「国はいつか滅ぶ。人はやがて死ぬ。全ては無駄なことかもしれない。それでも俺は精一杯、皇帝として生きていこう」
意識が戻ったらブングダルト帝国の皇帝として生まれたところだった。
本当はまだ皇帝ではなくて、父親である王太子が不幸な遭遇戦から戦死し、先代皇帝も暗殺され、自動的に生まれたばかりの新生児カーマインに皇帝の座が転がり込んできたのだが、宮廷の勢力を二分する宰相と式部卿のどちらが戴冠式を執り行うかで揉めていて、いまだ宙ぶらりんという状況なのだ。
しかも、彼の歴史知識からすれば、幼くして王位に就いた子供の末路なんてものはろくなものではない。「生かされて」おくために、カーマインは暗愚なふりをして宰相と式部卿の間で傀儡として生き延びようと足掻くのだが……。
イラスト買いで、この人にイラストを描かせたなら下手なモノではなかろうと期待を込めた１冊。
こういう「転生したら貴族とか王族とか富豪とか社会的に勝ち組だった！」という話は、そのプラス面に匹敵するマイナス面がないと盛り上がらないのですよ。貴種流離譚なんか典型で、立派な偉い人が理由あって故郷を離れ放浪しながら元の地位を取り戻すために戦う話ってウケるんですよ。
この話もいきなり「生まれてみたら皇帝ですよ！」といいつつ、実は「孤立無援の傀儡で、ちょっとでも賢そうに見えたら一服盛られます」みたいな状況。「余にひざまづけ！」と啖呵をきるのはまだまだ先で、今は嘘泣きでやり過ごすだけ。ここから、いかに知恵を蓄え、我が身を鍛え、仲間を増やし、掌握していくかというところが見物。押しかけてくるヒロインたちも一癖も二癖もあって、秤の上に乗せられた分銅みたいなもの。彼女らの行動によって、右に揺れたり左に揺れたり。
はらはらドキドキではあるけれど、陰鬱になりすぎない一歩手前で踏みとどまって次回に繋ぎます。
【転生したら皇帝でした１～生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか～】【魔石の硬さ】【柴乃櫂人】【ＴＯブックス】【エスプリ幼帝の痛快王政サバイバルファンタジー】【小説家になろう】
