付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「黒き微睡みの囚人」 ラヴィ・ティドハー

2019-02-19 | 時間SF・次元・平行宇宙
「誰の人生であっても最終的には消えてしまうものだ。死ねば夢も思想も、愛も憎しみも含めてそのものの人格は消滅する。ネアンデルタール人からクロマニヨン人へ、そしてユダヤ人の時代となってもそれは変わらない」
 ショーマーは物語に死ぬほどのめりこんでいた。

 ロンドンで私立探偵をしているウルフはユダヤ人嫌いで、もともとはドイツで有力な政治家だったが、“大転落”と呼ばれる政変が起こり、一転して亡命者となったのだ。そんな彼が金のためとはいえユダヤ人女性の行方を探すことになったのは皮肉な話だ。
 しかし、もしかしたらウルフは誰かの見ている夢の中の人物かも知れない。
 時間と場所を隔てた別の世界。アウシュヴィッツと呼ばれる場所で、1人のユダヤ人作家ショーマーが夢を見ていた。ユダヤ人からすべてを奪った男が、私立探偵をしている夢を……。

 すべてを奪われ、想像力だけが残されたとき、想像力がどんな事態を引き起こすのか。
 どちらに転んでも、ただただ重い話なのです。

【黒き微睡みの囚人】【ラヴィ・ティドハー】【竹書房文庫】【歴史改変奇想ノワール】【ホロコースト】【娼婦連続殺人事件】【アイヒマン】

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「いのまたむつみ展」 文化... | トップ | 「冒険者をクビになったので... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なんでや… (hilowmix)
2019-02-23 11:39:26
サド女にもてまくりの総統、大変だな…ご褒美だったみたいだけど。
返信する

コメントを投稿

時間SF・次元・平行宇宙」カテゴリの最新記事