付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「とらドラ10!」 竹宮ゆゆこ

2010-04-25 | 学園小説(不思議や超科学なし)
『自分の魂の置き場は自分で決められる。でも、この世の数多の他人のは動かせない』
 みんな1人1人ばらばらで、考えていることもわからないし、思うようにもならない。でも、そこが良い。みんな違うから、ぶつかり合ってでも自分の気持ちを伝えようと頑張ることができるし、悲しいときには抱き合って泣くことができるのだ。

 竜児も大河もつまるところは保護者なしには何もできない、ただの高校生に過ぎない。それでも竜児はすべてを肯定したい。自分の周囲の人々が、誰一人欠けることなく笑っていられる世界を手に入れたい。それが彼の望みだ。
 大河を母親の元へと送り出し、1人で帰ってくる竜児を、実乃梨が亜美が北村が出迎える。みんな2人の友達だった……。

 「親の都合で仲の良い2人が引き離される」というのは、児童文学などでは定番の物語の定型の1つです(『To Heart2』でもありましたね)。「保護者である大人との対立と和解」という形で少年少女の大人への通過儀礼をきっちり描くということは、大人と子供が存在する世界を描くということでもあるのです。
 短絡的で青臭い少年少女の理屈の方が分別くさく見えてくるくらい、この作品の親はあまりに情けない人間ばかりでしたが、その分、今まで頼りなさそうだった独身担任がきちんとバックアップしていてくれたので、世界に均衡が保てました。最初は単なるお約束ギャグ担当要員なのかと思っていましたが、なかなか立派な教育者です。
 イラストに依存しない面白さの小説でした。これが分厚い1冊の本だったら、夏休みの課題図書に推薦したいくらい。翌日も仕事があるのに思わず朝方まで読みふけったり、最近では珍しくも家族で回し読みしたんです。
 いちばん親近感を覚えたのは亜美。この不器用なひねくれ者を応援したくてたまりませんでした。

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コメント
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