「社員食堂に三つ星を」 山本幸久

「ええか、オッチャン。カナシイときはオイシイものをたべるのがイチバンなんやで。そうするとカナシイよりもオイシイがかって、ゲンキになるって、ウチの母ちゃんがいうとった」
　赤星瀬里奈は河内山にハンカチを差し出し、彼にベントーをあげてといった。

　東京のウマカフーズでキャリア街道まっしぐらの管理栄養士・日元みなほは、麻布十番にあるカード会社の社食再生というプロジェクトに成功。これで昇進かと思いきや、計画に反対していた上司に手柄を持って行かれて逆に左遷。紀伊半島の白波町にある家具メーカー・ヒヨコ家具の社員食堂への異動を命じられてしまう。しかも、そこはベテランパート調理員の仕打ちに耐えかねて、次々に担当者が辞めていく部署だった……。

　朝マックもミスドも食べられない土地に追いやられた女性が、なにかと難癖をつけて足を引っ張るベテランに苦労しながら、予算の範囲で、社員が健康になれる美味しい食事を提供すべく四苦八苦するお仕事小説。郷土料理や地場食材がいろいろ登場します。
　遏悪揚善とはいかないけれど、なんとなく頑張っただけはみんなに認められ、足を引っ張った人はなんとなく上手くいかなくなりそう……くらいの顛末。

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