VTuberに代表される配信者を主人公にした作品は、いまだ衰えるところを知りません。あのジャンルはレッドオーシャンと言われて1年くらい……になりますか。2021年にはこんなまとめも書いてますね。このあたり今読んでも面白いです。
歌って踊って、料理してゲームして、おしゃべりしてと、配信者の物語はジャンルとしてはアイドル・芸能ものですが、具体的にはラジオ・パーソナリティーに近いのです。歌手や俳優のようにナントカ大賞を取るとか、ホニャララの舞台で主役を取るみたいな物語の軸になる目標が単体では立てづらいので、配信以外にドラマの筋立てを用意しないと新キャラ登場以外に話を続けるネタが乏しくなりがち。
初期の配信者ものは、宇宙人や天使や悪魔や魔王や妖怪が正体を隠して配信者になる……というパターンが多かったのですが、長続きするものは多くなくて、いつの間にか更新が途切れて1年というのが良くありました。裏のドラマがないと本当にラジオのバラエティーの総集編みたいになっちゃうのよ。そもそも、物語が「奇抜な設定のキャラがどんな配信をするのか」にとどまっていたら、そりゃリアルのVTuberの配信に勝てません。
そんな中から、アイドル・芸能ものバリエーション要素が強くなってハコで語るものとかが定着し始め、そうやって増えてきたウェブ小説の中から書籍化されるものも増えてきました。ただ、ウェブで執筆されている作品とは書籍化には半年から1年くらいのタイムラグはあるので、今の流行はちょっと違うかなと思います。
また入院するはめになって時間に余裕が出来たらカウントして統計まとめても良いけれど、各サイトのランキングを見ると「配信者×現代ダンジョン」、配信者が現代ダンジョンを攻略しながら配信するものが増えているようです。
以前から「ダンジョンを攻略する様子が配信される」という話はありましたが、デスゲームの主催者だか神様の娯楽だかによるものが多かったところが、今は配信者もののバリエーションとして攻略している探索者・冒険者たちも映すもの映るものを意識したり編集して、プレビュー稼いで攻略とは別に資金稼ぎするようになっているところが今風です。
★ラジオパーソナリティー
『MAICO2010』ニッポン放送 (1997)
2010年、時流の変化に取り残されそうになったニッポン放送は、何をとち狂ったかラジオ番組のパーソナリティーに世界初のアンドロイドアナウンサー「MAICO」を投入することに決めたのだが、スタジオに送り込まれたのはOSのインストールはおろか組み立てすら済んでいないパーツ状態だった……。
アニメやコミックなどマルチ展開された、2010年という未来の放送局のスタッフのドタバタを描いたもので、アニメ版はブースとサブコントロールルームのスタジオだけで話が進む、ほぼ舞台劇みたいな構成が特色。上半身組み立てで1回が終わり、プログラムのインストールが1回で終わらず……。
『波よ聞いてくれ』沙村広明 (2015)
男にフラれて呑んだくれた鼓田ミナレは酔い潰れて朝を迎えたが、そのときの失恋話とグチが録音されていて、翌日のラジオから流れてくるではないか。怒り狂ったミナレはラジオ局に怒鳴り込むのだが、気がつけば丸め込まれ、深夜番組のパーソナリティーを務めることになっていた……。
反省はするけど行動に反映されない、天然系傍若無人キャラが凋落していくラジオ放送の世界にはまり込んでいく物語。トーク部分とそれ以外のバックストーリーのバランスが最高で、それらが表裏一体となって話を盛り上げていきます。
『ふつおたはいりません!』結城十維 (2018)
デビュー当時は主役を演じて一世風靡したこともある崖っぷちアラサー声優、吉岡奏絵に久々に舞い込んだのはラジオ番組の仕事。その相方は、今の奏絵とは正反対の新進気鋭の大人気声優、まだ高校生の佐久間稀莉。けれど、稀莉は売れない奏絵をバカにして生意気な態度で、とてもまともに番組が成立するとは思えなかった……。
新旧2人の女性声優がパーソナリティを務める「これっきりラジオ」を軸にした百合小説。どうしたら番組を盛り上げられるか、から2人の関係をどうしていったらいいかへの変転が妙。
★ハコものバラエティ
『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』 七斗七(2020)
売れない清楚系VTuberが配信切り忘れて呑んだくれ、暴言吐きまくる様子がネット上に配信されたことから汚れ系として注目されていく。
最近配信系で多い、「マイクの切り忘れでバズる」系の原点。配信者の個性で推している話です。
『アラサーがVTuberになった話。』 とくめい(2020)
ブラック企業で過労で倒れたアラサーがバーチャルタレントに転職したが人気はどん底。しかし、社畜時代に培ったスキルで裏方仕事やらイベントのサポートなど本業以外での評価は高まっていく……。
トークはつまらないけど人生相談は本気だし料理は巧いし気遣いもできるおじさんの配信者生活。他人のトラブルをその身に背負って見返りを求めない、菩薩のような、あるいは不幸耐性が強くなりすぎて自分が壊れていることに気づかない主人公と、それを危惧して周囲で見守る人々との物語として読んでます。
★TS転生
『逆行転生したおじさん、性別も逆転したけどバーチャルYouTuberの親分をめざす!』 ブーブママ(2020)
アイドルライブの視聴中に落雷事故で死んだおじさんは、悪魔と契約して人生をやり直すことにしたが、その目的は黎明期からインターネットの世界に足場を築いてバーチャルYouTuberの親分をめざすというものだった。しかし、準備万端整えすぎ、1人でなんでもできすぎたおじさんはどこかの企業のヤラセと思われてまったく人気が出なかった……。
インターネットの歴史に限定されるけど、配信者ものであると同時に現代歴史改変もの。「謎の親分」を気取って周囲との連絡を絶ち、孤高に生きる親分と悪魔、気づかずにニアピンを繰り返す友人知人とのスラップスティック・コメディ。
『現代にTS転生したけど馴染めないから旅に出た』 漆間鰯太郎(2020)
事故死したサラリーマンが同じタイミングで自殺した少女に憑依する形で転生。少女は死んでしまったし、自分も死んでしまった。なら、今ここにいる少女は誰なんだ? 男でも少女でもない、第三の人格を世に生み出すために配信者活動を始めるのだが……。
YouTuberを主人公にしたロードムービー小説の名作。誰でもなくなってしまった自分の再定義と、その手段としてのネット配信。その中での姉との絆の構築、バイク旅の中で知り合った人々やネットで見守る視聴者との交流。そして、単純に配信そのものの面白さがしっかりかみ合ってます。別作品で姉妹の百合展開も語られています。
『ボクは再生数、ボクは死』 石川博品(2020)
VRサブライム・スフィアはなんでもできる仮想空間だ。その仮想空間で風俗にはまった狩野忍は、バズれば金は手に入ると先輩にそそのかされて動画配信を始めるのだが……。
VR空間でTS百合にはまった男が、VR空間の動画再生をヒットさせて風俗嬢につぎ込もうと過激な配信に挑む、VRTS百合バイオレンス小説。動画再生数を伸ばすために、次第に過激な方向に走り始め、ついには「戦いは数だよ!」になる話で、オフ会での話題がおむつの履き心地になるのはやけにリアルなんです。
★配信×モンスター退治
『異世界帰りの勇者は、ダンジョンが出現した現実世界で、インフルエンサーになって金を稼ぎます!』 Y.A(2021)
召喚された異世界で勇者として魔王を斃して帰還してみれば、こちらの世界にもダンジョンが出現していた。2つの世界が繋がった余波らしいけれど、勇者としての能力は残っているので、ダンジョンを攻略する様子を配信して他の冒険者たちを啓蒙していくことにした……。
そこそこ増えてきた「能力そのままに異世界から帰還した主人公の現代日本での冒険」と「現代に出現したダンジョン攻略」を足して、配信者もので彩りを添えた話。配信にちゃんと必然性があるのはいいけれど、某都知事が本当にウザくて読んでいて辛いのだ。こういう性根の腐ったキャラを書くのが巧いのです。
『ダンジョン配信者を救って大バズりした転生陰陽師、うっかり特級呪物を配信したら伝説になった』 昼行燈(2023)
現代に転生した平安時代の陰陽師はダンジョン配信者を始めたが、あまりにモンスターを討伐している姿が鮮やかすぎて合成と思われ閲覧数は伸びていない。ついに閲覧者0となってしまったが、そのとき人気配信者が想定外のモンスターに襲われているところに出くわした……。
スゴすぎてインチキと思われ、閲覧数が伸びないのは『バーチャルYouTuberの親分をめざす!』と同じ。そこで人気配信者を助けて注目を浴びるというのも婚約破棄並の定番の展開となりつつありますが、そこからどう話を広げていくかが腕の見せ所です。
『ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう 〜社畜剣聖、配信者になる〜』 熊乃げん骨(2023)
探索者として世界でもトップクラスの実力を持ちながらも、安月給でこき使われていた主人公は配信事故から報告用の映像がネットに流れて脚光を浴びるようになる。会社はクビになったがフリーのダンジョン配信者として活躍していくことになり、そのスゴさが視聴者の前に次々と明かされていくことになる。
不当に低評価されて搾取されていたけど、実はスゴい系。
『ときときチャンネル』 宮澤伊織(2023)
十時さくらが始めた動画配信サービス《ときときチャンネル》のメインのネタは同居人のマッドサイエンティスト、多田羅未貴と彼女の発明品を紹介すること。今日もさくらは撮影機材と共に未貴の部屋に突入していくが、「宇宙」を切り取ってカップの中に固定してみたり、「時間」を少しばかり屋根裏で走らせてみたりと視聴者たちを困惑させる。めざせ登録者数100人……!
モンスター退治とは違うけれど、とりあえずこの枠に入れました。マニアックなSFネタを一般向けの不思議ネタにかみ砕いてコメディにするタイプの短編集。似たような配信者ものが出てきたら、あらためてそちらにまとめます。
ラジオや配信の裏側をドラマ化した作品をどこまで遡れるか調べてみると、70年代の人気パーソナリティのラジオ番組本あたりでしょうか。番組に届いたお便りの紹介や、それを受け取った自分たちがどう感じて、どう番組に反映していったとか、パーソナリティやスタッフ・ゲストらとの日々のやりとりなどを綴ったものです。今でもテレビ・ラジオの人気番組では関連書籍が出たりしますよね。東日本大震災に関連して『3・11の素敵な話』(2012)とか『河北新報のいちばん長い日』(2011)など良い本があります。
有名どころでは闘病報告をしてきたリスナーを探したけど見つからなかった『大橋照子のヤロウどもメロウどもOh!』(1978)とか、ラジオから人気が出てテレビ番組にまでなって大ヒットした『欽ドン いってみようやってみよう』、そのパート5収録のマンガ「哀しみは代沢からやってくる」(1975)あたりじゃないかと思います。
とりあえず、「これは外したらいかんだろ」という2作品を思い出したので追加。(2023/11/16改稿)
歌って踊って、料理してゲームして、おしゃべりしてと、配信者の物語はジャンルとしてはアイドル・芸能ものですが、具体的にはラジオ・パーソナリティーに近いのです。歌手や俳優のようにナントカ大賞を取るとか、ホニャララの舞台で主役を取るみたいな物語の軸になる目標が単体では立てづらいので、配信以外にドラマの筋立てを用意しないと新キャラ登場以外に話を続けるネタが乏しくなりがち。
初期の配信者ものは、宇宙人や天使や悪魔や魔王や妖怪が正体を隠して配信者になる……というパターンが多かったのですが、長続きするものは多くなくて、いつの間にか更新が途切れて1年というのが良くありました。裏のドラマがないと本当にラジオのバラエティーの総集編みたいになっちゃうのよ。そもそも、物語が「奇抜な設定のキャラがどんな配信をするのか」にとどまっていたら、そりゃリアルのVTuberの配信に勝てません。
そんな中から、アイドル・芸能ものバリエーション要素が強くなってハコで語るものとかが定着し始め、そうやって増えてきたウェブ小説の中から書籍化されるものも増えてきました。ただ、ウェブで執筆されている作品とは書籍化には半年から1年くらいのタイムラグはあるので、今の流行はちょっと違うかなと思います。
また入院するはめになって時間に余裕が出来たらカウントして統計まとめても良いけれど、各サイトのランキングを見ると「配信者×現代ダンジョン」、配信者が現代ダンジョンを攻略しながら配信するものが増えているようです。
以前から「ダンジョンを攻略する様子が配信される」という話はありましたが、デスゲームの主催者だか神様の娯楽だかによるものが多かったところが、今は配信者もののバリエーションとして攻略している探索者・冒険者たちも映すもの映るものを意識したり編集して、プレビュー稼いで攻略とは別に資金稼ぎするようになっているところが今風です。
★ラジオパーソナリティー
『MAICO2010』ニッポン放送 (1997)
2010年、時流の変化に取り残されそうになったニッポン放送は、何をとち狂ったかラジオ番組のパーソナリティーに世界初のアンドロイドアナウンサー「MAICO」を投入することに決めたのだが、スタジオに送り込まれたのはOSのインストールはおろか組み立てすら済んでいないパーツ状態だった……。
アニメやコミックなどマルチ展開された、2010年という未来の放送局のスタッフのドタバタを描いたもので、アニメ版はブースとサブコントロールルームのスタジオだけで話が進む、ほぼ舞台劇みたいな構成が特色。上半身組み立てで1回が終わり、プログラムのインストールが1回で終わらず……。
『波よ聞いてくれ』沙村広明 (2015)
男にフラれて呑んだくれた鼓田ミナレは酔い潰れて朝を迎えたが、そのときの失恋話とグチが録音されていて、翌日のラジオから流れてくるではないか。怒り狂ったミナレはラジオ局に怒鳴り込むのだが、気がつけば丸め込まれ、深夜番組のパーソナリティーを務めることになっていた……。
反省はするけど行動に反映されない、天然系傍若無人キャラが凋落していくラジオ放送の世界にはまり込んでいく物語。トーク部分とそれ以外のバックストーリーのバランスが最高で、それらが表裏一体となって話を盛り上げていきます。
『ふつおたはいりません!』結城十維 (2018)
デビュー当時は主役を演じて一世風靡したこともある崖っぷちアラサー声優、吉岡奏絵に久々に舞い込んだのはラジオ番組の仕事。その相方は、今の奏絵とは正反対の新進気鋭の大人気声優、まだ高校生の佐久間稀莉。けれど、稀莉は売れない奏絵をバカにして生意気な態度で、とてもまともに番組が成立するとは思えなかった……。
新旧2人の女性声優がパーソナリティを務める「これっきりラジオ」を軸にした百合小説。どうしたら番組を盛り上げられるか、から2人の関係をどうしていったらいいかへの変転が妙。
★ハコものバラエティ
『VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた』 七斗七(2020)
売れない清楚系VTuberが配信切り忘れて呑んだくれ、暴言吐きまくる様子がネット上に配信されたことから汚れ系として注目されていく。
最近配信系で多い、「マイクの切り忘れでバズる」系の原点。配信者の個性で推している話です。
『アラサーがVTuberになった話。』 とくめい(2020)
ブラック企業で過労で倒れたアラサーがバーチャルタレントに転職したが人気はどん底。しかし、社畜時代に培ったスキルで裏方仕事やらイベントのサポートなど本業以外での評価は高まっていく……。
トークはつまらないけど人生相談は本気だし料理は巧いし気遣いもできるおじさんの配信者生活。他人のトラブルをその身に背負って見返りを求めない、菩薩のような、あるいは不幸耐性が強くなりすぎて自分が壊れていることに気づかない主人公と、それを危惧して周囲で見守る人々との物語として読んでます。
★TS転生
『逆行転生したおじさん、性別も逆転したけどバーチャルYouTuberの親分をめざす!』 ブーブママ(2020)
アイドルライブの視聴中に落雷事故で死んだおじさんは、悪魔と契約して人生をやり直すことにしたが、その目的は黎明期からインターネットの世界に足場を築いてバーチャルYouTuberの親分をめざすというものだった。しかし、準備万端整えすぎ、1人でなんでもできすぎたおじさんはどこかの企業のヤラセと思われてまったく人気が出なかった……。
インターネットの歴史に限定されるけど、配信者ものであると同時に現代歴史改変もの。「謎の親分」を気取って周囲との連絡を絶ち、孤高に生きる親分と悪魔、気づかずにニアピンを繰り返す友人知人とのスラップスティック・コメディ。
『現代にTS転生したけど馴染めないから旅に出た』 漆間鰯太郎(2020)
事故死したサラリーマンが同じタイミングで自殺した少女に憑依する形で転生。少女は死んでしまったし、自分も死んでしまった。なら、今ここにいる少女は誰なんだ? 男でも少女でもない、第三の人格を世に生み出すために配信者活動を始めるのだが……。
YouTuberを主人公にしたロードムービー小説の名作。誰でもなくなってしまった自分の再定義と、その手段としてのネット配信。その中での姉との絆の構築、バイク旅の中で知り合った人々やネットで見守る視聴者との交流。そして、単純に配信そのものの面白さがしっかりかみ合ってます。別作品で姉妹の百合展開も語られています。
『ボクは再生数、ボクは死』 石川博品(2020)
VRサブライム・スフィアはなんでもできる仮想空間だ。その仮想空間で風俗にはまった狩野忍は、バズれば金は手に入ると先輩にそそのかされて動画配信を始めるのだが……。
VR空間でTS百合にはまった男が、VR空間の動画再生をヒットさせて風俗嬢につぎ込もうと過激な配信に挑む、VRTS百合バイオレンス小説。動画再生数を伸ばすために、次第に過激な方向に走り始め、ついには「戦いは数だよ!」になる話で、オフ会での話題がおむつの履き心地になるのはやけにリアルなんです。
★配信×モンスター退治
『異世界帰りの勇者は、ダンジョンが出現した現実世界で、インフルエンサーになって金を稼ぎます!』 Y.A(2021)
召喚された異世界で勇者として魔王を斃して帰還してみれば、こちらの世界にもダンジョンが出現していた。2つの世界が繋がった余波らしいけれど、勇者としての能力は残っているので、ダンジョンを攻略する様子を配信して他の冒険者たちを啓蒙していくことにした……。
そこそこ増えてきた「能力そのままに異世界から帰還した主人公の現代日本での冒険」と「現代に出現したダンジョン攻略」を足して、配信者もので彩りを添えた話。配信にちゃんと必然性があるのはいいけれど、某都知事が本当にウザくて読んでいて辛いのだ。こういう性根の腐ったキャラを書くのが巧いのです。
『ダンジョン配信者を救って大バズりした転生陰陽師、うっかり特級呪物を配信したら伝説になった』 昼行燈(2023)
現代に転生した平安時代の陰陽師はダンジョン配信者を始めたが、あまりにモンスターを討伐している姿が鮮やかすぎて合成と思われ閲覧数は伸びていない。ついに閲覧者0となってしまったが、そのとき人気配信者が想定外のモンスターに襲われているところに出くわした……。
スゴすぎてインチキと思われ、閲覧数が伸びないのは『バーチャルYouTuberの親分をめざす!』と同じ。そこで人気配信者を助けて注目を浴びるというのも婚約破棄並の定番の展開となりつつありますが、そこからどう話を広げていくかが腕の見せ所です。
『ブラックギルド会社員、うっかり会社用回線でS級モンスターを相手に無双するところを全国配信してしまう 〜社畜剣聖、配信者になる〜』 熊乃げん骨(2023)
探索者として世界でもトップクラスの実力を持ちながらも、安月給でこき使われていた主人公は配信事故から報告用の映像がネットに流れて脚光を浴びるようになる。会社はクビになったがフリーのダンジョン配信者として活躍していくことになり、そのスゴさが視聴者の前に次々と明かされていくことになる。
不当に低評価されて搾取されていたけど、実はスゴい系。
『ときときチャンネル』 宮澤伊織(2023)
十時さくらが始めた動画配信サービス《ときときチャンネル》のメインのネタは同居人のマッドサイエンティスト、多田羅未貴と彼女の発明品を紹介すること。今日もさくらは撮影機材と共に未貴の部屋に突入していくが、「宇宙」を切り取ってカップの中に固定してみたり、「時間」を少しばかり屋根裏で走らせてみたりと視聴者たちを困惑させる。めざせ登録者数100人……!
モンスター退治とは違うけれど、とりあえずこの枠に入れました。マニアックなSFネタを一般向けの不思議ネタにかみ砕いてコメディにするタイプの短編集。似たような配信者ものが出てきたら、あらためてそちらにまとめます。
ラジオや配信の裏側をドラマ化した作品をどこまで遡れるか調べてみると、70年代の人気パーソナリティのラジオ番組本あたりでしょうか。番組に届いたお便りの紹介や、それを受け取った自分たちがどう感じて、どう番組に反映していったとか、パーソナリティやスタッフ・ゲストらとの日々のやりとりなどを綴ったものです。今でもテレビ・ラジオの人気番組では関連書籍が出たりしますよね。東日本大震災に関連して『3・11の素敵な話』(2012)とか『河北新報のいちばん長い日』(2011)など良い本があります。
有名どころでは闘病報告をしてきたリスナーを探したけど見つからなかった『大橋照子のヤロウどもメロウどもOh!』(1978)とか、ラジオから人気が出てテレビ番組にまでなって大ヒットした『欽ドン いってみようやってみよう』、そのパート5収録のマンガ「哀しみは代沢からやってくる」(1975)あたりじゃないかと思います。
とりあえず、「これは外したらいかんだろ」という2作品を思い出したので追加。(2023/11/16改稿)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます