「不遇皇子は天才錬金術師 １」 うめー

　イスカリオン帝国の皇帝はまだ若く、その権力基盤は盤石とは言いがたく、２人の公爵のつば競り合いの狭間でなんとかバランスを取って存在感を出そうと懸命なのだ。それゆえ、子供は可愛くても目をかけてやる余裕もない。ところが、第一皇子であるはずのアーシャは庶子であるため、後見人であるはずのニスタフ伯爵には後見する気がない。むしろ派閥の長であるルカイオス公爵から危険視されて冷遇されていて、出るはずの歳費も与えらておらず、身の回りの世話をする者も護衛や家庭教師を含めてすら片手に足りず、出入りも制限されてなかば幽閉状態にあることすら皇帝は知らない。
　もっとも当の本人はたいして気にしてはいない。帝位簒奪を目論む大罪人扱いされようが、前世が現代日本で生まれ育ったアラサー男なので、面倒くさい政は弟に放り投げ、趣味の錬金術に専念できるなら言うことはないのだ。ただ、可愛い弟たちと会うことすら命がけというのにはストレスがたまる。
　ところで、実験で空気を分解していくうちに、フラスコの中に残った何かに自我が芽生えたらしい……？

　前世では家族仲に恵まれなかった男が、異世界で家族仲良く暮らすべく、宮廷内部の権力抗争に当たらず障らず距離を取ろうとしているのに、向こうの方から勝手にちょっかいかけてきては兄弟仲を引っかき回そうとするのを何とかしようとしていく物語。魔法と科学の融合で錬金術の可能性を広げていく中、好き勝手に街に出かけては偽名で蒸留酒の製造を開始したりしていきます。

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