付け焼き刃の覚え書き

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「鉄のエルフ(2)~赤い星」 クリス・エヴァンズ

2009-05-20 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「みんなが自分と意見の違う相手を殺しだしたら、この世から人がいなくなってしまいます」
 一兵卒アルウィン・レンウォーの言葉。2008年の作品。

 帝国陸軍<鉄のエルフ隊>は、<星>を探して辺境ルーグル・ジョルに到着するが既に<影の女王>によって砦は壊滅しており、そこにさらにエルフキナの反乱軍が押し寄せるのだが……。

 いきなり表紙が6頭身の少女マンガキャラで、「どういう展開なんだ!?」と愕然としたペリカン最強伝説。いや、もともと1冊を日本語版で2分冊したので、話の毛色は変わっていませんでしたが、「新感覚ミリタリー・ファンタジイ」という意見には賛成しかねます。つまらなくはないけれど「ミリタリー」じゃないよね。それをいうならフィーストの『リフトウォー』の方が遙かにミリタリー・ファンタジイ。
 テクノロジー的にナポレオン戦争というのはわかるのだけれど、どちらかというと3人パーティーの冒険者が300人規模になったくらいの話なので、ファンタジイは好きだけれどミリタリーはちょっと……という人でも安心して冒険を楽しむことができます。

 ミリタリー的には、あちらこちらの部隊から押しつけられたダメ兵士の群のはずなのに、いつの間にきちんとした方陣組んで戦えるようになったのか。砦の司令部と前線の主力の間の連絡手段はどうなっているのか。このあたり、普通の戦記ものなら下士官のオニっぷりがふんだんに発揮されたり、指揮官のカリスマぶりが披露されたりするもんですが、この話はそういうシーンに割く分の紙幅を魔法に関する話や個人的な話とかに使ってしまうので、ミリタリー的な熱さとか軍略の精緻さが物足りないですね。
 ナポレオン戦争当時のレベルといえばその通りなんだけれど、部隊間の連絡に伝令くらいしか手段が無さそうなのに、常に前線に出て指揮を執りたがる士官というのは指揮官としてどうなんだろう?

 ファンタジー話としては、木々との結びつきを重んじるエルフの生まれでありながら、結びつくべき木を持たず森を嫌う主人公の鬱屈具合が面白いけれど、それが今後いかにストーリーに結びつくかが注目点かな。エルフキナの商人の娘とも一目惚れしたようだけれどそんな風にも見えず、今はただ周囲が「あなたたち両思いなのよ」と勝手に囃し立てているだけな気がします。2人とも自分の感情と使命に折り合いをつけないといけない立場なので仕方がありませんが、もう少しツンデレの見せ方を勉強すべきだと思いました。

【鉄のエルフ】【赤い星】【クリス・エヴァンズ】【方陣】【指揮官は兵士と共に前線で戦うもの】

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