「佐々木とピーちゃん９」 ぶんころり

「人類ってたまに、よく分からない方向へ進化することがあるよねぇ……」
　ピカビカと虹色に光るだけのゲーミングパソコンを見て、アバドンはため息をついた。

　結局、学校でのいじめを苦にした（姫プレイでクラスを崩壊させた）十二式は自宅に引き籠もったが、つまり彼女はみんなからちやほやされたかったのだ。
　そんな十二式が目をつけたのは、動画投稿サイト。うまくいけばネット越しだが、まさに不特定多数からチヤホヤされる世界だ。この展開だと地球のネット文化が機械生命体に蹂躙されてしまうと考えた二人静は家庭内ＰＶバトルを提案した。佐々木たち家族が２週間以内にそれぞれ動画投稿サイトにアップした動画のＰＶ数で競おうというのだ。
　それぞれが自らの強みを活かして活動を開始する中、お隣さんは困窮していた。生まれてこの方、毎日を空虚に過ごしてきた彼女には、今更他人にさらけ出すものが何もなかったのだ。
　そんな彼女に一家の問題児である十二式が救いの手を差し伸べた。この世界ではVTuberなるものが流行っているらしいぞと……。

　ネットで荒れて誹謗中傷を山と叩きつけられても、これくらいの悪意など自分の人生においては誤差と言い切るお隣さんが悲しいぞ。幸せになって欲しいな。

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