付け焼き刃の覚え書き

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「GOSICK VII~薔薇色の人生」 桜庭一樹

2011-05-08 | ミステリー・推理小説
「お化けより、超常現象よりもっと怖いのは、現実の世界で、大切な人を永遠に失うことよ」
 セシル先生の言葉。

 クリスマス直前の学園から、ブロワ警部によって半ば無理やり連れ出されたヴィクトリカ。首都ソヴレムに召喚された彼女に、父ブロワ公爵は10年前に首無し死体となって発見された王妃ココ=ローズの犯人を推理せよと命じるのだが……。

 オカルト省と科学アカデミーの対立の中、ヴィクトリカと一弥がコルデリア・ギャロの幻影と交差する一篇。政府側要人が公爵から国王までどいつもこいつも食えない連中ばかりなので、学園や劇場の仲間思いの庶民たちとの対比が際立ちます。
 謎解きとしては、そんなに斬新でも複雑でもないので難易度は低め。もともとが本格推理よりもキャラクターの描写に重きを置いたジュヴナイル・ミステリのレーベルから刊行された話なので、ここは素直に人間関係の機微を追うのが正解。最後の歌からキャンデーのくだりにほろり。読者には、世界大戦という大きな嵐が着実に迫っていることが分かっているだけに、ささやかな庶民の幸せがなおさら身にしみるのです。
 待望の続編で慌てて手に入れたけれど、今まで富士見ミステリー文庫でそろえていたのだから、ここは同じイラストレイターによる角川ビーンズ文庫が追いつくのを待つべきであった。

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コメント
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