前代未聞のタイトル戦

第16期マイナビ女子オープン五番勝負があす４日から始まる。タイトル保持者は西山朋佳女王、挑戦者は甲斐智美女流五段だ。読者も先刻承知のように、甲斐女流五段は目下絶好調ながら、先日現役の引退を表明した。引退確定の（女流）棋士がタイトル戦に出るなぞ前代未聞、今後もそんな事態は起きないだろう。
甲斐女流五段の状況を男性棋戦に例えたら、現役は引退したが竜王ランキング戦は指せる、という感じだろうか。
いや、コトはタイトル挑戦だからレベルが違う。では、フリークラスの棋士がタイトル挑戦を決めたようなものか。
いや、そうなったらその棋士は成績抜群につき順位戦に復帰してしまい、引退どころではない。
なら、フリークラスに転出した棋士が、タイトル挑戦を決めたようなものか。
いや、転出するということは棋力の衰えを自覚しているということであり（森内俊之九段を除く）、そこからタイトルに挑戦するのは、常識的ではない。
よって、タイトルの経験が何期かあり、現在も現役バリバリでなければならない。
ということで、久保利明九段あたりが該当すると思うが、久保九段がそんなことをするわけがない。
つまり甲斐女流五段は、ふつうでは考えられない表明をしたということだ。
しかし今回の五番勝負、盛り上がるのだろうか。マイナビには悪いが、ちょっとシラケるような気がする。甲斐女流五段が勝っても負けても味がわるい。
その意味で、先の女流王位戦挑戦者決定戦で、甲斐女流五段が伊藤沙恵女流三段に敗れたのはよかったと思う。これから引退する女流棋士より、未来のある女流棋士がタイトル戦に登場したほうがよい。
ちなみに今回の両者の対戦成績は、西山女王の２勝、甲斐女流五段の３勝。うち甲斐女流五段の２勝は、西山女王が奨励会三段リーグで14勝を挙げた以降でもぎ取ったもの。つまり、充実の西山女王に互角以上の成績を残しているわけだ。
もし甲斐女流五段が女王を奪取したらどうなるのだろう。怖いもの見たさで、その後の展開を見てみたい気がする。