付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「魔王と勇者の戦いの裏で4」 涼樹悠樹

2024-01-01 | 異世界転生
「英雄や勇者を統べるからこその王なのだ」
 勇者が危険ではないかと囁く貴族がいることに対しての、王太子ヒュベルトゥスが息子ルーウェンに告げた言葉。
 後世には、理知の王マクシミリアン、覇気の王ヒュベルトゥス、仁慈の王ルーウェンと伝えられたという。

 凱旋式に乗じて王都内に完全武装の兵士が配置された。各所に潜伏している魔族を一網打尽に一掃するためである。魔族と人間では明らかに魔族の方が強い。しかし、人間側が事前に準備して数を集め装備を調えて挑めば話は変わってくる。そして、これもヴェルナーの進言が元になったことだ。
 ヴェルナーの評価は所詮はゲームの知識からだと自分では低いものの、貴族社会のみならず商人や冒険者の間でも高まっていた。それによって、余分な仕事が増えるヴェルナーは苦い顔だ。魔王の復活を乗り切れなくては自分は死んでしまうのだ。それ以外の富も名誉も女も今の彼にとってはどうでも良いことだったのだが……。

 モブ貴族に生まれた転生者が、予言だか魔王の手先だかと言われないギリギリまで戦禍に備えて準備をし、勇者を支援しながら、自分も銃後どころかけっこう戦いに巻き込まれていく顛末を、ささやかなユーモアを交えながら綴られています。脇役転生ものの完成形じゃないかなと思ってます。なぜ魔王討伐は少数精鋭なのか、なぜゲームスタートの大きな街より田舎の方に良い武器が売っているのか等、プレイしていてツッコみたくなる箇所にちゃんと作者ならではの解釈が入り、それが物語に大きく影響してくるあたり巧いです。

「偽善さえもできぬ臆病者の陰口など聞き流してしまえばよい」
 セイファート将爵はヴェルナーに助言を与えつつも、結局は翻弄して良いように使う、食えない大人の代表なのだ。

 魔王との戦いは始まったばかりなのに貴族の派閥争いが多すぎ。魔王軍の間諜が扇動していることも少なくありませんが、国軍が魔物との戦いに疲弊している隙にとか自軍の勢力を伸ばそうとかちまちま動いてます。勝手にアレコレ策謀しては自滅するのはいいけれど、こちらを巻き込むなよとヴェルナーのぼやきが続きます。

【魔王と勇者の戦いの裏で4~ゲーム世界に転生したけど友人の勇者が魔王討伐に旅立ったあとの国内お留守番(内政と防衛戦)が俺のお仕事です~】【涼樹悠樹】【山椒魚】【オーバーラップ文庫】【小説家になろう】【伝説の裏側で奮闘するモブキャラによる本格戦記ファンタジー】【戦闘馬車】【牽引式弩砲】
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