サー・コナン・ドイルの生み出した名探偵ホームズは、その研究書からパロディ二次創作までいれると国内に限っても山ほどあって、単にホームズがキャラのモチーフだったり、名探偵の代名詞として使われるもの(『三毛猫ホームズ』とか)まで入れると膨大になります。
『GSホームズ 極楽大作戦!!』 椎名高志(2002)
「古の神よ、今ひとたび現世に姿を現せ!! 我が名はシャーロック・ホームズ! 冥界の門を開く者なり!!」
椎名高志のマンガ『GS美神 極楽大作戦』に登場する不死のマッドサイエンティスト、ドクター・カオスとホームズが実は知り合いで、ホームズは彼からラテン語を学んでいたという『GS美神 極楽大作戦』の外伝にしてパロディ作品。ホームズがゴーストスイーパーだったというトンデモっぽい話も、下記の作品群からみれば至って常識的な範囲となります。なんなんだ?
『虚ろなる十月の夜に』 ロジャー・ゼラズニイ (2017)
切り裂きジャックに吸血鬼ドラキュラ、フランケンシュタイン博士のモンスター、名探偵シャーロック・ホームズらが登場し、旧き神々の復活を巡って抗争を繰り広げる話。
『女子高生探偵シャーロット・ホームズの冒険』 ブリタニー・カヴァッラーロ (2016)
5代目シャーロック・ホームズことシャーロットと6代目ワトスンが全寮制の高校で出会ってパートナーとなった。実はホームズ一族は代々名探偵を生み出そうという家系になっていて、ワトスン家もまあなんとなくホームズの相方になる事が多い血筋なのだ。しかし、シャーロットは一族ではみそっかす扱い。2人は彼らに冤罪を着せようと見立て殺人を仕掛けてくる犯人に立ち向かう……。
名探偵版「虎の穴」かというホームズ家もイヤだけど、シャーロット自身も美人ではあるけれど、痩せぎすで身体のラインは直線的。化学実験が好きで、考えをまとめる時にはバイオリンを引き、タバコを吸わない時はドラッグをキメてる。観察眼は鋭く変装も得意で、5代目ホームズとしては充分なキャラだけど、こんな女子高生、ヤだなあ。
『バトル・ホームズ~誰がために名探偵は戦う』 梶研吾 (2001)
放蕩貴族の用心棒になり下がった元ボクサーのガイをあざやかに投げ飛ばした男は、おそるべき観察眼と推理力の持ち主だった……。
ジュージュツの達人、格闘家としてのホームズを前面に押し出した意欲作。格闘アクションなのに、ちゃんとホームズの探偵譚になっている不思議。そして、そのホームズを上回るバケモノぶりの片鱗をうかがわせる兄マイクロフトもちょい出演で、作者もわかってるなーと満足して読了。これがスーパーダッシュ文庫だったのは、若干レーベル違いの気がしないでもありません。
『おやすみなさい、ホームズさん』 キャロル・ネルソン・ダグラス(2011)
盗みの罪を着せられて職を失ったペネロピーは、下宿代も払えなくなってロンドンの街をあてもなく放浪するはめに。そんなペネロピーに声をかけ、お茶に誘ってきたのはアイリーン・アドラーと名乗る美女だった……。
ホームズが唯一、その知性と行動力を認めて敬意をいだいた女性がアイリーン・アドラー。その彼女がホームズと事件を通じて出会い、対決する以前の物語。アイリーン・アドラーを、奔放で無邪気にして、実利的で計算高く、道徳心はあるけれど必要なときには忘れたふりができると描写したのは成功。相棒を道徳的でお堅い教区牧師の娘にしたことでそれが引き立ち、また一方で真面目な娘がアイリーンに染まっていくプロセスが面白いのです。アイリーンとホームズのニアミスするあたりのバランス感覚も巧いです。
『ライヘンバッハの奇跡』 ジョン・R・キング(2011)
ホジスンの“幽霊狩人”カーナッキとドイルの“名探偵”ホームズが、 “犯罪界のナポレオン”モリアーティ教授と対決する話。
ホームズが怪事件ではなく怪奇事件に挑んだらどうなるかというのが、『シャーロック・ホームズ対ドラキュラ』とか世のパスティーシュの定番ネタの1つ。推理力は明晰だけれど記憶を失っているホームズと、いまだオカルトを信じない科学の徒であるカーナッキが、不死身の教授の追跡を振り切るノンストップ・アクションです。
『シャーロック・ホームズ対ドラキュラ―あるいは血まみれ伯爵の冒険』 J・H・ワトスン(1992)
ドラキュラ伯爵がルーマニアからロンドンに襲来した顛末は誰もが知る事件だったが、それにヘルシング教授以外にも重要な役割を担った人物がいたことを知る者は少ない……。
未発表原稿から明かされる隠された事件シリーズ。本筋の活躍はヴァン・ヘルシングに譲らなくてはいけないので、ホームズはサポートに徹しているところが少し物足りなくはあります。
これ以外にも同じ作者の「シャーロック・ホームズ対オカルト怪人」では学者ヴィトゲンシュタインや経済学者ケインズ、オカルトの帝王クロウリーらのかかわる事件に挑み、ノベライズもある1970年映画「シャーロック・ホームズの冒険」ではネス湖の恐竜をめぐる事件に挑み、火星人襲来の際にはチャレンジャー教授と共に戦ったこともあったのは「シャーロック・ホームズの宇宙戦争」にある通り。
まったく、ワトソン博士の遺稿はどれだけ眠っているんだ……?
『消えた公爵家の子息~エノーラ・ホームズの事件簿』 ナンシー・スプリンガー(2006)
元気いっぱいの少女エノーラ・ホームズの母が失踪したが、年の離れた兄であるマイクロフトもシャーロックもあてにならず、14歳になる妹がいわゆる淑女にふさわしい教育を受けていないと知るや全寮制の寄宿舎に押し込めようとする……。
ホームズの妹の物語。ヴィクトリア朝のイギリスですから、女性は男性に比べて劣っているものという認識が強く、法律的にも女性に不利な時代です。エノーラも初っ端から十何年ぶりかに再会した兄たちから「見ての通り、この子はすこぶる背が高い割に、頭が小さくて脳味噌の容量が少ない」と散散な言われようです。
『シャーロック・ホームズ・イレギュラーズ』 編:森瀬繚(2008)
シャーロック・ホームズを題材としたパスティーシュ、オマージュ、パロディ、贋作等々をひとつにまとめたムック。原典で語られなかった空白部分を埋めるもの、視点を変えて再話したもの、年代的に合流しうる他の作品と混ぜたもの、SFにしちゃったもの、ホームズの娘や息子を主人公にしたもの、ホームズが実は女だったもの、ホームズをマネして名探偵になったものetc......。
『荒野のホームズ』 スティーヴ・ホッケンスミス(2008)
洪水によって家も家族も失ったレッド兄弟は、雇われカウボーイとして食うや食わずの生活をしている。そんな兄弟が死体を発見してしまうのだが、兄のオールド・レッドは死体に不審な点があることに気付いた。無学で文字すら読めないオールド・レッドだったが、彼はまたシャーロック・ホームズの信奉者であり、その推理法の実践者であった!
ウェスタン+ミステリ。ちゃんと「名探偵 皆を集めて “さて”といい」のミステリであり、カウボーイが馬に乗り牛を追い銃を撃ち合うウェスタン小説であり、また原作をうまく取り込んだパスティーシュです。雑誌でホームズについて知っていた兄弟が、その捜査法を実践して事件に挑みます。ホームズをまねるタイプの話ですが、この作品でのホームズは「実在の人物」なのでした。
『GSホームズ 極楽大作戦!!』 椎名高志(2002)
「古の神よ、今ひとたび現世に姿を現せ!! 我が名はシャーロック・ホームズ! 冥界の門を開く者なり!!」
椎名高志のマンガ『GS美神 極楽大作戦』に登場する不死のマッドサイエンティスト、ドクター・カオスとホームズが実は知り合いで、ホームズは彼からラテン語を学んでいたという『GS美神 極楽大作戦』の外伝にしてパロディ作品。ホームズがゴーストスイーパーだったというトンデモっぽい話も、下記の作品群からみれば至って常識的な範囲となります。なんなんだ?
『虚ろなる十月の夜に』 ロジャー・ゼラズニイ (2017)
切り裂きジャックに吸血鬼ドラキュラ、フランケンシュタイン博士のモンスター、名探偵シャーロック・ホームズらが登場し、旧き神々の復活を巡って抗争を繰り広げる話。
『女子高生探偵シャーロット・ホームズの冒険』 ブリタニー・カヴァッラーロ (2016)
5代目シャーロック・ホームズことシャーロットと6代目ワトスンが全寮制の高校で出会ってパートナーとなった。実はホームズ一族は代々名探偵を生み出そうという家系になっていて、ワトスン家もまあなんとなくホームズの相方になる事が多い血筋なのだ。しかし、シャーロットは一族ではみそっかす扱い。2人は彼らに冤罪を着せようと見立て殺人を仕掛けてくる犯人に立ち向かう……。
名探偵版「虎の穴」かというホームズ家もイヤだけど、シャーロット自身も美人ではあるけれど、痩せぎすで身体のラインは直線的。化学実験が好きで、考えをまとめる時にはバイオリンを引き、タバコを吸わない時はドラッグをキメてる。観察眼は鋭く変装も得意で、5代目ホームズとしては充分なキャラだけど、こんな女子高生、ヤだなあ。
『バトル・ホームズ~誰がために名探偵は戦う』 梶研吾 (2001)
放蕩貴族の用心棒になり下がった元ボクサーのガイをあざやかに投げ飛ばした男は、おそるべき観察眼と推理力の持ち主だった……。
ジュージュツの達人、格闘家としてのホームズを前面に押し出した意欲作。格闘アクションなのに、ちゃんとホームズの探偵譚になっている不思議。そして、そのホームズを上回るバケモノぶりの片鱗をうかがわせる兄マイクロフトもちょい出演で、作者もわかってるなーと満足して読了。これがスーパーダッシュ文庫だったのは、若干レーベル違いの気がしないでもありません。
『おやすみなさい、ホームズさん』 キャロル・ネルソン・ダグラス(2011)
盗みの罪を着せられて職を失ったペネロピーは、下宿代も払えなくなってロンドンの街をあてもなく放浪するはめに。そんなペネロピーに声をかけ、お茶に誘ってきたのはアイリーン・アドラーと名乗る美女だった……。
ホームズが唯一、その知性と行動力を認めて敬意をいだいた女性がアイリーン・アドラー。その彼女がホームズと事件を通じて出会い、対決する以前の物語。アイリーン・アドラーを、奔放で無邪気にして、実利的で計算高く、道徳心はあるけれど必要なときには忘れたふりができると描写したのは成功。相棒を道徳的でお堅い教区牧師の娘にしたことでそれが引き立ち、また一方で真面目な娘がアイリーンに染まっていくプロセスが面白いのです。アイリーンとホームズのニアミスするあたりのバランス感覚も巧いです。
『ライヘンバッハの奇跡』 ジョン・R・キング(2011)
ホジスンの“幽霊狩人”カーナッキとドイルの“名探偵”ホームズが、 “犯罪界のナポレオン”モリアーティ教授と対決する話。
ホームズが怪事件ではなく怪奇事件に挑んだらどうなるかというのが、『シャーロック・ホームズ対ドラキュラ』とか世のパスティーシュの定番ネタの1つ。推理力は明晰だけれど記憶を失っているホームズと、いまだオカルトを信じない科学の徒であるカーナッキが、不死身の教授の追跡を振り切るノンストップ・アクションです。
『シャーロック・ホームズ対ドラキュラ―あるいは血まみれ伯爵の冒険』 J・H・ワトスン(1992)
ドラキュラ伯爵がルーマニアからロンドンに襲来した顛末は誰もが知る事件だったが、それにヘルシング教授以外にも重要な役割を担った人物がいたことを知る者は少ない……。
未発表原稿から明かされる隠された事件シリーズ。本筋の活躍はヴァン・ヘルシングに譲らなくてはいけないので、ホームズはサポートに徹しているところが少し物足りなくはあります。
これ以外にも同じ作者の「シャーロック・ホームズ対オカルト怪人」では学者ヴィトゲンシュタインや経済学者ケインズ、オカルトの帝王クロウリーらのかかわる事件に挑み、ノベライズもある1970年映画「シャーロック・ホームズの冒険」ではネス湖の恐竜をめぐる事件に挑み、火星人襲来の際にはチャレンジャー教授と共に戦ったこともあったのは「シャーロック・ホームズの宇宙戦争」にある通り。
まったく、ワトソン博士の遺稿はどれだけ眠っているんだ……?
『消えた公爵家の子息~エノーラ・ホームズの事件簿』 ナンシー・スプリンガー(2006)
元気いっぱいの少女エノーラ・ホームズの母が失踪したが、年の離れた兄であるマイクロフトもシャーロックもあてにならず、14歳になる妹がいわゆる淑女にふさわしい教育を受けていないと知るや全寮制の寄宿舎に押し込めようとする……。
ホームズの妹の物語。ヴィクトリア朝のイギリスですから、女性は男性に比べて劣っているものという認識が強く、法律的にも女性に不利な時代です。エノーラも初っ端から十何年ぶりかに再会した兄たちから「見ての通り、この子はすこぶる背が高い割に、頭が小さくて脳味噌の容量が少ない」と散散な言われようです。
『シャーロック・ホームズ・イレギュラーズ』 編:森瀬繚(2008)
シャーロック・ホームズを題材としたパスティーシュ、オマージュ、パロディ、贋作等々をひとつにまとめたムック。原典で語られなかった空白部分を埋めるもの、視点を変えて再話したもの、年代的に合流しうる他の作品と混ぜたもの、SFにしちゃったもの、ホームズの娘や息子を主人公にしたもの、ホームズが実は女だったもの、ホームズをマネして名探偵になったものetc......。
『荒野のホームズ』 スティーヴ・ホッケンスミス(2008)
洪水によって家も家族も失ったレッド兄弟は、雇われカウボーイとして食うや食わずの生活をしている。そんな兄弟が死体を発見してしまうのだが、兄のオールド・レッドは死体に不審な点があることに気付いた。無学で文字すら読めないオールド・レッドだったが、彼はまたシャーロック・ホームズの信奉者であり、その推理法の実践者であった!
ウェスタン+ミステリ。ちゃんと「名探偵 皆を集めて “さて”といい」のミステリであり、カウボーイが馬に乗り牛を追い銃を撃ち合うウェスタン小説であり、また原作をうまく取り込んだパスティーシュです。雑誌でホームズについて知っていた兄弟が、その捜査法を実践して事件に挑みます。ホームズをまねるタイプの話ですが、この作品でのホームズは「実在の人物」なのでした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます