「冒険者をクビになったので、錬金術師として出直します！」 佐々木さざめき

　冒険者のクラフトは、また冒険者パーティーをクビになった。誰が悪いでもない。クラフトは魔術師の紋章持ちなのに、いつまで経っても初級以上の魔法が使えるようにならないので、強くなっていく他の仲間のお荷物になってしまうのだ。
　そんなクラフトに、冒険者ギルドから生産ギルドへの転属を打診された。辺境開拓の最前線で冒険者経験のある生産ギルド員が必要だというのだ。渡りに船と申し出を受けたクラフトだったが、生産ギルドで紋章鑑定士から彼と魔術師の紋章は相性が悪く、本来なら刻めないはずと告げられた。
　それが彼の運命の分岐点だった……。

　本来刻めないはずの紋章が付いてしまっていて、それで能力にグッと制限がかかっていたのが開放されたところから始まる辺境開拓ストーリー。こういうパーティーから追放されるタイプの話は、元のパーティーが主人公の価値が分かっていないとか仲間が傲慢とかイヤなケースが目立ちますが、こちらは幸いにも双方納得の上、惜しみ惜しまれの離脱です。それもあって、無能から一転してチートになっても周囲との関係は円満で、以降は軽く豪快にストレスフリーで話が展開しますが、それなりに山あり谷ありがあって飽きさせないまま巻末まで走ります。

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