○三井記念美術館 企画展『数寄の玉手箱-三井家の茶箱と茶籠』
http://www.mitsui-museum.jp/index2.html
三井家伝来の茶箱・茶籠約30点を展示する。茶箱あるいは茶籠とは、持ち運びができる小型の箱や籠に、茶碗、茶器、茶杓、菓子器など茶道具一式を組み込んだもの。野点の席で、あるいは職場や旅先で、どこでもお茶を楽しめる、モバイル茶道具キットである。
私が初めて茶箱・茶籠の存在を知ったのは、この三井記念美術館だった。企画展『美術の遊びとこころ』で、三井家高公室・子(としこ)夫人所持の『手造籐組茶籠』と、三井高福(たかよし)公所持の『唐物籐組小茶籠』を見て、すっかり心を奪われてしまった。茶箱・茶籠の楽しみは、気軽に持ち歩ける実用性だけではない。容れ物をあつらえ、茶道具を選んで取り合わせ、自分だけの「セット」をつくるところに真の楽しみがあるようだ。
展示品の中には、茶道具を全て銀製で揃えた『紫陽花蒔絵茶箱』(涼しげで夏向き)のような例もあるにはあるが、少数派である。茶人たちは、染付・蒔絵・黒漆など、全く異なる持ち味の道具を、どう取り合わせるかに、数寄を競う。なんだか、とても日本的な美意識の発露だと思う。西洋の高級テーブルウェアって、何から何まで同じ模様の「揃い」が基本だけど、あれってつまらないと感じないのかしら。
上記の2つの茶籠は、やはり出色。高福の茶籠は、井戸脇茶碗・黒棗・染付茶巾筒という渋好みなのに、灰青地に赤い植物文の更紗の華やかな服紗が付いている。しかも、植物文の間に小さなリスが描かれているのが愛らしい! こういう、隙のないスーツに、よく見ると可愛いネクタイしてるおじさんとか、いるのよね。
三井高福は、幕末に生まれ、明治以降の三井の発展をもたらした三井家中興の祖と言われる人物だが、諸芸に秀でた趣味人としても有名だったそうだ。高福ゆかりの茶箱・茶籠の中でも、『唐物竹組大茶籠』は、A3ブリーフケースほどもある大茶籠だ。内蔵品は40点余り。水指・花入・掛物まで入っている。茶碗2点、服紗4点など、複数そろえたアイテムもある。これは携帯用というよりも、自分の好みの茶道具で構成した小宇宙である。清朝の文人たちが楽しんだ「多宝格」を思わせる。彼方は文房四宝、此方は茶道具だけど。
三井家の茶箱・茶籠には、私の好きな楽茶碗がよく使われている。高台の高い井戸茶碗などに比べれば、比較的コンパクトで携帯向きなのだろうか。また、三井家は紀州徳川家とつながりが深く、「数寄の殿様」徳川治宝は楽家を庇護し、楽旦入を紀州に招いて「御庭焼」を焼かせたりした。その関係かもしれない。
私は美術館で茶道具を見て楽しむばかりで、実際のお茶は全くやったことがないのだが、この展示を見て、自分の茶箱・茶籠が欲しくなってしまった。帰りにミュージアムショップで、雑誌「なごみ」2006年4月号を買ってみた。特集は「茶箱は愉しい」。少し勉強して、コレクションを始めてみるかな!?
http://www.mitsui-museum.jp/index2.html
三井家伝来の茶箱・茶籠約30点を展示する。茶箱あるいは茶籠とは、持ち運びができる小型の箱や籠に、茶碗、茶器、茶杓、菓子器など茶道具一式を組み込んだもの。野点の席で、あるいは職場や旅先で、どこでもお茶を楽しめる、モバイル茶道具キットである。
私が初めて茶箱・茶籠の存在を知ったのは、この三井記念美術館だった。企画展『美術の遊びとこころ』で、三井家高公室・子(としこ)夫人所持の『手造籐組茶籠』と、三井高福(たかよし)公所持の『唐物籐組小茶籠』を見て、すっかり心を奪われてしまった。茶箱・茶籠の楽しみは、気軽に持ち歩ける実用性だけではない。容れ物をあつらえ、茶道具を選んで取り合わせ、自分だけの「セット」をつくるところに真の楽しみがあるようだ。
展示品の中には、茶道具を全て銀製で揃えた『紫陽花蒔絵茶箱』(涼しげで夏向き)のような例もあるにはあるが、少数派である。茶人たちは、染付・蒔絵・黒漆など、全く異なる持ち味の道具を、どう取り合わせるかに、数寄を競う。なんだか、とても日本的な美意識の発露だと思う。西洋の高級テーブルウェアって、何から何まで同じ模様の「揃い」が基本だけど、あれってつまらないと感じないのかしら。
上記の2つの茶籠は、やはり出色。高福の茶籠は、井戸脇茶碗・黒棗・染付茶巾筒という渋好みなのに、灰青地に赤い植物文の更紗の華やかな服紗が付いている。しかも、植物文の間に小さなリスが描かれているのが愛らしい! こういう、隙のないスーツに、よく見ると可愛いネクタイしてるおじさんとか、いるのよね。
三井高福は、幕末に生まれ、明治以降の三井の発展をもたらした三井家中興の祖と言われる人物だが、諸芸に秀でた趣味人としても有名だったそうだ。高福ゆかりの茶箱・茶籠の中でも、『唐物竹組大茶籠』は、A3ブリーフケースほどもある大茶籠だ。内蔵品は40点余り。水指・花入・掛物まで入っている。茶碗2点、服紗4点など、複数そろえたアイテムもある。これは携帯用というよりも、自分の好みの茶道具で構成した小宇宙である。清朝の文人たちが楽しんだ「多宝格」を思わせる。彼方は文房四宝、此方は茶道具だけど。
三井家の茶箱・茶籠には、私の好きな楽茶碗がよく使われている。高台の高い井戸茶碗などに比べれば、比較的コンパクトで携帯向きなのだろうか。また、三井家は紀州徳川家とつながりが深く、「数寄の殿様」徳川治宝は楽家を庇護し、楽旦入を紀州に招いて「御庭焼」を焼かせたりした。その関係かもしれない。
私は美術館で茶道具を見て楽しむばかりで、実際のお茶は全くやったことがないのだが、この展示を見て、自分の茶箱・茶籠が欲しくなってしまった。帰りにミュージアムショップで、雑誌「なごみ」2006年4月号を買ってみた。特集は「茶箱は愉しい」。少し勉強して、コレクションを始めてみるかな!?