付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「宇宙戦艦ヤマト2202~愛の戦士たち~第一章」 監督:羽原信義

2017-03-04 | ミリタリーSF・未来戦記
 公開日の2月25日に長男連れて名古屋のミッドランドスクエアシネマ2へ。こっちも2か。
 夕方17時55分の回は満席。ちらほら小学生連れの家族もいるし、高校生大学生らしき姿もあるけれど、全体的にはなんとなく敬老会の映画鑑賞会みたいな客層で、平均年齢は50歳くらいかも。40以下ということはないね。

 時に西暦2202年。
 宇宙戦艦ヤマトがイスカンダルへの大航海で持ち帰った〈コスモリバース・システム〉により、地球は復興への道を歩み始めていたが、一方では同盟国となったガミラス帝国と共にガトランティス帝国との戦いに加わっていた。
 まだ大都市周辺には荒地が残る中、地球は軍拡への道を歩み始めていたのだ。波動砲を封印するというイスカンダルとの約束すら反故にして……。

 オリジナル版のストーリーの骨格は変えず、ただ今から見ると不具合な設定やストーリー上の矛盾を辻褄合わせてテンポ良くブラッシュアップした2199と比較しちゃうと、いろいろアラの多さとテンポの悪さが気になる出来映えです。
 まず、前作の「宇宙戦艦ヤマト2199」や「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」とか前作をきちんと見てないというか、設定を引き継ぐ気がないよね? ガミラス高官の前で芹沢参謀長がガミラスにとって信仰の対象ですらあるイスカンダルとの条約を単なる「口約束」と切って捨てちゃう気の使わなさとか、7割の確率で回避できるとされていた火炎直撃砲に鰯の群みたいに突っ込んだあげく艦隊壊滅とか頭悪すぎ。戦艦にでっかい盾をつける絵面を優先したのかもしれないけど、艦隊戦のレベルが2199の1話より後退してるってのは悲しいよね。
 それから現スタッフの見せたい絵、カッコイイと思うシーンを優先にしすぎて、ストーリーや設定の穴を埋めるどころか大きくしている気がします。たとえば単艦で突撃して活躍する〈ゆうなぎ〉、設定を見たら「スコードロン・リーダー」とあるのを見てびっくり。戦隊指揮艦だか小艦隊旗艦というなら独行艦になってちゃいかんだろ? 黒メガネが銃を振りかざしての追跡劇とか、場面としては緊迫感があるけれどあそこで隠れん坊する必然性があるのかとかよく分からない。そのシーンだけ見ているとカッコイイとか面白いとかあるんだけれど、そこに持っていくまでの流れが粗いので、全体としてみるとチグハグ感が残ります。2199だと、土方とか山南とか後にベテラン艦長、名艦長として登場してくるキャラの影も形もないのはおかしいと脇で配置して彩りつけてましたが、そういう細かい仕事が足りません。
 『さらば宇宙戦艦ヤマト』とか『宇宙戦艦ヤマト2』とか好きだし面白くはあったのだけれど、当時から「こんなきっかけで主人公たちが動くのおかしいよね」「これは少し単純すぎない?」「もっとやりようはあるよね」とか不満点も多く、そこを手直しするどころか放置したまま、それらしい説明もつけないままツッコミ所だけ増やしていくというのは、それはそれでヤマトらしくはありますけどね……。
 ヤマト2の平面甲板空母デザインでいいじゃない? なぜ急に三次元を意識するかな……のアンドロメダ級航宙母艦の三番艦〈アポロノーム〉ですが、他はアンドロメダ、アルデバラン、アキレス、アンタレスとすべてAで始まる天文用語です。けれど、アポロノームだけは違うんですね。語源不明。正確には、小沢さとるの海洋冒険マンガ「サブマリン707」に登場する超巨大潜水空母アポロノームより先行例が見当たらず、そのアポロノームというのは乗っ取られて敵になる艦の名前で、つまり客船にタイタニックとつけるくらい縁起の悪い名前なのです。やめときゃいいのに。もしくはそれにインスパイアしたストーリーにすればいいのに。

 仲間内では「星巡る方舟」での太鼓ドンドコなガトランティスの野蛮性がウケていたけれど、ああいう中華系大帝国ならではのごった煮感が好きだったので残念。もともと彗星帝国はアメリカ軍を意識したキャラクターと、本拠地が放浪しながらあちこち荒らし回る蛮族感がミスマッチだったのだけれど、そのどっちつかず感もさらに拡大しちゃったかな。
 『宇宙戦艦ヤマト2』、誰かリメイクしないかなあ。(2019/10/30改稿)

【宇宙戦艦ヤマト2202~愛の戦士たち~】【第一章 嚆矢篇】【羽原信義】【小林誠】【福井晴敏】【湖川あおり】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする