ、これで上部脱出を防がれてしまった。ただしこの桂はいまのところ、跳べない。
と、左に将棋ペンクラブ幹事のM氏が入った。M氏も指導対局に参加とは、これで役者が揃った感じである。M氏は角落ちの手合いでチャレンジした。
△2五竜に▲5六玉と戻され、△6二歩。私は待望の▲7三桂成から▲6三歩成だが、恥ずかしい話、この局面は勝ったと思った。
しかしここで△5五竜があることに気付いた。▲5五同金は△7八角▲5七玉△6七角成▲4八玉△4七銀打まで詰みなので▲5五同玉の一手だが、△3三角の王手飛車は下手負け。
ところが矢内女流四段はもっと厳しい手を用意していた。
△4七銀打! 尻からの王手をうっかりしていた。直前に▲7三桂成△同桂の交換があったので、6五への逃げ道がないのだ!
私は▲5七玉だが、△5八銀成でまた上に戻され、△4四桂打で投了した。以下は▲4四同角に△同桂と取れるのがミソで、▲同飛成に△7八角▲6六玉△6七角成まで。△6二歩は、△5二桂を跳ねるための防波堤だったのだ。
中盤からはうまく指したつもりだったのに、残念。△6六角に▲4三桂成と飛車を取らなかった、▲5五角で▲5三歩成としなかった、△6八歩成を▲同玉と取らなかった、など後悔の手はあるが、これがいまの私の実力だから仕方ない。
感想戦で矢内女流四段は、どんどん入玉を目指されたらキツかった、と言った。だが、私は入玉が不得手だし、まして指導対局では指しにくい。
「△2三銀を結果的に働かせてしまったのがマズかったですね」
というと、
「それは結果論ですから…」
と返された。「▲6六角がいい手でしたね。△5三飛にもじっと▲6六馬と引かれて手厚く指されてしまって…」
「一公は手厚い指し回しをする」は、植山悦行七段、大野八一雄七段の統一見解だが、初指導の矢内女流四段からその単語が出たのはさすがだと思った。
足がシビれたので、いったん席を外す。うしろに元オセロ・中島知子似のおかみさんがいたので、としちゃんの1号店はどこにあるかと聞いたら、それはないという。「2号店」はシャレで付けたらしい。その遊び心、気に入った。
矢内女流四段-M戦も激戦となった。振り飛車から巧みな捌きを見せたM氏が互角以上に指し回したが、▲3九玉・▲8八飛の局面で△6六角と打った手に対し、M氏が慌て気味に▲4八飛と回ったのがマズかった。
上手はすぐに飛車を取らず、△5九銀とカケたのが当然ながら好手。これで上手ペースになった。
以下はM氏の猛追をギリギリかわして、矢内女流四段の制勝となった。
感想戦では、△6六角に▲4八歩なら下手有望とのことだった。△8八角成と飛車を取らせている間に反撃するのがミソだ。M氏はいい将棋を落とした。
以上5局が終了して、上手の全勝。極めて順当な結果となった。
「矢内先生が全部勝ちましたけれども、どの将棋がいちばん大変でしたか」
と誰かが問う。
「いえ、どれも大変な将棋で…。皆さんお強くて」
と、ここも如才ない答えの矢内女流四段だった。
時刻は午後6時にならんとしている。このあとは同所で打ち上げである。「矢内理絵子女流四段と語ろう」みたいなもので、今回の指導対局の、もうひとつのお楽しみである。
(つづく)