神様がくれた休日 (ホッとしたい時間)


神様がくれた素晴らしい人生(yottin blog)

「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた(218) 甲越 川中島血戦 45

2024年10月04日 20時38分07秒 | 甲越軍記
 この曲淵庄左エ門と言う男、隠れ無き武辺名誉の者であるが、理非については無頓着で心のままに動いて、他の人々の気持ちなど少しも考えない
それゆえに、本人に悪げなくとも、大いに迷惑を被る者多く、とかく争論すること多く、訴えに及んだことは七十四度にも及ぶ、そのうち一度だけは勝ったけれども七十二回は訴訟に負けて、残る一度は預かりとなる。

それなのに又しても家中の朋輩と論争になり、またしても訴訟に敗れた
悔し紛れに、「此度の訴訟は、某が勝つべきものなのに、各方面に手を回さなかったばかりに負けてしまった、今一度、訴訟をおこすが、その時は柿、栗を手土産にもって各方面に配るものなり、特にわが里のさわし柿の味は最上であるから、必ずや訴訟も勝利するであろう」と言って相手の者たちを散々に罵ったが、晴信が愛する者なので、誰もこれに逆らわず口をつぐんでいた
しかし櫻井安芸守ただ一人は、小身の者であるが曲淵のあまりの非礼さに腹を立てて
「曲淵殿は近頃勿体ないことを申されるものかな、それは上を軽んじているから出てくる言葉なり、これほど御令正しきお家の文武二道に優れた誉れ高い大将の下にあって、さようのような後ろ暗いことを申して、重ねて訴訟すると言う
重ねて訴訟するなら理をもってするべきであり、たとえ金銀財宝を積んできても、其の方の負けであるのは誰もが知るところだ」と声を荒げて言った。
曲淵は、これを聞くと傍らの人々の前で手をついて謹んで申すには
「某は、櫻井殿のように御大将とも親戚でなく位も低いけれども、切り合いならば勝るので、悔しければこの場にて立ち会うべし、必ずや首を砕いて進ぜよう」と罵って、刀の柄を撫でまわしながら立ち上がって、そのまま帰って行った。

曲淵の豪胆で強きことは誰一人知らぬ者はなく、ここまで言われても追いかけていく者は一人もなく、そのまま見送るしかなかった
櫻井安芸守は、曲淵の雑言に腹を立てて、今福浄閑、武藤三河守と連なって、晴信公の前に出て、訴えありの様子に見えれば、晴信公は先手を打って
「櫻井殿、何事ありしか」と言葉をかければ、櫻井は前ににじり出て「今日、曲淵が上をないがしろにして、某らの判断を嘲り、罪はなはだ重ければ早く彼を罰していただきたい、さもなければ某らの役職を罷免していただきたい」と涙を流して申し上げた。

晴信は、曲淵の雑言の数々を聞いて「そなたの申し分はいちいち理に適っている、あの曲淵めは昨日今日まで板垣の小者であれば、直参の者さえ敬うべきであるのに、某の一族であるそなたに雑言を申すなどとんでもないことである
しかれども曲淵には仔細あり、一年前に板垣弥冶郎は本郷八郎左衛門が小身であることを侮ったので、八郎左衛門は憤って板垣に切りつけて傷を負わせた
慮外はわが国において大小にかかわらず、我が国の制度で遺恨の仔細をあれこれ問えば、本郷の言い分に利があったが、相手は重臣の板垣であれば、しつけのために本郷を座敷にとりこめ置いたところ、板垣の小者であった曲淵めは本郷の罪をゆるすのは贔屓(ひいき)であると思い、某を恨み狙う様子にて罪に問うべきと思ったが、よくよく考えてみれば、板垣に取り立ててもらった恩の義理を思っての優しき志であると居間近くに呼んで、すぐに対面して、『板垣は当座の主であり、甲州一円の者は皆わが譜代である、真の主は我である』と諭せば、曲淵は涙を流して誓詞を書いて随身したのであった
またある時には、上州波手羅谷の合戦で、和田八郎の家人礒谷与三郎が首一つ、曲淵が二つ取ったので、いずれも名誉の手柄であるから、磯谷には上州の新参者ゆえ褒美として刀をとらせて、曲淵には譜代なる故心安く脇差を与えたところが、礒谷に劣る褒美と腹を立てて、その脇差を某の御簾まで投げ返す狼藉を行ったが、戦場では用に立つものと某に免じて許した
例えば猫というものは、いたずら者で引き立ての主も知らず、きれいにしている座敷を糞で汚し、可愛がっている小鳥を狙って悪さをする
されども鼠を捕るには一段と潔ぎよきものなり
鼠の悪さは猫の悪さの何倍もひどく、それを人が退治しようとて思い通りにはいかない、それを猫はいとも簡単に片づけてしまう
それゆえ多少の悪しきことは目をつぶり、猫を重宝なりと思うのだ
あの者は、先代信虎公の時より数度走り回り数か所の手傷を負い、米倉丹後守と曲淵は旗本の五人も褒めるので由を聞くと、摩利支天を信仰して未だ精進しているとのこと『誰に習っているかと』と問えば、加々美の大坊の秘伝であるとのこと。彼の如き文盲の者が経を読誦するとはそれもみな某への奉公である
十人で守るべきところを一人で守るとあれば、いかに至らぬ者であれ武道の奉公はかくの如し。これを罰して失うは国家の大損と大方の事は見逃しているのだ、これを罰して追いやれば」『あれほど軍功をあげた者でも、僅かな罪で成敗されるのか』と諸士の士気は下がるであろう
良将は材を捨てることなく、名君は士を捨てること無しと古人も言うではないか
さりとて、そちが役を辞すれば、曲淵も気遣いに至り、我らの為も知らずに自ら忠功も薄くなってしまう、我に免じて堪忍してはくれぬか」と仰せになれば
四人の人々も君の士を愛する心を感じ、伝え聞いた諸士も皆軍功を励み、曲淵に負けまいぞと励むのであった。







きっかけ

2024年10月04日 06時50分32秒 | 知人・友人
 自分の仕事、結婚相手、趣味、友人、振り返ればそれぞれに出会いのきっかけがある
嘘か本当か知らないが、ニュートンはリンゴの木の下に座っていたから引力を発見するきっかけになったし、豊臣秀吉は家出した子供の時、橋の上で寝ていたから蜂須賀小六に出会い、その後の出世物語のきっかけになった(完全な作りごとだが)

こんな大物のきっかけは別として、我々一般人にもいろいろなきっかけがある
準親友ともいえるMと友達になったきっかけは「ヒッピーヒッピーシェイク」のレコード
高校時代、クラス一の暴れ者、停学の常習だったM、教室にレコードを一枚持ってきて、周りの連中に次々と「この歌を知ってるか」と声をかけるが、誰も知らない、第一Mとは関わりたくない
そんなところに、なぜか私にまで聞いてきた、一度も彼と話したことはなかったが・・・私は、この歌を知っていたから、ワンフレーズだけ歌ってみせた
Mは目を丸くして、初めて手ごたえを感じて喜んだ
あれが現在名古屋に住むMと今でも連絡し合う仲に発展したきっかけだ
それがきっかけで「へたくそバンド」まで結成したのだった
それがまたまたきっかけで、やんちゃ坊主のTMとも未だに付き合っている
初めて告った同級生女子に見事に袖にされて落ち込んだとき、二人は我が家に来て慰めてくれた
一緒に風呂に入って、飲めない酒を飲んで慰めてくれた。

その後は父が経営していたミニスーパー兼料理店でMは結婚式をして、料理は私が作り、そのまま披露宴にも招かれた
Mの奥さんとのキューピット役も高校時代に何度かやったものだ
二人共、ガンを患った、この点でも私とは気が合う。

星を見ることが好きになったきっかけは、中学生の時、父が東京へ行った時の土産に口径4cmの屈折望遠鏡を買ってきてくれたのがきっかけだ
あれから流星観測、黒点観測、ガリレオ衛星の位置、土星の環、スバル星団の青白い宝石に夢中になった
観測をやめたきっかけもある、近くの友達と望遠鏡もって深夜住宅街の外れの田園地帯に行っては星を見ていたが、その夏、深夜に覗きの不審者が出て、父に「まちがわれるから」と言われて行くのをやめた
家の二階窓から観測していても、それも間違われそうでとうとう観測をやめてしまった
結局、きっかけはあっても縁がなくて続かないこともある

テレビをライブで見るのはドジャースと大相撲くらいで、ドラマやドキュメンタリーは全て録画しておいて、コマーシャルを飛ばしてみる
あまり面白そうでなかったら倍速で見る、なんせ時間が惜しい、くだらない番組に時間は費やせない

だが、テレビ番組の中にもきっかけはおこる
今、ムーミンの本を読みだしたのも、テレビでトーベヤンソンの特集があったからだ、それを見てムーミンを読んでみようと思うきっかけになった
私の人生の中に新たな世界が開けたきっかけだ
もっとすごい人なら、これをきっかけに童話作家になる人もいるだろう
「光るきみへ」がきっかけで、歴史好きの私が唯一興味を持たなかった平安時代を知ろうと思ったきっかけになった
平安時代は天皇と藤原氏の時代でもある、そしてもっとも長い平和な時代でもあった、そして世界初の女流文学者が競い合った時代でもある
この番組をきっかけに「源氏物語」を読んでみようと思うようになった
ムーミンを読み終えたら「源氏物語」だ、最初は漫画であらすじだけでも、と思ったが、漫画をきっかけにするよりも直接原本小説を読んだ方が、時間と費用の節約になる
ということでムーミンの次は源氏物語を読むと言う楽しみが出来た、これは長編なんだろうな、楽しみだ
昔、山岡荘八の「徳川家康」30数巻を読んだこともあるから大丈夫だろう
高校生の時「千夜一夜」を全10数巻買って読み始めたが2巻くらいでくじけたこともあったっけ。

歴史に名を残すような人たちのきっかけも色々聞いている
それは全く思いがけないことがきっかけで、そこから政界、財界、学問の道に入った人も多い
何をするにもきっかけはある、人との偶然の出会い、自然との出会い、小さな昆虫や植物との出会い、一冊の本が人生を変える、どんなきっかけと出会うかで良くも悪くも人生さえ変わってしまう、できればよいきっかけに出会いたいものだ。

地物の水ガレイ、これを塩焼きか、薄醤油と味醂で煮たのが大好物です
コラーゲンとろとろがたまらない