付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「バッカーノ!1931 臨時急行編」 成田良悟

2009-01-15 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「情報というのは、得た後に自らの頭と……そして心で考える事によって初めて価値を見出すものだ」
 ギュスターヴ・サンジェルマンの言葉。

 『1931鈍行編・特急編』の前日談と後日談のパッチワークで綴られた『1931』の裏舞台。そしてクレアとシャーネが再会する物語。

 面白いけれど、今度は本編にまして時間と場面が二転三転するので現状把握が大変ですし、ちょっととっちらかった感じがしますが、いろんなキャラクターが右往左往して、本編では陰に隠れていた隠しキャラも続々登場です。ここであらためて、1705あたりから読み直したくなりました。そういう1冊です。

【バッカーノ!】【1931】【臨時急行編】【成田良悟】
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「ガンパレード・マーチ 九州奪還5」 榊涼介

2009-01-14 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
「大佐。わたしを信じてとは言いません。ただ死ねと言うてくださいっ……!」
 堅田女子戦車中隊石丸あかり軍曹の言葉。
 パッと読んで、思わず付箋を付けた言葉が作者にとっても印象的な言葉だったらしい。戦争物ではむしろありきたりな言葉だけれど、それを口にする者それぞれに自分なりの覚悟があり、部下がいる。言葉の重さに代わりはない。

 つい昨日まで憎むべき敵だった相手と肩を並べて戦う。それはただ、幻獣の王を倒すという目的のため。割り切れぬ思い、信じ切れぬ気持ちを抱えたまま兵は戦う。
 だが、敵は遙かに強大であった。偉大なる幻獣の王はただ前進を命じるだけだ。戦力差は圧倒的であり、九州全域で幻獣側の猛攻が始まった。善行と荒波苦心の防衛戦が次々に食い破られていく。敵も味方も次々に戦場に斃れていく。あとは数の大きい方が残るという、引き算の問題だった……。

 帯に大きく書いてあるように、ついにこの巻で九州戦は決着します。
 そうかあ、ここからオーケストラに続くのか……。(←違いました。オーケストラはこの直前の話でした。)

 死屍累々の戦場がこれでもかと続きます。炎が塹壕を舐め、戦車壕が吹き飛び、兵士は次々に斃れていきます。そして、5121小隊が送り込まれたのは、危険は大きく、失敗すれば裏切り者の汚名着ること間違い無しの任務。
 それなのに、夏用のソックスだの、露天風呂で混浴だの、メイド服よりバニーガールだのといった小ネタやら、イタチの大王だのモモンガの王だのといった神話ネタが混在しても違和感がないところが流石ガンパレ。

「先生、どうしてこの戦車だけ黄色いんですか?」
「それはね。この戦車に乗るパイロットがお馬鹿さんだからよ」

【ガンパレード・マーチ】【九州奪還】【榊涼介】【消耗戦】【敗退】【ラブコメ】【混浴温泉】【ソックスハンター】
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「プリンセス・ビター・マイ・スウィート」 森田季節

2009-01-13 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「女の子はスフィンクスなんです。女の子は謎をかけるんです。そして謎が解けない人を食べてしまうんです。むしゃむしゃ」
 畠山チャチャ。

 美人で頭は良いけれど、性格の悪さはとびっきりの畠山チャチャに振り回される弟の満泰、そして幼なじみの関屋晴之。でも、最近各地で首なし死体が発見される事件が相次いでいて……。

 南洋の部族の不思議な因習、殺人死体を発見しては見物することが趣味という同好の士の集まり「死見会」、不思議な姉妹カナとリア、いろいろ伏線は残してあるので、続刊は出るんだろうなあと思うけれど、謎を残しつつも1巻で完結というのも美しいんでないかしら。性格の悪い少女のツンデレ・スイッチの入り具合が絶妙。
 最後の弟の告白も最高! 見事な姉弟愛です(悪魔ってやつね)。

【プリンセス・ビター・マイ・スウィート】【森田季節】【文倉十】【京都】【ツンデレ】【死見会】
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「回帰祭」 小林めぐみ

2009-01-12 | 宇宙・スペースオペラ
「科学者のやることに合理性を求めてはいかん」
 ウナギ教授の言葉。

 植民惑星の閉鎖された都市には、300年前に地球の環境汚染から逃れてきた人々の子孫たちが暮らしていた。しかし、この都市の男女比率は9:1。16歳でのカップリングに失敗し、女性をパートナーにできなかった少年は全員が復興したという地球へ回帰させられることになる。
 その期限も間もなくという頃、秀才少年ライカ、地球に憧れる少女ヒマリ、地球行きを憂う少年アツの3人は、都市の秘密を握っているらしい喋るウナギと出会った……。

 面白いけれど、オチがすっきりしないかな。なんかプツンと終わった感じで落ち着かない。短編中編ならともかく、これだけの長編としては内容的にも長さ的にもボリューム不足。いや、どこからを結末というかにもよるんだろうけれど、なんか急転直下で放り出されたままという感覚が否めないのです。『食卓にビールを』みたいな短編なら、むしろ気持ちが良いんですけれどね。

【回帰祭】【小林めぐみ】【植民星】
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「サムライ・レンズマン」 古橋秀之

2009-01-11 | 宇宙・スペースオペラ
「きみに万歳の幸あれ」

 麻薬業者を本拠地に追い詰めた銀河パトロールだったが、要塞化された高層ビルを攻めあぐねていた。
 だが、そこに増援として到着したレンズマンは、衛星軌道上から装甲宇宙服に身を包んで要塞ビルへと降下したかと思うと、瞬時に賊を制圧してしまう。
 彼こそがアルタイル柔術の達人でもある盲目の剣士シン・クザク、通称「サムライ・レンズマン」であった……。

 E.E.スミスの傑作にしてスペースオペラの原点である『レンズマン』の世界を舞台に、古橋秀之が存分に腕をふるった和風レンズマン。著作権者の遺族とライセンス契約を交わしているそうなので、正式のシェアード・ワールド作品、正統な異聞ですね。
 ちゃんと古典の風格を備えながら、現代風の洗練さも併せ持つ傑作で、原典至上主義のお父さんにも、ラノベ好きなお子さまにも安心してお奨めできます。
 多少時代錯誤なところも含めて原典テイストたっぷりですが、ここは新しいなと思うのが、マッコウクジラのレンズマンが登場するところですね。イルカとかクジラを人類側の一員として加える発想は、ドク・スミスの頃にはなかったと思います。名前もジョナサンだし。

【サムライ・レンズマン】【古橋秀之】【E.E.スミス】【サムライ】
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「化け猫じゃらし」 高橋夕樹

2009-01-09 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 神さまの手抜きからパソコン付きで創造されてしまった世界の1656年、明暦2年。
 堺の町に吉原天災という絵師がいた。この男、食い詰めると家賃取り立てから化け物退治までこなす仕事師となるのだが、今回舞い込んだ仕事は化け猫退治だった……。

「人間は自分の価値を決めるために生きてるんじゃ」
 吉原天災の言葉。

 まー、石器時代から発電機とか通信設備とかセットでパソコンが存在している世界という設定がぜんぜん活きてませんね。別に世界の天秤とかパソコン無しでも成立しちゃう話でした。
 一発ネタとしては面白いけれど、それが作品世界として成立するまで練り込め無かったという評価。もう少し開き直って『原始家族フリントストーン』あたりの路線を狙えば良かったのに……。

【化け猫じゃらし】【高橋夕樹】【誘拐】【抜け荷】【式神】
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「地球人のお荷物」 アンダースン&ディクスン

2009-01-08 | 宇宙・スペースオペラ
「いや、なに。初歩的なことだよ、ワトスンくん!」

 惑星トーカに不時着した<ドレイコ>のアレグザンダー・ジョーンズ少尉は罵った。緊急時用のマニュアルが何の役にも立たない指導マニュアルと入れ替わっており、無線装置や非常食の代わりに書類の束が詰まっていたからだ。
 遭難した彼を救ったのは原住民ホーカ。しかし、30余年前に地球から訪れた第一次調査隊と接触したホーカは、地球人の残した書物や映画をもとに自分たちの文明を書き替えてしまっていた。究極のモノマネ社会。西部劇もテレビドラマのスペースオペラも、ホーカにとっては忠実に再現すべき教典だった……。

 アンダースン&ディクスンはそれぞれでも面白い作家。ディクスンはSFとファンタジーの両刀使いで、異なる文明文化の相剋が面白い作家。アンダースンは人間でないモノの思考をきちんと書ける作家。この2人が組み合わさると、ホーカになるんだねえ……。
 本で読むより、ドタバタ騒ぎを映像で観たい話。

【地球人のお荷物】【ポール・アンダースン】【ゴードン・R・ディクスン】【ハヤカワ文庫SF】【模倣種族】【ノブレス・オブリージ】【文明人は白兵戦に弱い】【シャーロック・ホームズ】【地球文化大好き宇宙人】
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「十字軍艶征記」 ジョン・クリーブ

2009-01-07 | 時代・歴史・武侠小説
 獅子心王リチャードの時代。第3次十字軍に加わった騎士の1人にギイという青年がいた。王の守護者たるギイは、騎士の遺児メリッサンド・ド・ポア=コーテニーを連れて砂漠を横断する。

 イギリス人もフランス人もサラセン人も、男は獰猛で女は愛欲に溺れていて、周囲は戦と宮廷の権謀ばかりという大河歴史ポルノ小説ですが、読んで普通に面白かったというのが意外。考えてみれば、伝奇バイオレンス小説とかもたいていは男は獰猛で女は愛欲に溺れ、妖魔と戦ったりしてばかり。なので、そっちがOKならこっちもOK。パワフルな女盗賊の頭とか出てきて、けっこう楽しかったり。

【十字軍艶征記】【ジョン・クリーブ】【十字軍】【奴隷】【暗殺者】【ポルノ】
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「天翔る十字軍」 ポール・アンダースン

2009-01-06 | ファーストコンタクト
 時は14世紀。場所はイギリス。ロジャー卿の一団はエドワード3世の遠征軍と合流すべく戦の準備に明け暮れていた。そこへ飛来したのはワースゴル人の巨大宇宙船。光線砲や防護スクリーンを使う異星人の侵略に対して、騎士たちは長槍や大剣を武器に立ち向かうが……。

「ここでは、戦争の道具は、数世紀もの間に進歩したが、権謀術策に関しては、地球ほど巧妙なものはない」」

 野蛮人が文明人を駆逐する話というか、知識と知性は別だというべきか。電気の仕組みも知らない中世の騎士たちが、異星文明相手に獅子奮迅の活躍をする話で、最後に皮肉の効いたオチをもってくるあたりがポール・アンダースンといったところか。

【天翔る十字軍】【ポール・アンダースン】【十字軍】【ファースト・コンタクト】【投石機】【文明人は白兵戦に弱い】
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「血塗られた墓~ドレスデン・ファイル3」 ジム・ブッチャー

2009-01-05 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 電話帳に名前の出ている唯一の魔法使い、ハリー・ドレスデンの探偵ファイルの3巻目。

 今回は、頻発する幽霊騒ぎに、あっちとこっちの境界が薄くなってきていることに知ったドレスデン。誰かの仕業と気づくのだが、誰が何の目的でやっているかまでは分からない。
 そんなとき、ドレスデンにヴァンパイア一族からの招待状が届くが、それをオカルト専門の記者スーザンが見つけてしまう……。

 この話にも“Godmother”というのが登場します。辞書通りなら教母とか名付け親という意味だし、“Fairy Godmother”と来たら仙女と訳した方が良いのだけれど、この場合はゴッドファザーの女性版的なのかもしれません。確かに妖精の元締めだけれど、地獄の番犬をけしかけてくるような怖い女神です。なむなむ。
 今回はマーフィー警部補の出番が少ないのが残念。絵に描いたようなトラブルメーカーの記者スーザンは、しっかり突撃取材でみんなをトラブルに引き込んでます。

【血塗られた墓】【ドレスデン・ファイル】【ジム・ブッチャー】【ヴァンパイア】【幽霊】【ナイトメア】
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「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦

2009-01-04 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「この広い世の中、聖人君子などはほんの一握り、残るは腐れ外道かド阿呆か、そうでなければ腐れ外道でありかつド阿呆です」
 黒髪の乙女への姉の教え。

 ラム酒を愛する大学1回生の「黒髪の乙女」に思いを寄せる「先輩」が、偶然の出会いを演出しようと彼女の姿を追い求めるうちに遭遇する事件の数々を、「先輩」と「黒髪の乙女」それぞれの視点から語っていく恋愛小説。ひたすら夜の街を呑み歩き、古本市で稀覯書を賭けた勝負に挑み、学園祭でゲリラ演劇に巻き込まれ、そしてみんな風邪をひく話。

 本の紹介では「恋愛ファンタジー」と書いてあるけれど、確かにファンタジー。「少し不思議」って感じだけれど、みんな「ほお」と感心する程度の不思議。でもって、「先輩」も「黒髪の乙女」も第三者視点では単なる「ヘンな人」だし。なんというか、妖は出てこないけれど山田ミネコか竹本泉がコミック化するのが似合いそうな物語でした。

【夜は短し歩けよ乙女】【森見登美彦】【鯉】【達磨】【風邪】【本の神様】【象の尻】【竜巻】【偽電気ブラン】【京都】
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「高峰の決戦~ドラル国戦史7」 デイヴィッド&リー・エディングス

2009-01-03 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「人をだますのは昔から戦争の何倍も楽しいんだ。やり方さえ正しければ、血を流すこともないしね」
 ウサギの言葉。

 ヴラーの昆虫軍団との戦いも終盤。舞台は姉神アラシアの統治する“日の昇る国”へ。
 しかし、眠りの時が迫るアラシアは乱心し、神殿に籠もって自分をあがめ奉る神官や巫女の言葉にしか耳を傾けなくなっていた。そこで鷲鼻ソーガンが弟神ヴェルタンと共に乗り込むのだが……。

 平均点以上には面白いドラル国戦史だけれど、エディングスの水準としては物足りないねえ。やはり、同じエピソードのリフレインで物語がちっとも進まないせいかもしれません。

【高峰の決戦】【ドラル国戦史7】【デイヴィッド&リー・エディングス】
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「塵骸魔京 百歌絵巻」 オフィシャルブック

2009-01-02 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「北の果ての山のオオフクロウに懸けて」

 3年ほど前のゲームに『塵骸魔京』というホラー・アクション系のアドベンチャーゲームがあって、これが18禁ながらなかなかの名作だったのだけれど、そのオフィシャル・ムックが08年8月に出ているのです。なんで3年も経ってからと思うけれど、ぜんぜん古くなってないし、ちゃんと新刊で買う価値があるんだから仕方がない。
 人の世が終わるかどうかという時代の境目に現れた高校生・九門克綺が持つ力を手に入れんと現れるモノたち、人外の民や人類の守りの戦いの物語。
 イベント絵たっぷりのストーリーダイジェストから、初期設定から収録したキャラクター紹介や設定集、外伝小説集、ゲームパッケージから小説挿絵まで収録したイラストページまで盛りだくさんの1冊。
 キャラ的はやっぱり、「今日は死ぬにはいい日だ」と戦場に向かう風のうしろを歩むものが良いです。

【塵骸魔京】【百歌絵巻】【ニトロプラス】【夜刀史朗】
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「人類学者のクッキングブック」 ジェシカ・クーパー編

2009-01-01 | 食・料理
 人間は生きている限り食べずにはいられない。そして食はそれぞれの民族や部族の宗教や文化と密接に結びついています。
 この本は、人類学者が各民族特有の食をテーマに考察したエッセイと料理のレシピを併記する形で紹介したもの。革命によって失職した料理人ブーランジュが一般大衆を相手にした飲食店をオープンし、彼が「来たれ、汝悩める者よ、されば、われ汝に元気をとりもどさせん(レストロボ)」と売り出したヒツジ脚をホワイトソースで煮込んだ料理がレストランの語源になったという話から、日本文化とカツ丼の関係まで。
 人肉食も加えようと専門家を捜し求めたが、太平洋地域の専門家まで辿り着いても詳しい調理法はわからず、はっきりいって「人間の肉にはビタミンBがほとんど含まれていないので、栄養摂取の意味では役に立たない」ということなんだそうだ。
 こういう専門的かつ雑学的に楽しめる本は見つけたら逃しちゃダメだ。

【人類学者のクッキングブック】【ジェシカ・クーパー】【平凡社】【スパイス】【毒味】【ゆでる】
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