一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第37期竜王戦第6局(後編)

2024-12-13 00:45:29 | 男性棋戦
第37期竜王戦第6局である(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)。
局面を見ると、藤井聡太竜王が銀を逃げ、佐々木勇気八段が端に角を打ち(王手)、藤井竜王が歩で受けていた。先手は1手しか指していないから、この角がいかに悪手だったかということだ。
この角、私レベルのアマは、つい打ちたくなる。この瞬間は気持ちがいいが、ふつうに受けられて窮してしまうのだ。よくあるパターンである。
それを佐々木八段がやっちまったことが信じ難いが、藤井竜王の歩は数手後の妙手ではない。王手の応手である。佐々木八段が熟慮した1時間6分の間に、当然この手も入っていただろう。だが、自ら飛車先を止めるだけに、軽視していたか。しかし藤井竜王は理外の理の手も平気で指す。持ち時間はたっぷり残っていたのだ。佐々木八段はここが勝負所と、もっと注意深く読まねばならなかった。
現実に戻り、佐々木八段はすでにこの罪に気付き、頭を抱えていた。将棋盤は目の前にあるのに、あらぬところを見ている。対して藤井竜王は盤上没我だ。これはもう、流れは藤井竜王である。
ここで封じ手。佐々木八段は封じたくなかっただろうが、巡りあわせだから仕方ない。
明けて2日目、12日。私だったら何はともあれ馬を出るが、開封されると、佐々木八段のそれは、香を打つ手だった。だが悪手は悪手を呼ぶがごとく、この手も問題だったようだ。ついに形勢バーは「佐々木35:65藤井」になった。
あんな混乱した状態で封じ手を指せ、というのが無理な話で、ここは冷静さを取り戻すべく、2~3時間を割くべきだった。だが関係者の手前、それもできなかったか。
消費時間は佐々木八段のほうが2時間32分多く残しているが、もう藤井竜王に、そんなに時間はいらない。ここから消費時間が詰まっていくだろう。
そこからしばらく経って局面を見ると、佐々木八段が角2枚を犠牲に、強引に飛車を取っていた。藤井玉は左辺に逃げているが、1四にいた遊び金がない。よく見ると藤井玉の上に乗っていた。あ、あのポンコツ金がしっかり働いている!
大山康晴十五世名人は、遊び駒をいつの間にか玉の守りにつけていたが、藤井竜王のそれもえげつない。この展開は佐々木八段にとってあんまりである。
佐々木八段には悪いが、あとは投了までの儀式を見るのみとなった。藤井竜王の急所の角打ちに、もはやこれまでと15時22分、佐々木八段が投了した。藤井竜王、4連覇なる!!
いやはや何とも、ドラマチックな展開だった。本局、明らかに藤井竜王が悪かった。佐々木八段も、最終局を意識した場面があっただろう。
しかし71手目の角打ちの王手が大悪手で、以降の佐々木八段は心ここにあらず、夢遊病者のようだった。
全6局大健闘で、竜王戦史に残る名勝負だったと思うが、タイトル戦はトータルで勝たねば意味がない。佐々木八段もモヤモヤしたものが残っただろう。再度の登場を期待する。
そして藤井竜王は、これでタイトル26期目である。とにかく強すぎて、何も形容できない。
打倒藤井の強力な刺客が現れないいま、藤井竜王の快進撃は、まだまだ続きそうである。
コメント (1)
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