付け焼き刃の覚え書き

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「ガンパレード・マーチ2K~北海道独立(4)」 榊涼介

2011-07-15 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
「僕らは戦争の英雄じゃないし、プロの軍人なんかでもない。何かって? 決まってるさ! 正義の味方なんだ……」
 5121部隊を評する茜大介の言葉。彼らの行動原理は“軍事的に正しいか否か”ではない。

 ラノベ・レーベルのミリタリー系作品で少年少女が主役の話というと、「敵は怪獣」という話が多くなります。そもそも交渉もできない異質の存在で、どう考えても共存共栄は無理そう……ということでないと、読者に受け入れられるような作品が作りにくいのかもしれません。あの『機動戦士ガンダム』だって、少年兵ばかりの部隊が巨大ロボットで同じ人間と殺し合うという話なので、まったく受け入れられないはずはないのだけれど劣勢です。
 相手が怪物や機械というと、『E.G.コンバット』『アルテミス・スコードロン』『ニーナとうさぎと魔法の戦車』『疾走れ、撃て』『ストラトスフィア・エデン』『マブラヴ オルタネイティヴ』……まだまだ出ますが、相手が人間というと『花咲けるエリアルフォース』が出たところで止まってしまって、次は考えないと出てきません。
 一般SFだと、今ではミリタリーSFはいろいろありますが、ここまで極端に敵が怪物にはなっていません。ただ、その双璧と言えば“正義の戦い”を謳ったハインラインの『宇宙の戦士』と“戦争の無意味さ”を突きつけたホールドマンの『終わりなき戦い』(…と仮にしておきましょう)。
 どちらも訓練は苦しいし、上官は鬼だし、仲間はどんどん死んでいくけれど、前者の敵は蜘蛛型異星人、後者はクローン人間。戦意高揚で景気よくやるには、殺した相手が自分と同じ姿をしてちゃいかんですわ。

 そういう意味で、ガンパレは両者の間をつなぐ作品。
 ガンパレも初期は正体不明の幻獣で、やがて相手にも人の姿をしたものがいることがわかり、さらに幻獣はもともと異世界の人間がこちらの世界へやってくる過程で変異してしまったものと正体が判明し、そして今は同じ人間が相手。登場人物たちも精神的におかしくなっていきます。幼い子供たちを相手に人体実験を繰り返す科学者たち、私利私欲に走る政治家、民間人を盾にする反乱軍……。

「幻獣との戦いは、先に心折れた方が負け、ですから」
 激戦のさなか、植村戦闘団の司令部にて植村中佐の言葉。

 そんなドロドロした話が、よくぞ、ここまでうまく着地したもんだと拍手。

「目的は正義、手段は選ばん」
 どんな手段で手に入れた金だって、ちゃんと使えばいいのだと加藤祭。

 この前の巻あたりから5121も復調。
 こうでなくっちゃね!と大きく頷いて読了。

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