小泉武夫 1994年 中央公論社
タイトルは「しゅこうきたん」って読む。
サブタイトルは「語部醸児之酒肴譚」で、「かたりべじょうじのしゅこうたん」。
著者は、江戸から続く造り酒屋の二十七代目に生まれ、「諸白醸児(もろはくじょうじ)」って筆名を祖父の友人から授かったそうで、酒で産湯をつかった酒の申し子の、その醸児が語り部となって酒と肴について語るって設定の本。
こないだ札幌で“古本とビール”っていう変わったコンセプト(?)の店に行って、メインはもちろん(?)地ビール飲むことだったんだけど、せっかく古本あるのに本買わないのも味が悪いんで、酒とかに関するのがズラッと並んでる本棚から適当に選んでみた本。
前半の酒の話ももちろんおもしろいんだけど、今回私は後半の肴の話のほうが俄然おもしろかった。
いろんな酒や食べ物を知っているらしい著者が、
>「この地球上で一番珍しい食べ物は何ですか」といった質問が時々あるのですが、私は即座にこの「河豚卵巣の糠漬け」を挙げることにして居ります。なにしろ、その猛毒の潜む卵巣を、こともあろうに発酵によって解毒し、食べてしまうのですから、驚かない訳にはいきません。
っていってる、その食べ物、すごく興味あるけど、出されたら、出来を(ってのは毒がないってことを)疑わずに素直に食えるかどうかは、自信ないなぁ。
(ちなみに、私は北京で、サソリのから揚げってのは食ったことあるけど。)
そのあとの、酒盗とか塩辛のところも、ちょっと口のなかにツバ出てくるんだけど、なかでも、
>日本人がいかに塩辛を好んだかを如実に語ってくれるものが、海から遠く離れた山村で秘かに造られていた野鳥の塩辛であります。(略)中でも有名なのが、今は幻の珍品となりました「鶫うるか」であります。
ってのは、初めて聞いた。(「鶫」は、ツグミね。)
捕まえた鳥の腸をきれいにして細かく包丁で叩いて、心臓・胃・砂肝とかも一緒に塩漬けにすると、野鳥の塩辛ができるっていうんだけど、そいつぁ食ってみたい。(でも、ツグミって、捕っちゃいけないんぢゃなかったっけ?)
最終章に「粋な肴」をとりあげてるとこがあるんだけど、そこが一番泣かせる。
>なるべく厚みの揚げ豆腐を炭火の上の餅網にかけ、濃い目の鼈甲色になるまで焼きます。これを適当に切りまして、その上に新鮮な大根卸しをたっぶりとかけ、醤油をちょいとつけながら食べるのであります。虎の肌の色に似た厚揚げ豆腐に白い大根卸しがかけられた風情から、この肴を「雪虎」と申します。
だなんて、イイねぇ。白い大根卸しの代わりに、青みが濃い葱を刻んで撒いたら「竹虎」だって。応用がきくとこもイイ。
それから、「秋鯖のしゃぶしゃぶ」。鍋に日本酒を入れて、塩と淡口醤油で味をつけたら、煮立った出汁のなかで鯖を振り洗いしながら食べるって、それウマそう。
ただし、鯖は飛びっきり新鮮なのに限るんで、鯖の活きのよさを見わけられない人はヤルなと。かー、厳しい。
それから、石を使った焼きもの。
川原にいって、握り拳より一回りほど大きめで、なるべく平らな石を拾ってくる。石はよく洗ってから水気を拭き取り、炭でもガスでも直火を当ててガンガンと熱くする。
15分もすると石が焼けて、あとは一時間ほど灼熱を内蔵するから、石の上に適当な魚介を乗っけて、焼きながらその肴で酒を飲む。
魚とか海老とか貝もいいんだけど、著者がときどき選ぶのがイカの塩辛ってのが、またツボにはまる。
イカの塩辛(できたら白造りでイカの切り身が大きいやつ)を焼けた石の上にのせると、ジュウ!と縮みながら熱くなって、焼け焦げた香ばしい匂いがして、って、ああ、ウマそう。
>腸液が焦げはじめて、ほんのちょっぴり石の上に固まり残ったものを箸でむしりとり、それを口に含むと誠に珍味となって楽しいもの
って、そんな恥ずかしいものまでアリですか、ああ、ああ。
ちなみに新鮮な魚介とか高価なものに限らず、スーパー行って薩摩揚げを一袋買ってきて、適当に斜めに切って、石の上で両面焼いてホッカホカにして生姜醤油で食べるとイイんだと。それ、やってみてえー。
タイトルは「しゅこうきたん」って読む。
サブタイトルは「語部醸児之酒肴譚」で、「かたりべじょうじのしゅこうたん」。
著者は、江戸から続く造り酒屋の二十七代目に生まれ、「諸白醸児(もろはくじょうじ)」って筆名を祖父の友人から授かったそうで、酒で産湯をつかった酒の申し子の、その醸児が語り部となって酒と肴について語るって設定の本。
こないだ札幌で“古本とビール”っていう変わったコンセプト(?)の店に行って、メインはもちろん(?)地ビール飲むことだったんだけど、せっかく古本あるのに本買わないのも味が悪いんで、酒とかに関するのがズラッと並んでる本棚から適当に選んでみた本。
前半の酒の話ももちろんおもしろいんだけど、今回私は後半の肴の話のほうが俄然おもしろかった。
いろんな酒や食べ物を知っているらしい著者が、
>「この地球上で一番珍しい食べ物は何ですか」といった質問が時々あるのですが、私は即座にこの「河豚卵巣の糠漬け」を挙げることにして居ります。なにしろ、その猛毒の潜む卵巣を、こともあろうに発酵によって解毒し、食べてしまうのですから、驚かない訳にはいきません。
っていってる、その食べ物、すごく興味あるけど、出されたら、出来を(ってのは毒がないってことを)疑わずに素直に食えるかどうかは、自信ないなぁ。
(ちなみに、私は北京で、サソリのから揚げってのは食ったことあるけど。)
そのあとの、酒盗とか塩辛のところも、ちょっと口のなかにツバ出てくるんだけど、なかでも、
>日本人がいかに塩辛を好んだかを如実に語ってくれるものが、海から遠く離れた山村で秘かに造られていた野鳥の塩辛であります。(略)中でも有名なのが、今は幻の珍品となりました「鶫うるか」であります。
ってのは、初めて聞いた。(「鶫」は、ツグミね。)
捕まえた鳥の腸をきれいにして細かく包丁で叩いて、心臓・胃・砂肝とかも一緒に塩漬けにすると、野鳥の塩辛ができるっていうんだけど、そいつぁ食ってみたい。(でも、ツグミって、捕っちゃいけないんぢゃなかったっけ?)
最終章に「粋な肴」をとりあげてるとこがあるんだけど、そこが一番泣かせる。
>なるべく厚みの揚げ豆腐を炭火の上の餅網にかけ、濃い目の鼈甲色になるまで焼きます。これを適当に切りまして、その上に新鮮な大根卸しをたっぶりとかけ、醤油をちょいとつけながら食べるのであります。虎の肌の色に似た厚揚げ豆腐に白い大根卸しがかけられた風情から、この肴を「雪虎」と申します。
だなんて、イイねぇ。白い大根卸しの代わりに、青みが濃い葱を刻んで撒いたら「竹虎」だって。応用がきくとこもイイ。
それから、「秋鯖のしゃぶしゃぶ」。鍋に日本酒を入れて、塩と淡口醤油で味をつけたら、煮立った出汁のなかで鯖を振り洗いしながら食べるって、それウマそう。
ただし、鯖は飛びっきり新鮮なのに限るんで、鯖の活きのよさを見わけられない人はヤルなと。かー、厳しい。
それから、石を使った焼きもの。
川原にいって、握り拳より一回りほど大きめで、なるべく平らな石を拾ってくる。石はよく洗ってから水気を拭き取り、炭でもガスでも直火を当ててガンガンと熱くする。
15分もすると石が焼けて、あとは一時間ほど灼熱を内蔵するから、石の上に適当な魚介を乗っけて、焼きながらその肴で酒を飲む。
魚とか海老とか貝もいいんだけど、著者がときどき選ぶのがイカの塩辛ってのが、またツボにはまる。
イカの塩辛(できたら白造りでイカの切り身が大きいやつ)を焼けた石の上にのせると、ジュウ!と縮みながら熱くなって、焼け焦げた香ばしい匂いがして、って、ああ、ウマそう。
>腸液が焦げはじめて、ほんのちょっぴり石の上に固まり残ったものを箸でむしりとり、それを口に含むと誠に珍味となって楽しいもの
って、そんな恥ずかしいものまでアリですか、ああ、ああ。
ちなみに新鮮な魚介とか高価なものに限らず、スーパー行って薩摩揚げを一袋買ってきて、適当に斜めに切って、石の上で両面焼いてホッカホカにして生姜醤油で食べるとイイんだと。それ、やってみてえー。
