一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第49期棋王戦第1局

2024-02-06 23:20:37 | 男性棋戦
4日は第49期棋王戦第1局が行われた。藤井聡太棋王に挑戦するのは伊藤匠七段で、昨年の竜王戦七番勝負に続き、2度目のタイトル戦登場である。今年度は4人の棋士が綺麗に2つずつのタイトル戦に挑戦したが、伊藤七段はその四人衆のひとりとなる。先の竜王戦では藤井竜王にストレート負けを喫したが、伊藤七段は十分に実力を出したと思う。相手が強すぎただけだ。
ただ、伊藤七段だって、昨秋から成長している。藤井将棋にピッタリついていけば、藤井棋王の小ミスに乗じて、勝敗をひっくり返すことがあるかもしれない。
振駒で藤井棋王の先手となった。棋王戦の開幕局は、タイトルホルダーが先手番を得て勝つイメージがあるが、本局はどうなるか。
将棋は角換わりとなった。藤井棋王は何を指しても強いが、とりわけ角換わりの将棋は、勝率が10割に近い(やや大袈裟)。伊藤七段が受けて立つからには、それなりの対策があるのだろう。
将棋はノータイムでどんどん進む。最近はAIによる研究が深く、中盤の難しいところさえもノータイムで進む。結局指す手は同じなんだから、考えたってしょうがないでしょう、というところか。昭和のころなら毎回同じ形の相矢倉でも、長考合戦があった。そこに私たちは、プロとアマの違いに唸ったものである。いまは考え方が合理的になったといえるが、将棋が薄っぺらくなった気がして、個人的にはつまらない。
藤井棋王が微差よしで進む中、9筋の歩の垂らしを玉で取った。ここ、香で取るとのちにタダで取られる変化があるからだが、私から見たら玉で取るのは怖い。だけど藤井棋王は、昨年の棋聖戦第3局で、あえて四段目の玉で踏ん張った実績がある。三段目の玉などなんでもないのだろう。
すると伊藤七段は、3筋の歩を突いた。これが深謀遠慮な研究手だったようだ。
だけど私たちには絶対的な藤井信仰がある。最後は藤井棋王が勝つのだと思った。
だが、伊藤七段が2~4筋を開拓すると、様相が変わってきた。藤井棋王はすでに7~9筋を制圧している。ということは、持将棋の可能性ありである。
藤井棋王はこのあたりから熟考を重ねるが、伊藤七段の敵陣開拓は止まらない。
結果、双方の玉が入玉し、17時35分、129手まで持将棋となった。「タイトル戦の持将棋」については、当ブログ2019年9月21日の記事に詳しいが、開幕局の持将棋は、1991年の第4期竜王戦以来、33年ぶり。藤井棋王においては、初の持将棋だった。
驚いたのは局後のコメントで、藤井棋王は「伊藤七段の掌の上(で指していた)みたいな将棋になった」。また伊藤七段は、「持将棋を目指す展開だった」。
藤井棋王のコメントはともかく、伊藤七段は、ほかの棋士の証言やその指し方などから、かなり早い段階から持将棋を意識していたフシがある。そのココロは、角換わりで勝率10割近くを誇る藤井棋王に、クリンチに持ち込んで引き分け(持将棋)とし、無勝負で次回の先手番に臨みたい、というものだったようだ。
むかし間宮純一六段という、入玉狙いが好きな棋士がいたが、間宮六段は「相手の陣地にいたほうが玉が安全だ」というポリシーがあった。だが伊藤七段のそれは引き分け狙いで、今回の狙いがその通りだとしたら、思想が退廃的だと思う。これでは、たとえ先手番を取ったとしても、その将棋は負ける。
それより何より、藤井棋王を怒らせた??マイナスのほうが大きくないだろうか。
第2局は24日(土)。いろいろな意味で、第2局が楽しみになった。
コメント (2)
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