付け焼き刃の覚え書き

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「笑わない科学者と時詠の魔法使い」 内堀優一

2010-04-10 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
『知るということは、明日に繋がる何かを得ることだ。
知ろうとすることは、明日へと今を繋げていく行為だ。
明日へと繋げていこうとするとき、人は不安や絶望から僅かでも解放される。』


 大学で物理学を学んでいる大倉耕介は感情表現ができない男だ。人並みの感情はあっても他人に伝わるよう表現する能力が欠如しているのだ。
 そんな耕介に教授は1つのバイトを斡旋した。用意したマンションに住み、同居人の面倒を見て欲しいというのだが、その同居人というのがまだ幼い少女の咲耶で、しかも彼女は魔法使いだった……。

 なんか森博嗣みたいなタイトルだなあと思って手に取り、精霊の描写がまるで「もやしもん」みたいだけどコミックと違ってわかりづらいなと思いつつ読み進め、次第に耕介が科学者としての本領を発揮し始めるにつれて「こいつ、ガニマールみたいな男だな」と思ったのだけれど、たぶんこの本の読者では少数派の意見でしょうね。「科学と論理。そう、科学と論理で私はルパンに挑戦する!」と豪語する何代目かのガニマール警部。
 科学と論理で魔法の事件に挑戦する姿がステキです。
 話としては面白かったけれど、ところどころで浮いている感じのする部分がありました。探偵とか見合いの相手とかがなぜここにいて、なぜ主人公に対してこういう行動を取るのか。精霊魔法を使う咲耶がなぜ時詠ができるのか、血筋という以外にこれといった説明がないとか。別に2系統の魔法が使えても問題ないのだけれど、精霊魔法と時詠に関係があまり無さそうなのがちょっと気になりました。
 ただ、メインの3人の関係は面白くて良い感じ。『高杉さん家のおべんとう』みたいな不器用な人間関係は好きなんです。主人公の徹底した論理的思考も面白いので、この三角関係と主人公の論理思考を核に話を広げてもらいたいですね。あとは八百屋の息子ということで、もっと野菜のウンチクを交えた料理作りのエピソードを入れるとか。

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コメント
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